- 著者
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鈴木 元彦
中村 善久
- 出版者
- 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
- 雑誌
- 耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.3, pp.243-250, 2012 (Released:2012-10-12)
- 参考文献数
- 29
アレルギー性鼻炎は我が国の20%以上が罹患しており,日常診療において重要な疾患の一つである。しかし臨床上有効な根本的治療がなく,新しい治療法の開発が期待されている。RNA干渉(RNAi)は二本鎖RNA(double-stranded RNA,dsRNA)やmicro RNA(マイクロRNA,miRNA)に代表されるRNAによって相補的な塩基配列をもつmRNAからの翻訳が阻害される現象であるが,RNA干渉によって特定の遺伝子発現を抑制することが可能となる。また二本鎖RNAによるRNA干渉の発見後,長い二本鎖RNAによるRNA干渉が用いられてきたが,近年siRNA(small interfering RNA,short interfering RNA)という21-23塩基対の短い合成二本鎖RNAによってもRNA干渉が可能なことがわかってきた。siRNAは特定のmRNAにのみ生物活性を発揮し,特異的に遺伝子発現を抑制する。つまりsiRNAは選択性が高く,医薬品としての開発が期待されている。siRNAを用いて様々な標的分子を選択し,抑制することができるが,医療品として効率よく疾患を治療するためには重要な標的分子を選ぶことが肝要である。本稿では,アレルギー性鼻炎に対する新たな治療戦略としてRNA干渉を用いた治療法について概説する。