著者
前田 美季 中村 千種 内垣 亜希子 弓庭 喜美子 内海 みよ子 志波 充 三家 登喜夫 宮井 信行 有田 幹雄
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.158-162, 2011 (Released:2011-07-15)
参考文献数
17
被引用文献数
2 2

目的:加齢とともに高血圧の罹患率は増加するが,閉経との関連は明らかではない.女性の加齢及び閉経による血管系に及ぼす影響を明らかにするため,年齢により分類し比較検討した.方法:151名の中高年女性を性成熟期群,移行期群,閉経期群に分類し,身体計測,血圧測定,血液生化学検査,上腕・足首脈波速度(brachial-ankle pulse wave velocity:baPWV),血圧脈波検査(Augmentation Index:AI),内皮依存性血管拡張反応(flow-mediated vasodilation;%FMD),心エコー図検査を実施し,3群間の心・血管系に及ぼす影響を比較した.結果:収縮期血圧は性成熟期群に比し閉経期群,移行期群が有意に高値を示し,移行期群と閉経期群間にも有意差がみられた.baPWVは,性成熟期群に比し閉経期群で有意に高値を示し,移行期群と閉経期群間にも有意差がみられた.AIは性成熟期群に比し閉経期群,移行期群が有意に高値を示した.%FMDは性成熟期群,移行期群に比し閉経期群が有意に低値を示し,血清クレアチニン,推算糸球体濾過値(eGFR),高感度CRPは有意に高値を示した.E/Aは性成熟期群に比し閉経期群,移行期群が有意に低値を示し,移行期群と閉経期群間にも有意差がみられた(いずれもp<0.05).結論:加齢および閉経により血圧の上昇,動脈硬化の進行,血管内皮機能の低下などが認められた.女性の健康管理や心血管イベント防止のためには,年齢に応じたエストロゲンの作用による心血管系の変化を理解することが重要であることが示唆された.
著者
内川 友起子 中村 千種 宮井 信行 伊藤 克之 石井 敦子 内海 みよ子 有田 幹雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.799-804, 2012 (Released:2013-12-26)
参考文献数
17

メタボリックシンドローム(metabolic syndrome; MetS) によって引き起こされる動脈硬化のリスクを軽減するには,身体活動を含めた生活習慣を是正することが基本となる. MetSにおける砂浜でのウォーキングがMetSの危険因子に及ぼす影響については十分な検討はなされていない. 本研究では砂浜でのウォーキングがMetSの心血管危険因子に及ぼす影響を検討した. 重篤な心血管病のない44名の住民を対象とした. 無作為クロスオーバー法を用い,A群: 運動介入—観察期間—非運動介入(n=22) とB群: 非運動介入—観察期間—運動介入(n=22) に分類した. 運動介入時は,1日1万歩の砂浜での歩行運動を行い,非運動介入時は,積極的な運動を行わないようにした. 介入·観察期間はそれぞれ8週間とし,介入前後に,身体計測,血圧,augmentation index(AI) ,血液検査などを計4回実施した. 運動介入時(n=44) の平均歩行数は9,692±1,592歩で,非運動介入時(n=41) の平均歩行数は6,386±1,633歩であった. 運動介入時群に,体重,腹囲,BMIが有意に改善した. 血圧は有意でないものの改善傾向であり,radial(r) AIは有意に減少した. 中性脂肪は有意に低下,インスリン,空腹時血糖は低下傾向であり,特にHbA1cで有意に低下した. 一方,非運動介入時は,いずれも有意差を認めなかった. 以上より,身体活動は内臓脂肪の減少とインスリン抵抗性を改善させるとともに動脈スティフネスの改善を示したことより,1日1万歩程度の砂浜での歩行は,MetS改善に寄与する有効な手段であることが示唆された.