著者
野上 絵理子 宮井 信行 張 岩 阪口 将登 早川 博子 服部 園美 内海 みよ子 上松 右二 有田 幹雄
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.21003, 2021 (Released:2021-07-10)
参考文献数
35
被引用文献数
3

Objectives: Recently, attention has been paid to the impact of cigarette smoking on skeletal muscles, as its underlying pathophysiological mechanism has been gradually elucidated. In this study, we aimed to examine whether cigarette smoking is associated with muscle mass reduction and low muscle strength in elderly men.Methods: The study participants comprised 417 community-dwelling elderly men (aged 73±6 years) without severe glucose intolerance, chronic kidney disease, or liver disease. Bioelectrical impedance analysis was performed to estimate appendicular skeletal muscle mass (ASM), which was normalized for height (ASM index, kg/m2). Handgrip strength (HGS) was measured using a Smedley grip dynamometer. Cumulative smoking exposure level during a lifetime was expressed in pack-years, which is a product of the average number of packs of cigarettes smoked per day and smoking duration in years.Results: When the participants were stratified on the basis of cumulative smoking exposure (<10 pack-years, 10–39 pack-years, ≥40 pack-years), the ASM index and HGS progressively decreased with increasing exposure level (P for trend <0.01). In multiple regression analysis, heavy smoking (defined as ≥40 pack-years) was found to be a significant determinant of the ASM index and HGS, independent of potential confounding factors. Among former smokers, the subgroup that quit smoking for ≥20 years had a significantly higher ASM index and HGS than the subgroup that quit smoking for <10 years. The duration of smoking cessation was significantly associated with the ASM index and HGS, even after adjusting for cumulative smoking exposure.Conclusions: These findings suggest that cigarette smoking contributes to the loss of muscle mass and function in elderly men and that smoking cessation could reverse the impact of cigarette smoking on skeletal muscles.
著者
塩崎 万起 宮井 信行 森岡 郁晴 内海 みよ子 小池 廣昭 有田 幹雄 宮下 和久
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.115-124, 2013 (Released:2013-08-15)
参考文献数
29
被引用文献数
5 6

目的:警察官は他の公務員と比べて心疾患による休業率が高く,在職死亡においても常に心疾患は死因の上位を占めることから重要な課題となっている.本研究では,A県の男性警察官を対象に,近年増加傾向にある虚血性心疾患に焦点をあて,各種危険因子の保有状況とその背景要因としての勤務状況や生活様式の特徴を明らかにすることを目的として検討を行った.対象と方法: 症例対照研究により,虚血性心疾患の発症に関連する危険因子について検討した.対象はA県警察の男性警察官で,1996–2011年に新規に虚血性心疾患を発症した58名を症例群,脳・心血管疾患の既往がない者の中から年齢と階級をマッチさせて抽出した116名を対照群とした.虚血性心疾患の発症5年前の健診データを用いて,肥満,高血圧,脂質異常症,耐糖能障害,高尿酸血症,喫煙の有無を両群で比較するとともに,多重ロジスティック回帰分析を用いて調整オッズ比を算出した.続いて,男性警察官1,539名と一般職員153名を対象に,横断的な資料に基づいて,各種危険因子の保有率およびメタボリックシンドローム (MetS) の有所見率,勤務状況および生活様式の特徴を年齢階層別に比較検討した.結果: 虚血性心疾患を発症した症例群では,対照群に比べて発症5年前での高血圧,耐糖能障害,高LDL-C血症,高尿酸血症の保有率が有意に高かった.多重ロジスティック回帰分析では高血圧(オッズ比 [95%信頼区間]:3.96 [1.82–8.59]),耐糖能異常 (3.28 [1.34–8.03]),低HDL-C血症 (2.26 [1.03–4.97]),高LDL-C血症 (2.18 [1.03–4.61]) が有意な独立の危険因子となった(モデルχ2:p<0.001,判別的中率:77.0%).また,警察官は一般職員に比べて腹部肥満者 (腹囲85 cm以上)の割合が有意に高く(57.3% vs. 35.3%, p<0.001),年齢階層の上昇に伴う脂質異常症や耐糖能障害の有所見率の増加もより顕著であった.45–59歳の年齢階層では個人における危険因子の集積数(1.8個 vs. 1.4個, p<0.01)が有意に高く,MetS該当者の割合も高率であった(25.0% vs. 15.5%, p<0.1).さらに,MetS該当者では,交替制勤務者が多く (33.6% vs. 25.4%, p<0.01),熟睡感の不足を訴える者 (42.5% vs. 33.7%, p<0.01),多量飲酒者 (12.8% vs. 6.3%, p<0.01)の割合が高くなっていた.結論:警察官においても高血圧,耐糖能障害,脂質異常症などの既知の危険因子が虚血性心疾患の発症と関連することが示された.また,警察官は加齢による各種危険因子の保有率およびMetS該当者の割合の増加が一般職員よりも顕著であり,その背景要因として,交替制勤務や長時間労働などの勤務形態と,飲酒や睡眠の状態などの生活様式の影響が示唆された.
著者
塩崎 万起 宮井 信行 森岡 郁晴 内海 みよ子 小池 廣昭 有田 幹雄 宮下 和久
出版者
Japan Society for Occupational Health
雑誌
産業衛生学雑誌 = Journal of occupational health (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.115-124, 2013-07-20
参考文献数
29
被引用文献数
6

