- 著者
-
上田 博人
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1994
今回の研究の目的は,現代スペインの演劇作品の語彙総合コンコーダンスを完成させることにある.これは全部で12の冊子(1冊600頁)からなる大部のものであるが,すでに3冊は刊行されているので,残りの9冊を1年につき3冊ずつ刊行することとなった.平成6年度.スペイン現代演劇の30作品の総合コンコーダンスの第4分冊(E),第5分冊(F〜K),第6分冊(L〜M)を完成した.現在,他のコーパスによる分析資料との比較検討を行った.平成7年度.総合コンコーダンスの第7分冊(N〜O),第8分冊(P),第9分冊(Q〜R)を完成した.動詞活用形認識プログラムの開発に着手した.平成8年度.総合コンコーダンスの第10分冊(S),第11分冊(T〜U),第12分冊(V〜Z)を完成した.動詞活用形認識プログラムのバ-ジョン1を完成した.これまでのスペイン語研究の資料は,母国語話者の直感や面接方式のチェック,文学作品などの用例採集,そして一部の研究者によるフィールドワークに基づくものであった.近年コンピューターが言語研究に使用されるようになって,コーパス言語学という新しい方法が注目されるようになったが,コーパスそのものは個人の研究の範囲内に留まり,あまり公開されてこなかった.また,その規模も小さかったことも問題点として挙げられるだろう.この研究は現代スペインの30の演劇作品全体を扱い,50万語の言語コーパスと総合コンコーダンスを完成させるという規模の大きなものである.今回,科学研究費の助成によって完成したスペイン語言語資料な内外の研究者に供されて,今後のスペイン語の言語研究や辞書学の発展に寄与できるものと信じている.