著者
中根 真
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.18-27, 2016 (Released:2017-03-22)
参考文献数
62

本稿の目的は,昼間保育事業の先駆者・生江孝之の神戸市職員時代に焦点をあてて再評価することである。まず,神戸市婦人奉公会発足の経緯,児童保管所の運営について要約し,生江は当初,保育事業のために神戸市に採用されたのではなく,救済事業の企画・立案者として採用されたことを明らかにしている。加えて,生江の保育事業構想は,市長と生江の採用交渉を行った留岡幸助によって鼓舞されたことを明らかにしている。すなわち,非行予防は彼の保育事業の主要目的であった。本稿は,今日的にも非行予防が保育事業の役割の 1 つとして認識できると結論づけている。
著者
秋葉 昌樹 中根 真 熊谷 保宏
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、補助金を得た2年間、次に掲げる研究目的により進めてきた。すなわちその目的は、演劇的手法及びエスノメソドロジー分析に基づき、教育・社会福祉領域における反省的実践家をコミュニケーション能力の観点力ら支援するための教育研修の方法論およびネットワーク実践の具体的なモデルを提示することにあった。今日、子ども、福祉援助対象者を取り巻く急激な社会的変化に伴い、教職及び福祉専門職の役割とあり方が問われるようになってきており、教職・福祉専門職のモデルとして反省的実践家モデルが注目されはじめている。しかし、反省的実践は、コミュニケーションプロセスに埋め込まれているがゆえに、その構造・機能・意味については、日常的実践のなかで実践家が「見て知っているが気づかないseen but unnoticed」(H.Garfinkel)ことも少なくないと考えられる。上述の観点から、本研究では、教育社会学(秋葉)、社会福祉学(中根)、応用演劇学/演劇教育学(熊谷)の専門家による学際的共同研究を軸に、実践家自らが日頃のコミュニケーションプロセスを演劇的手法を通じて再体験・再創造し,反省的実践の構造・機能・意味について方法論的アプローチする研修方法を開発するとともにその研修ネットワークを構築することを狙いとしてきた。本研究を進めるにあたっては、全体のコーディネートを秋葉が担当しつつも、具体的には、以下の体制で進められた。教育実践家を対象とする演劇ワークショップ(研修ネットワーク)については秋葉および熊谷が担当し、社会福祉実務家を対象とする研修については中根が担当した。熊谷はまた、演劇ワークショップの枠組を考案するとともに、様々なウェブベースのコミュニケーションツールの試行および開発にあたった。