著者
松本 太 中村 圭三
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.215-229, 2017-05-01 (Released:2022-03-02)
参考文献数
20

ネパール南部における住宅の温熱環境の季節的な特徴を明らかにすることを目的として,屋根素材が異なる3住宅で気象観測を行なった.その結果,以下の知見を得た.①非モンスーン季には,日の出以降気温が急激に上昇し,モンスーン季よりも日較差が大きい.晴天日の日中においては,屋根素材のタイプによって屋根面温度の違いが明確に現れた.室温は,日中にはトタン屋根,夜間にはコンクリート屋根の住宅で最も高い.以上の結果から,室温形成に屋根素材の熱的性質が関与していることが検証された.②モンスーン季では,降水や高湿度の影響により,気温の日較差が小さい.日中においては,保水による昇温抑制効果が強いカワラ屋根と保水不可能なトタン屋根との温度差を反映し,室温は,トタン屋根の住宅で最も高く,カワラ屋根の住宅で最も低くなったと考察された.以上のことから,降水が室温に対し強く影響を及ぼしていることが明らかになった.
著者
中村 圭三 三谷 雅肆
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.855-864, 2011-10-31
被引用文献数
1

直達日射量の観測を要することなく,より観測地点が多く,入手も容易な水平面全天日射量データから,大気透過率や混濁係数などの評価を試みた.そのなかで,東京,およびその周辺6地点における過去20年間の正午を含む1時間水平面全天日射量データから,大気成分による吸収を無視したKondratyevの式を適用して,関東地方における大気の混濁係数の推移を求めた.1990年代前半には,ピナトゥボ山噴火による高い混濁係数が認められたが,その影響がほぼ消滅した同年代中期以降も混濁係数は漸次低下を続け,全体として,ここで取り上げた1989年以降,各地の混濁係数は漸減する傾向にあった.日射の季節的,地域的特性も確認され,適用する地域を100km程度に限定すれば,ここで採用された全天日射量から大気混濁度,および大気混濁係数を評価する方法が有効であると確認された.