- 著者
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田中 紗和子
中村 美緒
- 出版者
- 日本福祉大学大学院
- 雑誌
- 日本福祉大学大学院福祉社会開発研究 = The Study of Social Well-Being and Development, Nihon Fukushi University Graduate schools (ISSN:24362018)
- 巻号頁・発行日
- no.17, pp.51-59, 2022-03-01
本論文の目的は,地域における支え合いの基礎となる「人々の関係」に着目し,地域における作業療法での作業の特徴と役割を明らかにすることである.方法は,日本の作業療法創設期から刊行されている 3 誌を対象とした文献調査である.分析では,実施場所ごとの作業療法実践の比較から,近年の作業療法の動向を把握した上で,作業を介した人々の関係,意識と行動,関係や場の経時的変化といった視点から実践事例を捉え直し,地域における作業療法での作業の特徴と役割を明らかにした.その結果,日本では,高齢化社会を目前に控え,2000 年代以降,病院・施設から地域生活へと支援の中心が移行しており,それに応じて,作業療法の対象や領域,手段も多様化し,実践の場も病院・施設から地域へと拡大していることが示唆された.地域における作業療法では,障害の有無や立場に関係なく参加者が共に作業を展開する場づくりが多く行われていた.作業は,共通の話題や共感の対象となることで,自然な交流を促すという特徴を生かし,人々の関係や,意識と行動に変化をもたらす役割を果たしていた.また,作業を介して時間と場所を共有することの積み重ねは,支え合う関係や心の拠り所となるような場の変化を生みだしていた.地域における作業療法では,人々の関係に目を向けることの重要性が示された.