著者
堀口 俊一 寺本 敬子 西尾 久英 林 千代
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.87, no.5, pp.186-200, 2011 (Released:2013-05-25)
参考文献数
49
被引用文献数
2

我が国において明治中期から大正末期にかけて約30年間にわたり原因不明であった乳幼児の仮称所謂脳膜炎の原因が1923年,京都大学小児科教授平井毓太郎によって究明された。これを契機として,小児科学領域における該疾患に対する研究報告が堰を切ったように発表された。一部の研究にはすでに報告したように異説ないし疑義を呈するものもあったが,大かたの研究は平井の鉛毒説を支持し,展開させるものであった。著者らは1923(大正12)年から1926(大正15)年の4年間に「児科雑誌」に発表された該疾患に関連する諸論文,学会発表等を内容別に分類し,今回はそのうち総説,統計,調査,症例,臨床の各項について紹介し論考した。(写真2)
著者
寺本 敬 瀧山 晃弘 神谷 武志
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-07-10

本研究では画像形態の位相的な性質に注目し、診断医と協働しながら以下の 2 つの医療画像データ群に, 計算論的トポロジー手法を適用した。①ウサギ腱移植モデルのマイクロ CT 画像データから再構築した 3 次元構造について、微細構造の骨梁数、開気孔、閉気孔の数を示す位相的不変量を計算した。組織学的観察結果と比較しながら、骨形態計測における定量的指標としてベッチ数比を提案した。②病理診断の免疫組織化学について、パーシステントホモロジー理論による定量的評価法を提案した。乳がん患者の染色画像データから計算したパーシステント図から新しい特徴量を定義し、病理医らの目視判断による従来の結果と比較検討した。
著者
西浦 廉政 寺本 敬
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

トポロジー的手法により,材料科学の新規機能材料作成法において重要な自己組織化原理の数理的基盤,とりわけ新たな「非侵襲的数理測定法」の確立を目指すことが本研究の主題である.手法としてはComputational Homologyの有効性をポリマー系において実証することを実施した.具体的には相分離におけるトポロジー量のスケール則を数値的に示した.相分離が進行する過程をベッチ数で計って,それが時間の-1乗に比例する巾則を発見した.またブロックコポリマー系においては,非局所項の影響でミクロ相分離に移行するが,その遷移の様子もベッチ数の巾則の変化から捉えることができた.さらにパラメータを変化させたときの,ポリマー形態の遷移の様子もベッチ数あるいはオイラー数の変化により,どのような遷移状態を経て経過するか明らかとなった.例えばレイヤーからシリンダーに変化するとき,その途中に穴あきレイヤーという形状を経由することが,ベッチ数の計算より判定可能となる.このアプローチはポリマー系のように自由エネルギー最小を達成する定常状態のみならず,より一般の反応拡散系においても有効であり,それにより極めて動的かつ複雑な形態を示すものに対しても今後大きな寄与を果たすと考えられる.例えばインターミッテント的挙動をする時空カオスに対し,経由するいくつかの遷移的パターンについてより詳しいトポロジー情報が得られると期待される.以上の成果はMorphological Characterization of the Diblock Copolymer Problem with Topological Computationという題目でJJIAMに投稿した.
著者
堀口 俊一 寺本 敬子 西尾 久英 林 千代
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.130-142, 2012 (Released:2014-03-25)
参考文献数
46

我が国において,1895(明治28)年に「所謂脳膜炎」と称される乳幼児の疾病が報告されて以来,その原因が母親の用いる白粉中の鉛による中毒であることが1923(大正12)年京都大学小児科教授平井毓太郎によって明らかにされた。以来,小児科学領域において,該疾患に対する研究報告が堰を切ったように発表された。本稿では,前報及び前々報に続き,1927(昭和2)年以降,鉛白使用化粧品に対する規制が明文化された1930(昭和5)年までの4年間に「児科雑誌」に発表された該疾患に関する諸論文,学会発表等83編を内容別に分類し,今回はそのうち総説,症例,臨床所見,診療,病理・剖検の各項目について取り上げて論考した。(写真3)
著者
西浦 廉政 柳田 達雄 飯間 誠 栄 伸一郎 上田 肇一 寺本 敬 上山 大信
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

