著者
垣花 学 井関 俊 中村 清哉 渕上 竜也 神里 興太 須加原 一博
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.386-391, 2013 (Released:2013-07-13)
参考文献数
19

胸腹部大動脈手術中に硬膜外モルヒネを投与された症例で,ナロキソンの静脈投与により対麻痺症状が著明に改善された.この症例を機に,ラット脊髄虚血モデルを用いて一過性脊髄虚血後のくも膜下モルヒネ投与による脊髄運動神経障害に関する研究を行った.その結果,くも膜下モルヒネには虚血性脊髄障害を増悪させる作用があることが示唆された.これまでの臨床経験およびわれわれの研究結果から,「麻薬は虚血性脊髄障害を増悪させる」可能性が高いと思われる.
著者
安部 真教 中村 清哉 比嘉 達也 大久保 潤一 垣花 学
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.14-0035, (Released:2015-09-25)
参考文献数
11

今回,有痛性糖尿病性神経障害の下肢痛に対してプレガバリンの漸増中に低血糖の頻度が増加し,インスリン投与量の調節に難渋した症例を経験した.症例は50歳,女性.有痛性糖尿病性神経障害で両下肢痛としびれがあった.プレガバリン50 mg/日の眠前内服を開始し,75 mg/日に増量後に眠気・ふらつきが出現したため,内服量を50 mg/日と75 mg/日の交互に変更した.鎮痛効果は高かったが,低血糖の頻度が増加したため内科へ入院となった.入院期間27日中の低血糖は11回,そのうち朝に9回発生した.インスリン投与量は,持効型が入院期間中に22単位から18単位に,超速効型が毎食後7単位から5単位に減量された.糖尿病性神経障害の治療は,高血糖を予防し,厳重に血糖管理を行うことが重要である.痛みの治療経過中に低血糖の頻度が増加し,血糖管理に難渋した.インスリン過量,インスリン感受性の改善が低血糖の原因として考えられた.
著者
横山 由衣 玉那覇 亜紀子 島袋 雄樹 中村 清哉 又吉 達
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.H2-178_1-H2-178_1, 2019

