著者
大河内 勇 吉村 真由美 安部 哲人 加賀谷 悦子
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.796, 2005 (Released:2005-03-17)

小笠原諸島では、近年昆虫類が固有種を中心に急速に減少しており、減少の時期と、減少の及んでいる地理的範囲、及び減少している種の生態が、1960年代以降侵入して拡がった北米からの外来種グリーンアノールAnolis carolinensis(爬虫類、有鱗目)と一致することから、グリーンアノールが主要な減少要因と影響と考えられている。グリーンアノールの影響は単に固有種の減少にとどまらず、生態系にひろく浸透している。例えばこれまでに本種が小笠原の固有のハナバチを激減させ、花粉媒介のシステムを劇的に変えてしまったことがわかっている。 本報告では、これに加え、二つの生態的影響を報告する。一つ目は、グリーンアノール自身が花粉の媒介者となる可能性である。昼行性のトカゲ類が花粉媒介を行うことは、インド洋、太平洋の熱帯の島々では知られている。その理由として、トカゲ類の密度が高く、天敵が少なく、餌不足になることが挙げられている。この点について、グリーンアノールの密度との関連で報告する。 二点目はやはり外来のマツノザイセンチュウ病との関係を報告する。小笠原には戦前に外来のリュウキュウマツが導入された、全島を覆ったが、1970年代に侵入したマツノザイセンチュウ病で急速な松枯れが始まった。しかし、いかなる防除もしていないのに、松枯れは数年で終息、いまや激減してリュウキュウマツが復活しつつある。これも外来種でマツノザイセンチュウの媒介者、マツノマダラカミキリがグリーンアノールに激減させられているためと考えられる。
著者
加賀谷 悦子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第129回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.183, 2018-05-28 (Released:2018-05-28)

クビアカツヤカミキリAromia bungiiは近年日本に侵入した外来生物であり、サクラ、モモ等のバラ科樹木を加害して問題となっている。特定外来生物に今年指定され、その防除は喫緊の課題である。樹皮下で生育する幼虫については、樹木の伐倒駆除や排糞孔への殺虫剤注入で防除が進められている。一般に、一次性穿孔性昆虫の死因は、樹木による防御が多い。つまり、幼虫の多くが孔道に浸潤する樹液や樹脂に溺れることで死亡する。本種の被害木にも樹液の樹皮上への流出が認められることが多く、樹木の抵抗により幼虫が死亡していることが推察される。そこで、本研究ではソメイヨシノの被害樹で、樹液の流出箇所の掘り取り調査を行い、その樹皮下の孔道の有無及び幼虫の生存を調査した。14箇所の樹液流出部位の樹皮を除去したところ、全ての箇所で樹皮下に孔道が認められ、本種の加害による防御であることが確認された。その中で、幼虫は8孔で生存していた。そのため、幼虫の駆除は盛んにフラスが排出されているところだけではなく、樹液が流出しているところでも実施することが必要であることが判明した。
著者
平野 誠志 加賀谷 悦子 宮里 心一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00238, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
7

著者が所属する道路関連会社において,2020年4月から5月にかけて20名の新型コロナウイルス感染者が発生し,クラスターと呼ばれる感染者の集団が発生した.本研究では,事前に策定された既存の感染症BCPに基づき実施した対策について,レジリエンスによる再評価を実施した.すなわち,感染症リスクを低減し感染拡大から回復する力を「レジリエンスの大きさ」,実際の感染者や濃厚接触者,自宅待機者などが通常業務に及ぼす影響を「損害の大きさ」と定義し,両者を比較した「総合評価」を用いて対策の妥当性の再評価を行った.さらに,再評価結果および既存の感染症BCPの準用結果を用いて,新型コロナウイルス感染症を対象にしたBCPに反映すべき対策の提案を行った.
著者
加賀谷 悦子
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-8, 2005-03-31
被引用文献数
2

近年,生態学分野で急速に分子マーカーの利用が進んでおり,森林昆虫研究に関してもさまざまな成果が報告され始めた.本総説は,分子マーカーの手法と森林昆虫研究に関する国内外の研究事例を紹介するものである.手法として,シーケンシンダ,PCR-RFLP,SSCP,マイクロサテライト,SNPs,RAPD,AFLP,アロザイム,を解説した.上記の手法を用いたマイマイガ(Lymantria dispar)やタイリクヤツバキクイムシ(Ips typographies)などに関する国外の研究事例と,スギカミキリ(Semanotus japonicus)についての国内の研究事例を紹介し,地理的変異の解析をはじめ,近縁種との識別や,個体群間の移動実態の推定に分子マーカーが有用であることを示した.また,DNA解析に供する標本の保存法を説明した.