著者
中根 成寿
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.63-72, 2017

<p>障害者家族のいわゆる親なき後問題の解消には,支援制度の充実が必要という社会的合意があり,障害者福祉制度の予算は拡大してきた.しかし,障害者福祉制度の予算拡大とサービス利用者数の増加が障害者家族の親子関係にどのような影響を与えたのかについては,十分な考察がなされていない.よって本稿では,障害者福祉制度の予算拡大を確認した上で,障害者総合支援法のサービスごとの利用者数の変遷を紹介する.そこから平日日中の通所系サービスの利用と夜間週末の親による無償介護の組み合わせによる「通所施設中心生活」が,成人した障害者本人の平均的生活様式であることが明らかになった.つまり,親が子の生活に関する主導権を保持したままの日常が継続し,ケアをめぐる社会と家族の分担が不明瞭なまま,親なき後問題の解消が先送りされている.</p>