著者
中村 佳敬
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度は、雷嵐に伴って発生するシビア現象と雷放電活動を全世界的に解析し、シビア現象をもたらす積乱雲と雷放電の全球的な分布・傾向を推定するため、全球落雷位置標定装置による全球の発雷分布と気象衛星による全球の降水分布の関係について研究を行った。本研究で使用した全球落雷位置標定装置は、世界50か所以上にVLFセンサを設置しており海洋上を含めた全球の雷放電活動をモニタリングしている米国ワシントン大学のWorld Wide Lightning Location Network (WWLLN)であり、全球の降水分布は米国海洋大気圏局の気象衛星に搭載されているマイクロ放射計Microwave Humidity Sounder (MHS)のデータセットから得られた固体降水量の鉛直積算値であるIce Water Path (IWP)を使用した。米国ワシントン大学に滞在し、これらの観測機器で得られた雷放電活動と固体降水量との関係を比較した結果、海域と陸域とで傾向が異なるものの、発雷頻度とIWPは指数関係にあることが明らかとなった。この発雷-降水関係を利用し、発雷観測を基とする衛星降水未観測域における降水量推定の可能性を示した。得られた雷放電と降水量の関係は光学観測に基づく推定結果と異なる傾向を示している。これは、中和電荷量等雷放電の規模が今まで考慮されていなかったためであると考えられ、今後の課題として陸域と海域、光学観測と電磁波観測で得られた関係性の違いを説明するために、雷撃のエネルギー量の観点からの解析が挙げられる。モデル構築の面では、本年度は気象庁非静力学モデルに対して、広帯域レーダシステムが種子島で観測した発雷を伴う雷嵐について電荷構造を推定した。この際、放電過程を導入した結果、一つの雷嵐の盛衰過程での電荷構造を再現した。雲放電が再現された一方で,本事例ついては対地放電が再現されなかったため、今後の課題としては落雷位置標定装置による対地放電の観測結果との比較評価が挙げられる。
著者
中村 佳敬
出版者
神戸市立工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

上向き落雷は冬季雷の特徴のひとつだが、一般的な雷放電との相違性などについて雲内電荷の観点からの議論がなされていない。冬季雲内の電荷領域、放電規模を放電路可視化装置により実証するため、夏季雷では実績のあるVHF帯干渉計とLF帯受信機を冬季雷に向けて改良した。VHF帯干渉計は記録方式を連続記録にすることで、従来機では制約のあるリコイルリーダを複数可視化し雲内電荷領域を推定した。冬季に発生する水平に広がる雷放電にはLF帯受信機が適しているが詳細な放電過程の可視化には不十分である。この一因にLF帯受信機のアンテナ周波数特性にあると考え、受信アンテナ回路の改良を実施し試験観測によりその有用性を評価した。