著者
上田 明良 藤田 和幸 浦野 忠久 山田 倫章
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
no.8, pp.169-172, 1999-03-25

オオコクメスト成虫放虫によるマツノマダラカミキリへの捕食効果を,アカマツ丸太を入れた網室に双方の成虫を放すことで調べた。1996年の試験では7月の2週間,双方の成虫を同時に放した。放虫後回収したカミキリはほとんど生存していて,死亡したわずかも外傷はなかったことから,野外での成虫によるカミキリ成虫の捕食はないと判断できた。また,期間中放飼虫は飢えていて,ほとんど産卵できなかったと思われた。そこで,1997年の試験では,餌としてマツノマダラカミキリ終齢幼虫を丸太に針で刺した。卵巣の発達状況から産卵は行なわれたと考えられたが,割材調査ではカミキリ幼虫数に対照区と差がなく,放した成虫の子世代による捕食効果はみられなかった。キクイムシ類の加害が全ての丸太に多くみられた野外網室からは3頭のオオコクヌスト幼虫が得られたが,カミキリがいるだけでキクイムシ類がいなかった室内網室からは1頭しか得られなかった。このことは,野外丸太のような多様な生物が住む丸太ではオオコクヌストの生育が良く,捕食効果が上がるであろうことを暗示する。
著者
上田 明良 小林 正秀
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.77-83, 2001-05-16
参考文献数
22
被引用文献数
3

生立木へのカシノナガキクイムシの飛来消長を樹幹に巻き付けた粘着紙による捕獲で調べたところ, 最初の穿孔が観察された直後に雌雄の飛来数がピークに達し, その後急速に減少した。衰弱または枯死した木に対してはこれ以後の飛来はほとんどなかったが, 健全木では飛来が継続し, 8月中・下旬から9月中旬にかけて再び増加した。飛来数の合計はコナラ健全木で多かった。しかし, 最初のピークにおける飛来数は, 同所で同時に穿孔を受け始め, その後生残したコナラと枯死したミズナラでは, 枯死したミズナラの方が多かった。飛来数は1.6m高よりも0.5m高の方がいずれの調査木でも多かった。ヨシブエナガキクイムシはカシノナガキクイムシよりも飛来が1〜2週間遅れた。捕獲数は全ての枯死木で多かったが, 健全木の中にも多いものがあった。捕獲された高さについては傾向がなかった。