- 著者
-
横田 誠
- 雑誌
- 全国大会講演論文集
- 巻号頁・発行日
- vol.49, pp.303-304, 1994-09-20
伝送工学における「線路」と「回路」の概念を,より一般化した,「伝子工学」の立場から,情報的感性対応システムを考えている。今回は,その感性を引き起こす対象を言語空間として考える。言語系には,音素列系と絵画パタン列系の二つがある。今回の言語系は,和歌的系としたので,音素列系と絵画パタン系との組み合わせ系ということになる。和歌的系の特徴として,第一に2音列と3音列の組み合わせ系ということと,第二に絵画的パタン素列系(平仮名に置き換えてあっても)でもあることである。このようなリズミックな動的な形式の上に,情況を表現(表情)する。絵画系が写真的なものより,大胆なデフォルメ,あるいは省略等の描写によるものの方が,共感空間として,適切で,生きたものとすることが出来る。文章にも,法律系や経済交渉系では,数理系のように論理的に厳正でなければならないものと,詩歌のように適切な省略系のものがある。この辺の事情は絵画系に近い。航空写真的絵より,変形省略をした見取り図の方が,案内図としての目的にはより適切である。人物の表情とか,場面状況の表現等において,現物とは異る変形をしたり,大胆な省略したり,故意に不完全な描写等をした方が,作者の意図と観賞者の感受の通信には,むしろ,いわゆる絵画的目的には適切である。更に絵画系を引合にすれば,額縁ワクと云う,ワクの範囲内に表現することが殆どである。これは今回の和歌的(或は俳句的)系が,トータルの語音数のワク内で表現するのと同様である。額縁ワクが黄金比にだとか,画面構図が射影幾何的にだとか,部分要素の輪郭線系が視覚生理・心理に基づく興奮・抑制の機能システムによるものだとか,という条件づけが,今回の問題の基底である。これ等の意味で,いわゆる五・七調を,二・三調を基底に考えて行くのが,今回の立場である。それは又,時系列,空間配列における動的パタンとしてのリズムの問題にもつながり,これが又,他者との共感,共鳴の機能の問題につながる基礎系と考える。それは人間同志が言語的に心情・意思を通じあうように,人間と人間に近似した感性対応のシステムとの間に,近似的共感,共鳴が通じあうようにする為の準備的系と考える。