著者
植松 智 審良 静男
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-8, 2006 (Released:2006-10-13)
参考文献数
29
被引用文献数
8 23

Toll-like receptors(TLRs)は自然免疫における重要な分子で,様々な病原体においてよく保存された構造を認識して自然免疫応答を誘導する.ある種のTLRはウイルス構成成分を認識してI型インターフェロンを誘導することによって抗ウイルス応答を誘導する.TLR2やTLR4が細胞表面においてウイルス構成成分を認識するのに対し,TLR3,TLR7,TLR8,TLR9はエンドソームによく発現している.ファゴサイトーシスによってウイルスやウイルスに感染してアポトーシスを起こした細胞を取り込むと,ウイルスの核酸がファゴソーム内で遊離しこれらのTLRによって認識される.最近,宿主は細胞質内でTLR非依存的に複製するウイルスを認識する機構を持つことが報告された.今回,我々は自然免疫によるウイルス認識とシグナル伝達経路について概説する.
著者
野本 明男 西山 幸廣 柳 雄介 小柳 義夫 審良 静男 川端 重忠 西山 幸廣 柳 雄介 小柳 義夫 藤田 尚志 川端 重忠 笹川 千尋 光山 正雄 堀口 安彦 小安 重夫 堀井 俊宏 野崎 智義 北 潔 中西 憲司 豊島 久真男 笹月 健彦 永井 義之 永田 恭介 岩本 愛吉 河岡 義裕 審良 静男
出版者
公益財団法人微生物化学研究会
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

平成23年4月開催の日本医学会総会で展示を行う予定であったが、震災の影響で中止となった。しかし、平成23年6月~9月まで下記のサイトにてウェブ展示を行った。「わかろう医学つくろう!健康EXPO2011 ウェブ&体験 博覧会」公式サイトhttp://ex2011.net「わかる」の「8感染症」コーナーにて、感染マトリックスの成果の一つ(川口寧の成果)を紹介した。平成23年12月3日(土)には「感染症研究の未来」とのタイトルで感染マトリックスの成果全体を紹介し、また今後の感染症研究の方向を考えることを目的としたシンポジウムを東京大学鉄門記念講堂にて開催した。シンポジウムは2部から構成され、前半は「感染マトリックス成果報告」として、ウイルス、細菌、寄生虫の各分野から世界に発信された貴重な成果が紹介された。続いて第2部では「感染症の未来」と題して、今後の感染症研究に必要な概念と方向性について、「ワクチン、薬剤耐性、グローバルな視点からの感染症研究」の講演が行われた。参加者は100名を越え、特に感染マトリックス関係者以外の参加者が7割以上であったことは感染症研究に対する他領域の研究者や一般の関心の高さを表わしていると考えられる。アンケートからは「病原体に対する宿主の応答の多様性」、「宿主の防御反応からの病原体の回避機構」、「最先端の生命科学によるワクチンや薬剤開発の現状」に多くの興味が集まったことが判った。国際交流がますます緊密になり、しかもスピードアップする現在、インフルエンザなどをはじめとする「グローバル感染症」に関する研究の重要性に理解と興味を示す聴衆が多かった点は、科学技術立国をめざすわが国の感染症研究に対する期待を表わしているものと考えられる。
著者
山西 弘一 岸本 忠三 審良 静男 菊谷 仁 木下 タロウ 山西 弘一 清野 宏
出版者
大阪大学
雑誌
特別推進研究(COE)
巻号頁・発行日
1997

