著者
下野 勝昭
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.8-15, 1990
被引用文献数
2

表層多腐地質多湿黒ボク土の土壌pHが各種畑作物の生育,収量と土壌中の各種成分に与える影響を検討した.得られた結果は以下のように要約できる. 1)トウモロコシを除く各作物は低土壌pHで初期成育が劣り,各作物の耐酸性はトウモロコシ>秋コムギ>インゲン>テンサイ>2条オオムギの順であった. 2)北海道の主要畑作物である秋コムギ,インゲン,テンサイはH_2O-pH 4.5以下で酸性障害を受け,初期成育値が劣った.H_2O-pH 4.5に対応する水溶性(土:水比=1:2.5)Al濃度は,1.9ppm,Al活動度は2.33×10^<-5 (M/l)^<1/3> で,酸性障害の主因はAl過剰害によるものと推定された. 3)酸性障害が発現しない条件下における土壌pHと各作物の収量反応は,バレイショとテンサイは,それぞれH_2O-pH 5.5〜5.7, 5.7〜6.1を頂点とする山形の曲線を示し,秋コムギはH_2O-pH 5.5〜6.3を頂点とする台形形の曲線を示し,これらの作物は炭カル施用による一定程度のH_2O-pH 上昇で収量増になった. 4)炭カル施用によるH_2O-pHの上昇で水溶性(土:水比=1:2.5) P_2O_5濃度とトルオーグP_2O/5含量は低下,減少し,作物体のリン酸吸収量も減少傾向が認められた. 5)炭カル施用による収量増の主因は,テンサイ,インゲン,春コムギでは全乾物重の増加ではなく,収穫指数の向上にあった.また,この場合,リン酸質資材を併施用すると,全乾物重も増加し,収量はさらに高まった.
著者
奥村 正敏 東田 修司 山神 正弘 下野 勝昭
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.274-281, 1994-06-05

インゲン連作土壌を充填したポット条件下で.52作物種の作付が後作インゲンの根腐病発生におよぼす影響を検討し,以下の結果を得た.1)野菜,緑肥,ハープ,花き等の作物種を栽培後,作物体を搬出した処理では,全作物種が根褐変を抑制した.根褐変指数の低下率が20%以下にとどまったのは供試作物全体の約44%であり,これらの根腐病抑制効果は小さいと考えられ,21〜30%の低下率を示した作物種は,ニンジン,ナガネギ,ハツカダイコン,マリーゴールドなど全体の33%,低下率が31%以上で大きい抑制効果を示した作物種は,ニラ,チンゲンサイ,ペルコ,アルファルファ,スペアミント,コカブなど全体の23%であった.抑制効果の科間差は認められなかった.2)インゲン根腐病に対する抑制効果と緑肥類を除く作物根のメタノールの抽出物の病原菌(F. solaniとF.oxysporum)に対する抗菌活性との間には,ミツバ,ニンジン,シュンギク,ニラなど数種の作物で正の対応関係が存在したが,全体的にみると,両者の間には一定の対応関係が認められなかった.3)緑肥類10種については,作物体の搬出処理のほかにすき込み処理も設けた.その結果,アルファルファ,ペルコ,マリーゴールドではいずれの処理系列でもインゲン根腐病に対する抑制効果が大きかった.搬出処理に比べてすき込み処理で効果が大きい作物はアカクローバ,トウモロコシ,ソルゴーであった.他の作物でもすき込みによって効果が高まったが,その程度は小さかった.なおインゲンの残渣物すき込み処理でも抑制効果が認められた.4)インゲン根腐病を抑制した緑肥作物種のなかでは,病原菌に対する抗菌活性が(1)アカクローバ,アルファルファのように強いもの,(2)マリーゴールド,レバナ,エンバクのように中庸なもの,(3)トウモロコシ,ペルコ,ソルゴーのように弱いものに分類された.