- 著者
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中江 訓
- 出版者
- 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
- 雑誌
- 地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
- 巻号頁・発行日
- vol.72, no.3, pp.173-190, 2021-06-29 (Released:2021-07-01)
- 参考文献数
- 53
- 被引用文献数
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岩手県久慈地域に位置する北部北上帯ジュラ系付加複合体に挟有される玄武岩・ドレライト(苦鉄質岩)について,その起源・由来を解明する目的で,螢光X線分析(XRF)による主要成分元素組成と誘導結合プラズマ質量分析(ICP–MS)による微量元素組成を求めた.北部北上帯は,それぞれを構成する海洋性岩石類に明瞭な時代差がある安家–田野畑亜帯と葛巻–釜石亜帯に二分され,さらに両亜帯とも付加時期が系統的に異なる複数の下位階層の層序単元から構成されている.久慈地域において対象とした苦鉄質岩は沢山川層と合戦場層に分布するが,前者は安家–田野畑亜帯に,後者は葛巻–釜石亜帯に属す.分析の結果,沢山川層苦鉄質岩は比較的未分化な玄武岩質マグマを起源としたことが示唆され,大半の試料は各種の判別図などから海洋プレート内で活動した海洋島アルカリ玄武岩に類似する.合戦場層玄武岩は,沢山川層苦鉄質岩より分化が進行した玄武岩質マグマを起源とし,一部の判別図で中央海嶺玄武岩ないし島弧玄武岩領域に表示されるものの,海洋プレート内の海洋島玄武岩に由来することが明らかとなった.また両層の苦鉄質岩は,不適合元素と軽希土類元素が濃集し,N-type MORBとコンドライトの規格化図における海洋島玄武岩の分布様式に酷似する特徴を示す.