(木下)1.ヒトのGPIアンカー生合成遺伝子群の解明に関し、PIG-Vが第2のマンノース転移酵素であること、PIG-Wがイノシトールへのアシル転移酵素であること、PGAP1がイノシトール・デアシラーゼであることを証明した。これにより、GPIアンカーが小胞体膜の細胞質側から内腔側へフリップするステップを除き、生合成の全ステップに働く遺伝子群が解明された。2.睡眠病トリパノソーマのGPIアンカー生合成遺伝子群の解明に関し、アンカーをタンパク質に付加するGPIトランスアミダーゼにヒトには存在しない2つのタンパク質(TTA1,TTA2)が必須であることを見いだした。これらのタンパク質は、睡眠病治療薬の標的に適している。(菊谷)これまでクラスIVセマフォリンSema4AがTIM2を介してT細胞を刺激することを報告してきたが、本年度はSema4A欠損マウスを作成し、その解析からSema4Aが抗原特異的T細胞の分化、特にTh1細胞に必須であることを示した。また、新規クラスVIセマファリンSema6Dをクローニングし、Sema6Dがその受容体Plexin-A1を介して心内皮細胞の遊走を調節し、心臓形態形成に必須の役割を果たすことを明らかにした。さらに、Sema6Dは免疫系においても樹状細胞のサイトカイン産生を誘導するなどの生物活性を有することが明らかになった。(審良)Toll Like Receptor(TLR)を介した細胞内シグナル伝達では、全てのTLRの炎症性サイトカインの誘導に必須のMyD88依存性経路と、TLR3,4を介しInterfron(IFN)-β,IFN誘導性遺伝子を誘導するMyD88非依存性経路が存在する。MyD88と同じTIRドメインを持つアダプター群のノックアウトマウスの作製、解析を行った。TIRAPはTLR2,4を介したMyD88依存性経路に関与していた。データベースから同定したTRIFはTLR3,4を介するMyD88非依存性経路に、TRAMはTLR4を介するMyD88依存性経路にだけかかわるアダプターであることを明らかにした。TLRを介したシグナルはアダプター群が制御しその特異性も規定していることがわかった。(山西)1.ヒトヘルペスウイルス7(HHV7)U12遺伝子が機能的なβケモカインレセプターであることを明らかにした。これによりU12遺伝子産物が何らかのかたちで病態発症にかかわっていることが示唆された。ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)variant AのgH-gL-gQがCD46と相互作用すること、HHV6 A U100遺伝子産物がgH-gLコンプレックスの形成因子の一つになっていることなどが明らかになった。Variant Aとvariant Bではウイルス粒子膜分子の形成が異なっており、これが感染細胞の特異性を決めているものと思われる。2.カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)では、前初期遺伝子RTAがアポトーシスインデューサーであるにも関わらず、感染細胞ではXIAPの発現上昇によりこの機能が阻止されることを明らかにした。この機構にはORF57遺伝子産物と宿主細胞因子PCBP1が相互作用することにより、XIAP遺伝子のIRESの機能を上昇させることが主な理由であることを突き止めた。潜伏感染状態はウイルス遺伝子latency associated nuclear antigen(LANA)がヒストンメチラーゼSUV39H1と相互作用し、ゲノムをヘテロクロマチン化することにより誘導され、このことが潜伏感染での遺伝子発現プロファイルに強く関わっていることを明らかにした。
著者
藤井 義明 萩原 正敏 加藤 茂明 審良 静男 久武 幸司 半田 宏 大熊 芳明 上田 均 箱嶋 敏雄 梅園 和彦
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本計画研究班の研究課題は、転写因子も含めて転写因子間の相互作用が最終的に遺伝子発現としてどのようにアウトプットされるかというメカニズムを分子のレベルで解明することを主な目的としている。Preinitiation complexの構成成分であるTFllHの9つのsubunitsをリコンビナントDNAを用いて発現させ、再構成に成功し、各々のサブユニットの機能を検討する系が確立された。またこの系を用いてERCC3のヘリカーゼ活性が転写活性化のプロモーターエスケープの段階に重要であることを示した。転写伸長反応もDSlFとNELFの抑制とpTEFbとFACTの活性化系によって精密にコントロールされていることが明らかにされた。DSlFの一つサブユニットp160のC末端の変異はゼブラフィッシュでは神経の発達異常を引き起こすことが分かった。広範な転写因子の共役因子として働くcbpについては、さらにgi3,AhR/Arnt,HlF-1α,lRF3などの共役因子として働くことやβ-カテニンが阻害して,P53の転写活性を抑制することを示した。2ハイブリッド法によってMBFl,UTF1,P68/P72が各々転写因子FT2-F1,RAR,ERα,βの転写共役因子として働くことを明らかにし、その構造を決定した。ノックアウトマウスを作製することによってAhR,AhRR,STAT3などの機能解析を行なった。
著者
Coban Cevayir 川合 覚 吉岡 芳親 審良 静男 堀井 俊宏 石井 健
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