<b>目的:</b>警察官は他の公務員と比べて心疾患による休業率が高く,在職死亡においても常に心疾患は死因の上位を占めることから重要な課題となっている.本研究では,A県の男性警察官を対象に,近年増加傾向にある虚血性心疾患に焦点をあて,各種危険因子の保有状況とその背景要因としての勤務状況や生活様式の特徴を明らかにすることを目的として検討を行った.<b>対象と方法:</b> 症例対照研究により,虚血性心疾患の発症に関連する危険因子について検討した.対象はA県警察の男性警察官で,1996–2011年に新規に虚血性心疾患を発症した58名を症例群,脳・心血管疾患の既往がない者の中から年齢と階級をマッチさせて抽出した116名を対照群とした.虚血性心疾患の発症5年前の健診データを用いて,肥満,高血圧,脂質異常症,耐糖能障害,高尿酸血症,喫煙の有無を両群で比較するとともに,多重ロジスティック回帰分析を用いて調整オッズ比を算出した.続いて,男性警察官1,539名と一般職員153名を対象に,横断的な資料に基づいて,各種危険因子の保有率およびメタボリックシンドローム (MetS) の有所見率,勤務状況および生活様式の特徴を年齢階層別に比較検討した.<b>結果: </b>虚血性心疾患を発症した症例群では,対照群に比べて発症5年前での高血圧,耐糖能障害,高LDL-C血症,高尿酸血症の保有率が有意に高かった.多重ロジスティック回帰分析では高血圧(オッズ比 [95%信頼区間]:3.96 [1.82–8.59]),耐糖能異常 (3.28 [1.34–8.03]),低HDL-C血症 (2.26 [1.03–4.97]),高LDL-C血症 (2.18 [1.03–4.61]) が有意な独立の危険因子となった(モデルχ<sup>2</sup>:<i>p<</i>0.001,判別的中率:77.0%).また,警察官は一般職員に比べて腹部肥満者 (腹囲85 cm以上)の割合が有意に高く(57.3% vs. 35.3%, <i>p<</i>0.001),年齢階層の上昇に伴う脂質異常症や耐糖能障害の有所見率の増加もより顕著であった.45–59歳の年齢階層では個人における危険因子の集積数(1.8個 vs. 1.4個, <i>p<</i>0.01)が有意に高く,MetS該当者の割合も高率であった(25.0% vs. 15.5%, <i>p<</i>0.1).さらに,MetS該当者では,交替制勤務者が多く (33.6% vs. 25.4%, <i>p<</i>0.01),熟睡感の不足を訴える者 (42.5% vs. 33.7%, <i>p</i><0.01),多量飲酒者 (12.8% vs. 6.3%, <i>p</i><0.01)の割合が高くなっていた.<b>結論:</b>警察官においても高血圧,耐糖能障害,脂質異常症などの既知の危険因子が虚血性心疾患の発症と関連することが示された.また,警察官は加齢による各種危険因子の保有率およびMetS該当者の割合の増加が一般職員よりも顕著であり,その背景要因として,交替制勤務や長時間労働などの勤務形態と,飲酒や睡眠の状態などの生活様式の影響が示唆された.
著者
前田 美季 中村 千種 内垣 亜希子 弓庭 喜美子 内海 みよ子 志波 充 三家 登喜夫 宮井 信行 有田 幹雄
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.158-162, 2011 (Released:2011-07-15)
参考文献数
17
被引用文献数
2 2

