著者
広瀬 進 上田 均
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

ショウジョウバエのfushi-tarazu遺伝子の調節領域内にある特定の部位に塩基特異的に結合する因子NFftz1について以下の研究を行った。1.ショウジョウバエ初期胚においてNFftz1がはたす機能を明らかにするため、fushi-tarazu遺伝子の上流にあるNFftz1結合部位のうち中央の2もしくは4塩基を置換した変異型遺伝子を作製し、lacZ遺伝子と結合した。Pエレメントを用いてこの変異型遺伝子または野生型遺伝子をショウジョウバエに導入し、初期胚での発現パターンをβガラクトシダーゼの活性染色により調べた。その結果、野生型では7つのストライプ状に発現するのに対し、変異型遺伝子では3つのストライプはほぼ正常だが、残りの4つのストライプはほとんど発現されなかった。この結果は、NFftz1がfushi-tarazu遺伝子の空間的発現を制御していることを示唆する。2.NFftz1に相当する因子がカイコにも存在するか否かについて、結合部位を含む合成オリゴヌクレオチドをプローブにしてゲルシフト法で解析した。その結果、カイコ受精卵核抽出液および、後部絹糸腺抽出液中に結合活性を見出した。競合DNAによるゲルシフトの阻害、DNAメチル化の干渉、プロテアーゼによる部分分解、各種クロマトグラフィーでの挙動などから、ショウジョウバエとカイコの因子は極めて相同性が高いと推定された。そこで、後部絹糸腺抽出液から結合部位DNAアフィニティーカラムなどを用いてこの因子を精製し、50%以上の純度をもつ標品を得た。今後、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によりこの標品をさらに精製し、N末のアミノ酸列を決定してこの因子のcDNAをクローニングする予定である。
著者
三田 俊夫 酒井 明夫 上田 均 藤村 剛男 中村 正彦 伊藤 欣司 坂本 文明
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.983-989, 1993-09-15

【抄録】 憑依症状群(キツネ憑き)を中心とするfolie à troisの2例を報告した。発端者はいずれも精神分裂病であり,「家」のうちでは中心的役割を果たし,共同体の文化的脈絡にそって生活していくべき立場にあった。1例は山村,他例は漁村が舞台となっているが,いずれにおいても発端者と継発者とは,地域の民間信仰と俗信を絆として互いの緊密な結びつきを保ち,それを土台に互いの病像を支持し合い,強め合うという傾向が顕著に認められた。従来,本病態の発生には,外部とは隔絶された,長期にわたる同居の期間が必要とされてきたが,本例では,地域と家庭双方における民間信仰の共有が,いわば心性という次元で同居と同様の状況を作り出していると考えられる。これらのことより,本病態の発生因として,従来重要視されてきた遺伝的近接と環境的近接に加えて,地域の伝統風俗や習慣に土台を持つ,信仰,思想上の近接が重要な役割を果たしうることが示唆された。
著者
藤井 義明 萩原 正敏 加藤 茂明 審良 静男 久武 幸司 半田 宏 大熊 芳明 上田 均 箱嶋 敏雄 梅園 和彦
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本計画研究班の研究課題は、転写因子も含めて転写因子間の相互作用が最終的に遺伝子発現としてどのようにアウトプットされるかというメカニズムを分子のレベルで解明することを主な目的としている。Preinitiation complexの構成成分であるTFllHの9つのsubunitsをリコンビナントDNAを用いて発現させ、再構成に成功し、各々のサブユニットの機能を検討する系が確立された。またこの系を用いてERCC3のヘリカーゼ活性が転写活性化のプロモーターエスケープの段階に重要であることを示した。転写伸長反応もDSlFとNELFの抑制とpTEFbとFACTの活性化系によって精密にコントロールされていることが明らかにされた。DSlFの一つサブユニットp160のC末端の変異はゼブラフィッシュでは神経の発達異常を引き起こすことが分かった。広範な転写因子の共役因子として働くcbpについては、さらにgi3,AhR/Arnt,HlF-1α,lRF3などの共役因子として働くことやβ-カテニンが阻害して,P53の転写活性を抑制することを示した。2ハイブリッド法によってMBFl,UTF1,P68/P72が各々転写因子FT2-F1,RAR,ERα,βの転写共役因子として働くことを明らかにし、その構造を決定した。ノックアウトマウスを作製することによってAhR,AhRR,STAT3などの機能解析を行なった。