- 著者
-
上野 雄史
- 出版者
- 日本保険学会
- 雑誌
- 保険学雑誌 (ISSN:03872939)
- 巻号頁・発行日
- vol.2017, no.638, pp.638_107-638_124, 2017-09-30 (Released:2018-05-22)
- 参考文献数
- 10
- 被引用文献数
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2
本稿では,2017年5月に公表されたIFRS17「保険契約」適用後の保険会社のディスクロージャーのあり方について論じる。IFRS17は保険負債に関する詳細な情報が提供される枠組みを提示し,投資家の意思決定に有用な情報を提供することが期待されている。一方で,IFRS17は,割引率の変動に関する損益計上などに選択肢が与えられ,かつ多くの測定要素において具体的な手法が示されていない。このため,IFRS17に基づく情報が投資家の意思決定に有用であるかどうかは未知数であろう。近年では,形式的な会計情報以外の重要性が高まっており,会計処理の複雑化や妥協的な基準設定は情報の有用性を喪失させることになる。一方で,保険会社(保険者)の法的責任に基づいて開示された情報は,利害関係者にファンダメンタル(基礎的な情報)を提供することに繋がり,保険契約者を含む利害関係者間の利害調整を円滑化することが期待される。