著者
中橋 毅
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.491-498, 2017-10-25 (Released:2017-12-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

地域医療は,人々がいつまでも安心して暮らし続けることができる地域社会を支える重要な要素の一つである.しかも,世界で最も高齢化が進んでいる我が国において老年医学が担う役割は大きい.日本の超高齢社会の未来像ともいえる石川県穴水町の現状をもとに,様々な問題とそれらへの取り組みについて考えてみたい.地域医療構想によって病床数削減が進む過程において,在宅医療や地域包括ケアシステムの重要性が高まっている.その一方で,在宅医療は救急医療と密接に連携する必要があり,救急医療体制の再構築も求められている.また,地域包括ケアシステムが掲げる医療・介護・生活支援の一体化が推し進められる一方で,訪問看護師不足や在宅における医療安全対策,在宅・施設看取りにおける在宅トリアージなど,課題も多く残されている.さらに,高齢者の貧困に起因するセルフネグレクトの問題も目を背けるわけにいかず,高齢者の権利の保護と意思決定支援の重要性が増していくものと思われる.2025年問題を目前に控え,急務となる多くの課題について考察した.
著者
荻原 俊男 森本 茂人 中橋 毅 島本 和明 松本 正幸 大内 尉義 松岡 博昭 日和田 邦男 藤島 正敏
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.396-403, 1994-05-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
24
被引用文献数
9 8

本邦における高血圧専門家が老年者高血圧の治療方針に関していかなる考え方をしているかについてアンケート法によりその実態を把握することを目的とした. 治療対象について50%の専門家は年齢の上限を考慮しないとしたが, 残り50%は80歳まで, あるいは85歳までを上限としている. 治療対象血圧値は収縮期血圧は60歳代160mmHg以上, 70歳代160~170mmHg以上, 80歳代では170~180mmHgと高齢者程治療対象血圧は上昇, 拡張期血圧は90~95mmHg以上とするものが大部分を占めた. 降圧目標は60歳代では150/90mmHg未満, 70~80歳代では160/90mmHg未満とするものが多く, 80歳代では170~180/95~100mmHg未満と高めに設定するものが20数%あった. 用いる降圧薬ではCa拮抗薬を第一次薬とするものが大部分でありACE阻害薬がこれに次いだ. 一方, サイアザイド, β遮断薬, α1遮断薬を第一次薬とするものは少数であった. 合併症を有する場合の降圧目標や選択降圧薬は疾患によりきめ細かく考慮され, 脳梗塞慢性期, 閉塞性動脈硬化症, 腎障害合併症は70歳代, 80歳代で154~159/89~90, 160~164/90~91mmHgとやや高め, 脳出血慢性期, 虚血性心疾患, 糖尿病, 高脂血症では各々152~153/88, 158~159/89mmHgとやや低めに設定している. Ca拮抗薬はいずれの合併症にもよく用いられ, とくに腎障害, 閉塞性動脈硬化症で高頻度に用いられる. 腎障害ではACE阻害薬が用いられる頻度が低い. β遮断薬は虚血性心疾患で用いられる以外は一般的に用いられない. サイアイド, α1遮断薬は一般的に合併症のある場合にあまり用いられていない. 本邦においても長期介入試験によりこれらを正当化する証明が待たれる.