著者
西浦 廉政 柳田 達雄 飯間 誠 栄 伸一郎 上田 肇一 寺本 敬 上山 大信
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

散逸系におけるパルスやスポットなどの動的な空間局在パターン(以下、粒子解)はTuring不安定性による空間周期構造と共に、パターン形成理論における最も基本的な秩序解のクラスを成している。近年、化学反応系、ガス放電系、液晶系、形態形成系を始めとする様々な系において粒子解が実験的・数値的に発見されている。これらの間の強い相互作用,とくに衝突や不均一媒質での振る舞いに対して従来の摂動的手法の適用は困難であった.これはパルスやスポットが激しく衝突する場合を想像してもわかるように、一般に解の大変形を伴うのがその一因であり,全くの未踏領域であった。しかし動的局在パターンのダイナミクスを考える際には、衝突・散乱は避けて通ることはできない。実際、1次元では常に正面衝突は不可避であり、高次元においても系のダイナミクスの定性的変化は衝突の際に生じる。本研究課題の研究成果から、例えば衝突過程では、分水嶺解(scatter)という不安定なサドルが様々な秩序解が相空間で成すネットワークの中で軌道の交通整理をしていることが明らかになった。さらに粒子解のドリフト・分裂・崩壊等の不安定性を組み合わせることにより,衝突過程で生じるほとんどすべてのダイナミクスを余次元2あるいは3の特異点の近くで再現することが可能となり,同時に有限次元系に帰着することも可能となった.これにより散逸系という無限次元力学系における複雑な時空パターンの骨格構造がなかり解明された。さらに粒子解を乗せて運ぶ媒質が一様でない場合の波の振る舞いについても,不安定解ネットワークからの視点が極めて有用であることが判明した.これは不均一性に由来する不安定解(ディフェクト)が存在し,粒子解の不均一媒質での運動は粒子解とこのディフェクトの衝突過程とみなすことができることに由来する.この場合も粒子解の運動は有限次元系に帰着させることが可能であり,これにより,不均一性の勾配,高さ,幅,曲率等の幾何的状況に運動がどのように依存するか調べることが可能となった.
著者
上田 肇
出版者
静岡大学
雑誌
人文論集 (ISSN:02872013)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.A117-A132, 2003-01-31

Paul Auster's The Music of Chance is a very smart and stylish novel. Jim Nashe was a fireman in Boston, but after his wife left him, he asked his sister to take care of his daughter. And he began traveling around America. As long as he was driving, he carried no burdens. "Perhaps the music had something to do with that, the endless tapes of Bach and Mozart and Verdi that he listened to while sitting behind the wheel, as if the sounds were somehow emanating from him and drenching the landscape, turning the visible world into a reflection of his own thoughts." I would like to examine the story paying attention to the effects of music. I will put emphasis on the meaning of the anonymity of music. This may be closely related to the function of the simple language Paul Auster used in the novel. As Frederick R. Karl describes, Auster's deliberately flattened out American English conveys neutrality and withdrawal in the present age. His simple and easy language does not necessarily mean the story can be easily understood. On the contrary, it is a really difficult work. Auster's effort to quest for the function of language is apparent in the novel. He seems to emancipate language from the old barriers.