<p>【症例紹介】複合性局所疼痛症候群(以下、CRPS)に関する治療は様々な報告がされているが、有効な治療方法は確立されていない。今回、外傷後に生じたCRPSにより慢性的な上肢痛と日常生活に支障をきたす症例を経験した。本症例は更衣動作を1人でできるようになりたいという目標があった。疼痛は自発痛だけでなく運動イメージ時にも出現した為、機能的側面だけでなく認知的側面に着目し、段階的な課題設定を行い、理学療法を展開した結果、疼痛軽減、疼痛頻度の軽減がみられた。本症例について考察を交え報告する。</p><p>30歳代、女性、Ⅹ-1ヶ月交通事故で受傷し、事故直後は右上下肢に疼痛・痺れが出現し、上肢の自動運動が困難であった。徐々に下肢症状は改善するも上肢の激痛は持続し、X年にCRPSと診断された。他院でリハビリテーションを行っていたが疼痛増強のためX+2年一時リハビリテーション中断された。X+3年に当院ペインクリニック外来を受診し、外来リハビリテーションで理学療法を開始した。現在まで、腕神経叢ブロック注射後に理学療法を1~2週間に1回実施している。</p><p>【評価とリーズニング】X+3年、視診では皮膚・爪に萎縮性変化及び皮膚色変化、浮腫・皮膚乾燥の症状を認めた。疼痛は右頸部から肩甲骨周囲にかけて灼けるような痛み、上肢にかけて電気が走るような痛みがあった。頸部・上肢・手指の運動イメージだけでも疼痛・不随意運動があった。NRS3~10/10点と変動的であった。Short-Form McGill Pain Questionnaire-2(以下、SF-MPQ-2)87/220点で特に間欠的で32点、神経的で29点であった。Neuropathic pain symptom inventory(以下、NPSI)では44/100点となり、誘発痛10/10点、異常感覚・知覚障害7/10点であった。患側上肢の自動運動は不可であった。SF-8™スタンダード版により30/42点であった。これらの評価よりADL・IADLでは介助を要す状態であり、目標である更衣動作では患側上肢の袖通しが一番の課題となった。</p><p>【介入内容および結果】X+3年、機能的側面アプローチとしてROMex実施した。手指を中心に患側上肢を他動的に動かし、運動方向をイメージしてもらいながら健側上肢で同様の動きを模倣・注視するよう促した。患側上肢のイメージのみでも疼痛増悪、不随意運動が出現した為、認知的側面へのアプローチも必要と考えられた。X+3年5ヶ月から運動イメージ時の疼痛改善を目的にメンタルローテーションを実施した。段階付けとして文字や図形から開始し、手の写真を用いた。解答時間の短縮、正答率に合わせて徐々に角度を増やし、手指・手関節から肘関節、肩関節を含めた複合的な画像へと難易度を設定した。これを健側から患側へと難易度の設定を行った。次に上肢帯の複合的な動作や頸部の各運動方向を多角的に撮影した動画を用いて3人称の運動イメージの強化を図った。徐々に運動イメージ時の疼痛が自制内となった為、次の段階として自己身体(1人称)においても同様のイメージが出来るよう促した。上肢帯の運動イメージでは疼痛が消失したが頚部のイメージは疼痛増強を認め、介入継続が困難であった。X+4年の生活状況は患側上肢の自動運動はみられないものの、コンタクトレンズを入れる、靴下を履くことが可能となっていた。X+5年1ヶ月からmirror therapyを開始した。観察から他動運動・触刺激(体性感覚)、自動運動と難易度を設定し実施した。患側上肢のイメージ、疼痛軽減が図れた為、現在は目標である更衣動作を意識し、触刺激(袖通しの感覚と探索課題)を中心に理学療法を行なっている。認知的側面に対し、段階的な理学療法を施行することで疼痛軽減、疼痛頻度の軽減に繋がったと考える。高取<sup>1)</sup>らは、身体図式の再構築が良好な運動イメージ形成に貢献し、安静時VAS値の低下を示したと述べている。本症例においても良好な運動イメージ形成により疼痛軽減に繋がったことが示唆された。X+6年の生活状況は更衣動作における変化点は少ないが友人との外出頻度が増えるなど生活範囲が拡大している。</p><p>【結論】CRPSによる慢性疼痛に対して認知的側面に着目し、段階的な課題設定を行い、理学療法を施行した。これらが疼痛軽減、疼痛頻度の減少に繋がったと考える。CRPSに対する理学療法は確立されたものがなく、様々な疼痛発生機序を念頭に置きながら過去の事例報告を踏まえ効果検証を積み重ねていくことが重要であると考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、当院倫理委員会にて承認を得た。患者にはヘルシンキ宣言に基づいて文書と口頭にて目的、方法、個人情報保護、不利益等について説明し同意を得て実施した。</p><p>文献<sup>1)</sup>高取克彦、他:脳卒中後CRPS type1に対する運動イメージプログラム(MIP)の試み―1事例研究デザインによる予備的研究―</p>
著者
安部 真教 中村 清哉 比嘉 達也 大久保 潤一 垣花 学
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.533-536, 2015 (Released:2015-11-07)
参考文献数
11

今回,有痛性糖尿病性神経障害の下肢痛に対してプレガバリンの漸増中に低血糖の頻度が増加し,インスリン投与量の調節に難渋した症例を経験した.症例は50歳,女性.有痛性糖尿病性神経障害で両下肢痛としびれがあった.プレガバリン50 mg/日の眠前内服を開始し,75 mg/日に増量後に眠気・ふらつきが出現したため,内服量を50 mg/日と75 mg/日の交互に変更した.鎮痛効果は高かったが,低血糖の頻度が増加したため内科へ入院となった.入院期間27日中の低血糖は11回,そのうち朝に9回発生した.インスリン投与量は,持効型が入院期間中に22単位から18単位に,超速効型が毎食後7単位から5単位に減量された.糖尿病性神経障害の治療は,高血糖を予防し,厳重に血糖管理を行うことが重要である.痛みの治療経過中に低血糖の頻度が増加し,血糖管理に難渋した.インスリン過量,インスリン感受性の改善が低血糖の原因として考えられた.