著者
大野 治美 村上 晴香 中潟 崇 谷澤 薫平 小西 可奈 宮地 元彦
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.92-104, 2021-02-15 (Released:2021-02-26)
参考文献数
26

目的 ふん便(以下,便)は,我々の食事や栄養状態ならびに腸内細菌叢の特徴を反映し,身体の健康状態や栄養摂取状況を,簡便かつ非侵襲的に評価できるツールであると考えられる。一方で,便を包括的に評価し,簡便かつ客観的に評価する適切なツールに関する検討は十分に行われておらず,日常の排便状況や便性状を的確に把握できる有用な質問票が求められている。習慣的な排便状況(排便回数)や便性状(排便量,色,形状など)を把握するための評価ツールを作成し,排便日誌に基づく排便回数や便性状の記録と比較し内的妥当性を検討した。方法 22から78歳までの成人男女35人(45.2±17.1歳)を解析対象とした。習慣的な便に関する質問票(以下,習慣的便質問票)による最近1か月間における平均的な排便回数,1回あたりの排便量,便の色や形状,便の浮きや腹部膨満感を調査した。この習慣的便質問票の各項目の再現性を検討するため,2回の調査を実施し,再現性を確認した。その後,排便日誌を用いて,毎日の排便時刻や便の性状などを1週間記録した。この排便日誌を基にした排便回数や便性状を内的妥当基準とし,習慣的便質問票により得られた回答を比較した。なお,習慣的便質問票における排便回数は,排便回数がカテゴリー化された回答を選択する選択回答法と数値による自由回答法の2種類で回答した。結果 習慣的便質問票の再現性を検討した結果,全ての項目においてスピアマン順位相関係数の有意な相関(ρ=0.431~0.911)が認められ,重みづけκ係数においても高い一致度を示した(weighted κ=0.348~0.841)。また,内的妥当性については,排便日誌による1週間あたりの排便回数と,習慣的便質問票における排便回数の回答を比較すると,自由回答法による1週間あたりの排便回数の方が,選択回答法より高い相関(ρ=0.855)を示した。さらに,便性状については,1週間の排便日誌における便性状の回答の中央値と習慣的便質問票での回答との相関を検討したところ,「便の浮き」を除いて有意な相関が示された(ρ=0.429~0.800)。結論 本研究で作成した質問票は,習慣的な排便状況や便性状を評価する上で,再現性と内的妥当性が高いことが確認された。
著者
吉田 司 渡邉 大輝 中潟 崇 山田 陽介 黒谷 佳代 澤田 奈緒美 田中 健司 岡林 恵 島田 秀和 瀧本 秀美 西 信雄 宮地 元彦 阿部 圭一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.20-111, (Released:2021-05-14)
参考文献数
34

目的 本研究は,大阪府北部の摂津市および南部の阪南市における40歳以上の中高齢者のフレイル該当割合と2市で共通してフレイルと関連する要因を明らかにすることを目的とした。方法 2018年度に摂津市,2019年度に阪南市において無記名式郵送調査を行った。対象者は,小学校区ごとの40歳以上の性・年齢階級別の人口構成に応じて各小学校区から1,000人ずつ無作為に抽出した(摂津市10小学校区,阪南市8小学校区)。分析対象者は摂津市が5,134人,阪南市が3,939人であった。フレイル評価は,基本チェックリスト(KCL)および簡易フレイル指標(SFI)を用いた。フレイルを目的変数とし,年齢,性,BMI,家族構成,主観的健康感,経済状況,主観的体力,睡眠,喫煙,飲酒,食事回数,用語「フレイル」認知度を説明変数として多変量ロジスティック回帰分析を適用した。すべての分析は,摂津市と阪南市に分けて行った。結果 対象者の平均年齢と標準偏差は,摂津市が62.7±12.5歳および阪南市が63.4±12.2歳であった。KCLによるフレイル該当割合は,摂津市と阪南市でそれぞれ40歳代が18.7%と17.9%,50歳代が18.2%と14.6%,60歳代が17.0%と15.7%,70歳代が25.4%と20.8%,80歳以上が39.7%と36.1%であった。SFIによるフレイル該当割合は,摂津市と阪南市でそれぞれ40歳代が16.2%と13.5%,50歳代が15.0%と11.9%,60歳代が12.5%と10.0%,70歳代が14.6%と12.3%,80歳以上が24.7%と22.3%であった。摂津市および阪南市で共通し,かつKCLとSFIで共通してフレイルと関連した要因は,高年齢,主観的健康感の低さ,経済状況の不良,主観的体力の低さ,睡眠が不十分,およびフレイル認知度の低さであった。結論 大阪府の2市における調査により,40歳代や50歳代であっても一定数のフレイル該当者がいることが明らかになり,より早期の働く世代からのフレイル予防の取り組みが必要であることが示唆された。また,フレイルと関連する6つの要因が抽出されたが,因果関係や公衆衛生的意義について縦断研究や介入研究による検討が求められる。