目的:加齢とともに高血圧の罹患率は増加するが,閉経との関連は明らかではない.女性の加齢及び閉経による血管系に及ぼす影響を明らかにするため,年齢により分類し比較検討した.方法:151名の中高年女性を性成熟期群,移行期群,閉経期群に分類し,身体計測,血圧測定,血液生化学検査,上腕・足首脈波速度(brachial-ankle pulse wave velocity:baPWV),血圧脈波検査(Augmentation Index:AI),内皮依存性血管拡張反応(flow-mediated vasodilation;%FMD),心エコー図検査を実施し,3群間の心・血管系に及ぼす影響を比較した.結果:収縮期血圧は性成熟期群に比し閉経期群,移行期群が有意に高値を示し,移行期群と閉経期群間にも有意差がみられた.baPWVは,性成熟期群に比し閉経期群で有意に高値を示し,移行期群と閉経期群間にも有意差がみられた.AIは性成熟期群に比し閉経期群,移行期群が有意に高値を示した.%FMDは性成熟期群,移行期群に比し閉経期群が有意に低値を示し,血清クレアチニン,推算糸球体濾過値(eGFR),高感度CRPは有意に高値を示した.E/Aは性成熟期群に比し閉経期群,移行期群が有意に低値を示し,移行期群と閉経期群間にも有意差がみられた(いずれもp<0.05).結論:加齢および閉経により血圧の上昇,動脈硬化の進行,血管内皮機能の低下などが認められた.女性の健康管理や心血管イベント防止のためには,年齢に応じたエストロゲンの作用による心血管系の変化を理解することが重要であることが示唆された.
著者
内川 友起子 中村 千種 宮井 信行 伊藤 克之 石井 敦子 内海 みよ子 有田 幹雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.799-804, 2012 (Released:2013-12-26)
参考文献数
17

メタボリックシンドローム(metabolic syndrome; MetS) によって引き起こされる動脈硬化のリスクを軽減するには,身体活動を含めた生活習慣を是正することが基本となる. MetSにおける砂浜でのウォーキングがMetSの危険因子に及ぼす影響については十分な検討はなされていない. 本研究では砂浜でのウォーキングがMetSの心血管危険因子に及ぼす影響を検討した. 重篤な心血管病のない44名の住民を対象とした. 無作為クロスオーバー法を用い,A群: 運動介入—観察期間—非運動介入(n=22) とB群: 非運動介入—観察期間—運動介入(n=22) に分類した. 運動介入時は,1日1万歩の砂浜での歩行運動を行い,非運動介入時は,積極的な運動を行わないようにした. 介入·観察期間はそれぞれ8週間とし,介入前後に,身体計測,血圧,augmentation index(AI) ,血液検査などを計4回実施した. 運動介入時(n=44) の平均歩行数は9,692±1,592歩で,非運動介入時(n=41) の平均歩行数は6,386±1,633歩であった. 運動介入時群に,体重,腹囲,BMIが有意に改善した. 血圧は有意でないものの改善傾向であり,radial(r) AIは有意に減少した. 中性脂肪は有意に低下,インスリン,空腹時血糖は低下傾向であり,特にHbA1cで有意に低下した. 一方,非運動介入時は,いずれも有意差を認めなかった. 以上より,身体活動は内臓脂肪の減少とインスリン抵抗性を改善させるとともに動脈スティフネスの改善を示したことより,1日1万歩程度の砂浜での歩行は,MetS改善に寄与する有効な手段であることが示唆された.