著者
中島 佳緒里
出版者
日本赤十字豊田看護大学
雑誌
日本赤十字豊田看護大学紀要 (ISSN:13499556)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.27-32, 2010-03

本研究は、周手術期に用いられているインセンティブ・スパイロメーター(incentive spirometer;IS)の効果を検証するために、データベース検索によって抽出された13 文献を用いて、術後呼吸器合併症に対するIS の効果を検討した。その結果、術前および術前・術後におけるIS 単独の訓練効果を示した文献はなかった。また、術後のIS 訓練の介入を報告した文献のうち、腹部手術あるいは低リスク患者では横隔膜呼吸とIS 訓練との比較を、心臓血管手術や胸部手術、高リスク患者では呼吸理学療法を基本したIS 訓練の追加介入を比較し同等の効果であるとの結果であった。以上のことから、IS 訓練は、手術侵襲の程度によって選択することが望ましく、腹部手術程度であれば横隔膜呼吸あるいはIS訓練を、心臓血管手術では呼吸理学療法がよいことが示唆された。
著者
中島 佳緒里 清水 遵
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.230-233, 2011-12-30 (Released:2012-01-23)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

本研究の目的は, 満腹感に代わる摂食後の主観的評価指標として我々が開発した内臓感覚表現の尺度が摂食後の内臓の状態を反映するのかを, 時間経過による得点推移によって検討することであった。健康な成人33名 (平均年齢21.0歳, 男性10名, 女性23名) を対象に, VASによる満腹感および内臓感覚表現尺度17項目が, 摂食前・直後・30分後・60分後・以降1時間毎に6時間まで測定された。テスト食には, 656.3kcalの市販の弁当と緑茶350mLを用いた。その結果, VASで測定した満腹感得点において摂取前と比較して有意に高い値を示したのは, 摂食後300分までであったが, 内臓感覚表現の尺度得点は摂食後180分までであった。さらに, 下位項目である容量・重量因子得点が摂取前平均値に戻るに要した時間 (区間) をパターン分類した結果, 分析した対象者28名のうち16名 (57.1%) が180から240分区間で低下したパターン (II) であった。摂取後180分はシンチグラフィーによる胃容量の全排出時間に類似しており, 「容量・重量因子」得点は, 胃を主体とした内臓からの情報をとらえていることが示唆された。
著者
中島 佳緒里 櫻井 優太 清水 遵
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.325-333, 2009-03-30 (Released:2009-05-01)
参考文献数
28
被引用文献数
1

本研究は, 摂食行動における身体内部の手がかりとして内臓感覚に注目し, 満腹感に関する内臓感覚表現語の構造の特定と内臓感覚表現尺度を作成することを目的とした。健康成人の内臓感覚表現を模索し, 表現語の尺度項目を作成するためにフォーカスグループによる予備調査を行った。  予備調査は, 53名の20~30代の健康成人を対象に, 満腹感あるいは空腹感を示す表現について, 食事前後の自由記述による質問紙調査を実施した。その結果, 満腹感あるいは空腹感を示す表現は, 「具体的・局所的な表現」56表現, 「状態に対する認知的表現」34表現が抽出された。内臓感覚表現の予備尺度には具体的な表現である38語を使用した。  本調査では, 作成された予備尺度を使って, 健康な大学生340名を13時と16時の2群に分けて質問紙調査を実施した。質問紙は, VASによる満腹感あるいは空腹感の程度と, 予備尺度38項目で構成された。探索的因子分析の結果, 満腹感に関する内臓感覚表現は。3因子構造であることが明らかになった。第I因子19項目は‘何かある感じ’‘膨れた感じ’‘ズッシリする’‘たまっている’など, 内臓の容量や重量を示す表現から「容量・重量因子」とした。第II因子9項目は‘キュルキュルする’‘縮まる’‘グルグルする’など消化管の蠕動運動の表現から「運動因子」とした。また, 第III因子5項目は, ‘はきそうな’‘痛い’‘気持悪くなる’など嫌悪を示す表現から「嫌悪因子」とした。  さらに, VAS値を基準変数とした重回帰分析の結果, 満腹感に関する内臓感覚表現は, 「容量・重量因子」と「運動因子」により形成されていることが明らかになった。以上の結果より, 内臓感覚表現尺度の作成を2因子により作成し, 尺度の項目分析を行ったところ2つの表現が削除され, 「容量・重量因子」12項目, 「運動因子」5項目となった。削除項目を除外した後のクロンバックα係数は, それぞれ0.94, 0.80であり, 作成した尺度は妥当性の高い結果であった。
著者
林 和枝 中島 佳緒里 高見 精一郎 端谷毅
出版者
日本赤十字豊田看護大学
雑誌
日本赤十字豊田看護大学紀要 (ISSN:13499556)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.47-53, 2011-03-31
被引用文献数
1

本研究は、食育推進授業を計画するための基礎資料を作成することを目的とし、女子中学生を対象に骨量・身体測定ならびに生活習慣に関して調査をしたものである。対象は、B 公立中学校に在籍する1 から3 年生の380 名である。骨量の測定は、超音波骨密度測定器を使用し、右踵にて測定した。調査項目は、身長、体重、生活習慣、運動習慣、月経状況である。その結果、3 年生以外で骨量平均値とBMI に有意な相関を認めた。月経の有無と骨量平均値では、3 学年全体と1 年生で有意差がみられた。食生活では、3 年生のみ、偏食のある生徒の骨量平均値が低い傾向を示した。運動習慣は、運動部や学校以外の運動サークルに所属している生徒、小学生の時に運動部に所属していた生徒で、骨量平均値が有意に高い結果が得られた。以上より、女子中学生の骨量増加には、バランスのとれた食事を促すことと、学童期の運動習慣の獲得とその継続の重要性が再確認された。