血液脳関門(Blood-Brain Barrier, BBB)の機能障害は脳マラリアの主症状であるが、それがどのように起きているかほとんどわかっていない。私たちは超高磁場MRIおよび多光子顕微鏡を用いて嗅球が器質的および機能的にマラリア原虫によって損傷を受けていることを示した。嗅球を形成する索状微小毛管において、高熱とサイトカインストームに関連した、微小出血による寄生原虫の集積と細胞閉塞等が見られる。嗅覚喪失の早期検知と病原細胞の集積阻害による脳マラリアの初期段階での治療への応用が考えられる。
著者
永井 美之 審良 静男 菅村 和夫 柳 雄介 吉開 泰信 堀井 俊宏 光山 正雄 山本 直樹
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

本特定領域は感染と宿主応答の分子論的な最高度の基礎研究を推進し、感染症制御のための技術を開発することを目的とする。総括班は本特定領域研究の目的を厳正かつ遅滞なく達成するために組織された。総括班は班員に理論的、実質的なガイドラインを提示し、且つ、彼らの成果を評価したが、単に研究の質を問うのみではなく、微生物学と免疫学のように異なる研究分野の研究者間の共同研究を支援してきた。そのため、総括班は毎年全体班会議を開催した。会議では各班員が各年度の研究成果を報告し、その評価を受けた。さらに、総括班は、遺伝子操作マウスの作成、霊長類を用いた研究の支援を行うとともに、若手研究者を育成するために、沖縄フォーラムをはじめとする種々の会議を主催した。平成16年、17年度は顕著な研究成果を上げつつある45研究課題を計画研究とし、公募研究課題は100課題を採択した。研究期間中に審査制度のある国際的学術雑誌に3,993編の掲載または掲載確定の論文が公表された。特にImpact Factor (IF)が高いとされるNatureに27編、Scienceには17編が掲載または掲載確定された。その他、IF 10.000以上の一般学術誌では、EMBOに35編、JEMに101編、PNASに87編が掲載または掲載が確定された。これらの研究業績には微生物学者と免疫学者の共同研究による優れた業績も少なからず含まれている。また、これらの業績は総括班が共催する「あわじしま感染症・免疫学国際フォーラム」(平成14年、15年)において発表された。平成17年度には国際シンポジウム「Molecular Bases Underlying Microbial Infections and the Host Responses」を開催し、5年間の成果を発信した。さらに、基礎研究の成果を社会に還元するため、抗マラリア薬N86化合物とDNA/センダイベクター骨格のAIDSワクチンの前臨床試験及び、SE36マラリアワクチンと抗エイズ薬CCR5阻害剤(AK602)の第I相臨床試験を実施した。
著者
審良 静男
出版者
日本炎症・再生医学会
雑誌
炎症・再生 (ISSN:13468022)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.211-217, 2003 (Released:2006-12-01)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

Toll-like receptors (TLRs) play a critical role in the detection of invading pathogens and subsequent immune response against them. Individual TLRs recognize distinct microbial components. The TLR is a type 1 transmembrane receptor that is composed of an extracellular leucine-rich repeat (LRR) domain and cytoplasmic domain homologous to that of the IL-1R family. Therefore, TLR and IL-1R family use the same signaling molecules. Cytokine production in response to each TLR ligand is completely abolished in MyD88-deficient cells, indicating that MyD88 is an essential signaling molecule shared among IL-1R/Toll family. However, accumulating evidence indicates that differential utilization of adaptors including MyD88, TIRAP, and TRIF may activate overlapping as well as distinct signaling pathways, and finally give rise to distinct biological effects exerted by individual TLR family.
著者
植松 智 審良 静男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.6, pp.1115-1121, 2006-06-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
7
被引用文献数
1 6 2

Toll-likeレセプター (TLR) は自然免疫において重要な働きをする受容体である. 個々のTLRは病原体間でよく保存された病原体の構成成分を認識する. TLRが病原体成分を認識すると炎症反応に関わる遺伝子が誘導され, さらに引き続いて獲得免疫も活性化される. TLRのシグナル伝達経路の解明やシグナル分子の遺伝子多型の解析によって, 感染症, 動脈硬化, 免疫不全といった様々な疾患とTLRの関係が明らかになってきた.