散逸系におけるパルスやスポットなどの動的な空間局在パターン(以下、粒子解)はTuring不安定性による空間周期構造と共に、パターン形成理論における最も基本的な秩序解のクラスを成している。近年、化学反応系、ガス放電系、液晶系、形態形成系を始めとする様々な系において粒子解が実験的・数値的に発見されている。これらの間の強い相互作用,とくに衝突や不均一媒質での振る舞いに対して従来の摂動的手法の適用は困難であった.これはパルスやスポットが激しく衝突する場合を想像してもわかるように、一般に解の大変形を伴うのがその一因であり,全くの未踏領域であった。しかし動的局在パターンのダイナミクスを考える際には、衝突・散乱は避けて通ることはできない。実際、1次元では常に正面衝突は不可避であり、高次元においても系のダイナミクスの定性的変化は衝突の際に生じる。本研究課題の研究成果から、例えば衝突過程では、分水嶺解(scatter)という不安定なサドルが様々な秩序解が相空間で成すネットワークの中で軌道の交通整理をしていることが明らかになった。さらに粒子解のドリフト・分裂・崩壊等の不安定性を組み合わせることにより,衝突過程で生じるほとんどすべてのダイナミクスを余次元2あるいは3の特異点の近くで再現することが可能となり,同時に有限次元系に帰着することも可能となった.これにより散逸系という無限次元力学系における複雑な時空パターンの骨格構造がなかり解明された。さらに粒子解を乗せて運ぶ媒質が一様でない場合の波の振る舞いについても,不安定解ネットワークからの視点が極めて有用であることが判明した.これは不均一性に由来する不安定解(ディフェクト)が存在し,粒子解の不均一媒質での運動は粒子解とこのディフェクトの衝突過程とみなすことができることに由来する.この場合も粒子解の運動は有限次元系に帰着させることが可能であり,これにより,不均一性の勾配,高さ,幅,曲率等の幾何的状況に運動がどのように依存するか調べることが可能となった.
著者
吉田 香 川添 禎浩 寺本 敬子
出版者
京都光華女子大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

微量元素はヒトや動物が生体を正常に維持する上で必要なものが多く、ヒトは生命を維持していく上で適量摂取していく必要がある。微量元素が不足すると欠乏症状が生じ、体調に異変が生じる。しかし、これらの元素を過剰摂取すると健康被害を起こすことも知られている。アルミニウムはわずかな過剰摂取のために神経障害などの健康被害をひき起こす可能性がある元素である。近年、人々の健康への関心が高まり、種々の健康食品を利用する人が増えている。そのため、食品のみから摂る場合には注意する必要のなかった栄養素の過剰摂取が食品とサプリメントを合わせて摂ることにより、起こる可能性がある。昨年度の研究の結果、サプリメントの中には非常にアルミニウム濃度が高いものがあった。そこで、今年度は種々のサプリメントについて微量元素量を測定した。その結果、野菜、ビール酵母、ウコンなどの天然原料由来のサプリメントでアルミニウム含有量が高いものがあった。また、これらのサプリメントの中には、アルミニウムと同時にマンガン、鉄および亜鉛量なども高いものがあった。天然原料由来のサプリメントの摂取によるアルミニウムを含めた微量元素の過剰摂取が健康に及ぼす影響に注意する必要がある。そのひとつの例として、アルミニウム過剰摂取が動物の行動へ与える影響を調べるため、マウスに飲料水として乳酸アルミニウム溶液を与え、マウスの行動(回転カゴ)に及ぼすアルミニウムの影響を観察した。その結果、行動の低下が観察された。ただし、個体差が大きかったため、以後継続して観察を行う必要がある。