著者
中村 誠宏 吉川 雅之 松田 久司 藤本 勝好 田邉 元三 中嶋 聡一 松本 崇宏 太田 智絵 小川 慶子 村岡 修
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.PosterP-6, 2013

<p>1.序論</p><p> 花は古くから観賞用のほかに食用や薬用にも供されてきた.中国伝統医学 (中医学) や漢方医学では,紅花,槐花,菊花,金銀花などの花部由来の生薬が処方中に配剤されている.西洋ハーブとしても,マリーゴールド,カモミール,デージー,エバーラスティングなどの薬用花が数多く知られている.欧州においては,アロマセラピーなどにおいて花の精油がしばしば用いられてきた.また,1930年頃にイギリス人医師のエドワード バッチによって花エキスを用いた"フラワーレメディ"の考え方が提唱され,今日でも信奉する人も多い.しかし,花の成分レベルでの薬効解明研究はまだ十分ではない.そこで著者は,伝統医学で用いられる重要な薬用花である椿花 (Camellia japonica, 花部) および蓮花 (Nelumbo nucifera, 花部) の生体機能性成分の探索を行った.</p><p> </p><p>2. 中国産椿花 (Camellia japonica, 花部) の新規サポニン成分とメラニン生成抑制作用</p><p> ツバキ科植物ツバキ (C. japonica) は日本を原産とする常緑広葉樹の一種で, 台湾, 朝鮮, 中国,インドネシア等アジア各地に広く分布する. その花部である椿花は中国では「山茶花」と記載され,古来より抗炎症薬,健胃薬,止血薬および打撲傷の治療 (外用薬) 等に用いられてきた.我々はこれまでに,日本産椿花からノルオレアナン型トリテルペンサポニン camellioside A–D を得て,胃粘膜保護および血小板凝集作用を有することを明らかにした.<sup>1,2</sup> 今回,椿花の生体機能性成分の探索研究の一環として,中国産 (雲南省) 椿花の抽出エキスの生物活性評価を行ったところ,マウスのメラノサイト由来 B16 melanoma 4A5 へのテオフィリン刺激によるメラニン生成抑制作用を示すことを見出したことから,含有成分の探索研究に着手した.すなわち,中国産椿花のメタノール抽出エキスを,酢酸エチル,n-ブタノールおよび水にて分配抽出し,n-ブタノール移行部を各種カラムクロマトグラフィーおよび HPLC を用いて繰り返し分離精製した.その結果,8 種の新規サポニン sanchakasaponin A–H (1–8) および 8 種の既知サポニン 9−16を単離した (図 1).得られたサポニン成分のメラニン生成抑制作用について検討を行ったところ,サポニン 2–6, 8, 10, 12−14, 16 は強い抑制作用 [IC<sub>50</sub>: 1.7−4.7 mM] を示すことが明らかとなり,その作用は positive controlであるアルブチン [IC<sub>50</sub>: 174 mM] よりも強いことが明らかとなった.一方,サポニン 3–6, 8, 10, 16 にはメラノーマ細胞に対する細胞毒性 [10 mM による細胞増殖抑制率: 78.7–88.3%] が認められた.以上の結果から,16位,21位および22位に結合したアシル基の存在は,メラニンの生成抑制や細胞毒性において重要であることが示された.<sup>3,4</sup></p><p>図 1. 中国産椿花の新規サポニン成分</p><p>3. 韓国産椿花 (Camellia japonica, 花部) の新規サポニン成分とメラニン生成抑制および繊維芽細胞増殖促進作用</p><p> 中国産椿花の成分探索と同様の方法を用い,韓国産 (済州島) 椿花のサポニン成分の探索を行った.その結果,2 種の既知サポニン [camellioside A (17), D (19)] とともに2 種の新規サポニン camellioside E</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
中嶋 聡一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.60, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
4

皮膚における紫外線からの防御機構である色素「メラニン」はメラニン細胞で生成される.近年の美白ブームにより,薬学の分野でも天然物由来のメラニン生成抑制作用物質の探索が盛んに行われている.本稿では,重要な生薬であるオタネニンジン(Panax ginseng)の成分ギンセノシドRb1(Rb1)およびギンセノシドRg1(Rg1)が,ヒトメラニン細胞においてメラニンの生成を刺激するというMaoらの報告を紹介したい.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Mao L. et al., Evid. Based Complement. Alternat. Med., 2014, Article ID892073 (2014).2) Fang F. et al., BBA. Molecular Basis of Disease, 1822, 286-292 (2012).3) Busca R., Ballotti R., Pigment Cell Res., 13, 60-69 (2000).4) Wang L. et al., AAPS Pharm. Sci. Tech., 15, 1252-1262 (2014).