著者
植木 隆介 駒澤 伸泰 岡野 紫 多田羅 恒雄 上農 喜朗
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.131-136, 2013 (Released:2013-03-12)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

手術室での火災対策は病院の危機管理体制上,重要な課題の一つである.手術室は,火災発生に必要な3つの要因,発火源,酸素,可燃物がそろっており,火災発生が起こりやすいことを十分認識する必要がある.全身麻酔下で手術中の患者を迅速に移動させることは難しいため,日頃からスタッフ全員が火災について危機管理意識を持ち防止に努める必要がある.また,万一火災が発生した場合でも初期徴候を見逃さず早期発見し,初期消火することが重要である.また,火災を想定した防災訓練により停電や酸素供給停止,避難の方法,指揮系統を確認することは必要で災害対策の基本となる.
著者
中川 雅史 内藤 京子 上農 喜朗
出版者
日本循環制御医学会
雑誌
循環制御 (ISSN:03891844)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.71-75, 2008 (Released:2008-07-02)
参考文献数
6

Many kinds of anesthetic regimens are employed for fast-track cardiovascular surgery. We introduce our fast-track anesthesia method using remifentanil aimed for tracheal extubation in the operation room after cardiovascular surgery. Anesthesia was induced and maintained by target controlled infusion of propofol(in cases using cardiopulmonary bypass(CPB)) or sevoflurane(in cases not using CPB) with remifentanil infusion 0.3mcg/kg/min. Intravenous fentanyl infusion 0.5μg/kg/hr was started at about 2 hours before the end of surgery for postoperative analgesia. After the surgery, patients were awaken and extubated if chest X-ray didn’t show any abnormal signs. Tracheal extubation in the operation room was achieved 58.3% of patients, and no severe complication was observed. Compared with having been possible for the operating room extubation as for 76.5% of cardiac surgery, the vascular surgery was able to do the operating room extubation only 14.3%(p=0.005). However, when the cases which were able to carry out the extubation was included within 4 hours after ICU entering, the extubation was possible for 83.3% of total cases. Thus, this anesthetic method with remifentanil could be used as one of regimens for fast-track cardiovascular anesthesia.
著者
上農 喜朗
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.533-542, 2021-05-01

はじめに1997年,私は創刊されて間もない本誌に「熱力学と麻酔」というタイトルで,熱力学的な視点からみた麻酔作用機序を紹介しました1)。それから約四半世紀がたちましたが,最近も同じような検討を行った論文が発表されています2,3)。熱力学に例外はなく,当然なこととはいえ,昔の研究が再検討され支持されたことは嬉しいことです。 ところで,私は当時からリン脂質膜の相転移温度を低下させたり,酵素の反応を抑制したり,膜の活動電位を抑えるというような分子レベルでの麻酔薬の作用と,生体で見られる麻酔現象の間に乖離があることが気になっていました。そこで,両者をつなぐ神経ネットワークに重要な役割があるのではないかと考えていました。 その頃漠然とイメージしていたのが,本稿のサブタイトル「意識は記憶の時間微分である」という言葉です。全身麻酔の重要な要素である意識消失を数学的に表現したものです。本稿では麻酔薬の分子レベルでの効果と臨床の麻酔作用をつなぐものとして神経ネットワークをモデル化し,麻酔薬が作用したときの伝達遮断を数学的に考察します。
著者
駒澤 伸泰 上農 喜朗
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.252-258, 2014 (Released:2014-04-30)
参考文献数
5
被引用文献数
2

米国麻酔科学会は,2002年に「非麻酔科医のための鎮静・鎮痛薬投与に関する診療ガイドライン(ASA-SED)」を改訂した.ASA-SEDは鎮静を,反応性や呼吸・循環状態によって,軽い鎮静から,中等度鎮静,深い鎮静,全身麻酔までの連続した4段階に定義した.ガイドラインは下記の6点,すなわち,(1)術前患者評価:術前合併症,気道評価,絶飲食時間の設定,(2)患者モニタリング:酸素化のモニタリング,呼名に対する反応評価,心電図,カプノグラム,(3)鎮静担当者の確保とその訓練:鎮静担当者の集中と一次救命処置,二次救命処置等の緊急時対応,(4)緊急用機材の準備と薬剤投与:蘇生用薬剤,陽圧換気・気道管理器具,静脈路確保,(5)薬剤投与方法の原則:鎮静薬と鎮痛薬の相互作用,拮抗薬の準備,用量滴定,(6)回復期のケア:退室基準・退院基準策定の重要性,を強調している.さらに,ASA-SEDは一貫して鎮静が目標レベルより深くなった場合の準備と対応が必須であるとしている.