著者
黒田 藍 村山 洋史 黒谷 佳代 福田 吉治 桑原 恵介
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.284-296, 2022-04-15 (Released:2022-04-26)
参考文献数
35

目的 孤立や孤独を防ぎ,かつ食事を確保する方策として食支援活動が行われてきたが,その実践に関する学術的知見は乏しい。本稿では,住民がボランティアで食支援活動を行う地域食堂のコロナ下での活動プロセスを記述し,地域食堂の活動継続が利用者や住民ボランティアにもたらした効果について予備的に検証することを目的とした。方法 本研究は東京都内の独居高齢者が多く居住する大規模団地にて,飲食店と同水準の食品衛生管理体制のもと運営されている地域食堂「たてキッチン“さくら”」で筆頭著者が実施するアクションリサーチの一部である。2020年2月から同年5月までの地域食堂の活動を報告対象とした。活動プロセスは運営の活動記録,運営メンバーと住民との対話記録,活動時の画像記録を用いて記述した。地域食堂の利用住民10人と住民ボランティア6人との対話記録をKJ法に基づき分類し,彼らが認識する地域食堂の活動継続がもたらした効果を評価した。活動内容 対象期間中に地域食堂の役員や住民ボランティアは定期的に会議等を行い,市民向け新型コロナウイルス感染症対策ガイドや保健医療専門職の助言,利用者の意見等を参考にしながら,運営形態の検討と修正を続けた。結果として,地域食堂は高齢住民ボランティアが中心となって住民の食と健康を守るために週5日の営業を継続した。店頭の販売個数は形態変更に伴い5月に半減した一方(2020年2月4,670個,同5月2,149個),各戸への配食数は需要の増加に伴い3月以降増加した(2020年2月301個,同5月492個)。事後評価の結果,地域食堂の新型コロナウイルス感染症対策は外食業の事業継続のためのガイドラインを遵守していた。活動継続の効果として,地域食堂利用者では〈食の確保〉,〈人とのつながり〉,〈健康維持増進〉の3つのカテゴリー,住民ボランティアでは〈社会とのつながり〉,〈健康維持増進〉の2つのカテゴリーが抽出された。結論 住民ボランティアが,住民の食と健康を守るとの活動理念を確認しながら,新型コロナウイルス感染症の対策情報等を参照し,ステークホルダーを巻き込み,一般に求められる水準の感染症対策を取り入れて食支援活動を継続していた。この取組継続は,住民の食確保や健康支援に加え,住民同士のつながり維持に役立ったことが示唆された。
著者
東泉 裕子 水島 諒子 小板谷 典子 黒谷 佳代 西平 順 山本(前田) 万里 瀧本 秀美
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.368-382, 2022-05-15 (Released:2022-05-24)
参考文献数
56

目的 ストレス,メンタルヘルス,睡眠,疲労に関わる軽度な不調(軽度不調)は,それぞれが密接な関係にあるとともに,それらの悪化が生活習慣病等を惹起することが報告されている。客観的な健康指標との関係性が明らかな軽度不調を明らかにすることで,質問票による健康状態の予測が可能になると考えられる。とくに,日常的にストレスを感じる者の割合の高い日本人を対象とした疫学文献を用い,軽度不調に関する質問票と健康指標との関連についてシステマティックレビューを行い,軽度不調の尺度開発に必要な調査票の項目の検討を行うこととした。方法 軽度不調に関する先行研究のキーワードを基に「自律神経系」,「睡眠障害」,「精神およびストレス」,「疲労」についてPubMedを用いて研究論文を検索した。抽出された研究論文は,以下の包含基準(日本人健常者集団を対象に含んでいる,対象集団の特徴について記載がある,研究デザインが分析疫学研究,介入研究およびシステマティックレビューである,軽度不調を質問票で評価している,軽度不調と健康指標との関連を検証している,日本語または英語で書かれている)に沿ってスクリーニングし,10件を採択した。結果 採択論文10件中1件がコホート研究,3件が症例対照研究,6件が横断研究であり,研究対象者は成人期の労働者が5件と多かった。ストレスに関する質問票を用いた報告6件のうち3件で,睡眠に関する報告7件のうち4件で,包括的な健康状態に関する報告2件のうち2件で,それぞれの軽度不調と健康指標との間に統計学的に有意な関連が報告されていた。調査票による仕事に関連するストレス反応の増加は,健康指標の「うつ病発症リスク(オッズ比2.96(信頼区間:1.04-8.42))」の増加と関連していた。また,睡眠の質の低下は「自律神経指標の変化」,「併存疾患の数およびうつ病の比率」および「労働時の傷害のリスク」の増加と関連していた。加えて,健康度スコアは「自律神経指標」との関連が認められた。結論 これらの結果から,軽度不調の評価に必要な質問票には「ストレス」,「睡眠の質」,「包括的な健康状態」に関する質問が必要であることが示唆された。一方,バイアスリスクに適切に対処した研究が限られていることから,今後,コホート研究や介入研究において,本研究で整理した質問票と健康指標との関連について,前向きに検討する必要がある。
著者
黒谷 佳代 中出 麻紀子 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.77-88, 2018-08-01 (Released:2018-09-21)
参考文献数
38
被引用文献数
8

【目的】主食・主菜・副菜を組み合わせた食事と健康・栄養状態および食物・栄養素摂取との関連について国内の研究動向を把握した。【方法】2000~2017年に発表された論文を対象に,医学中央雑誌とNII学術情報ナビゲータ(CiNii)を用い「主食AND主菜AND副菜」で検索した。表題,抄録,本文を,本研究の以下の採択基準と照合・精査し,包含基準(日本人対象,分析疫学研究,曝露が主食・主菜・副菜を組み合わせた食事摂取,アウトカムが食物・栄養素摂取状況及び健康・栄養状態,対象集団の特徴明記)と除外基準(介入研究,ケースレポート,ケースシリーズ,エコロジカル研究)を満たす12件を採択した。【結果】採択論文はすべて横断研究で,研究対象者は成人期が最も多かった。主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の把握は,質問紙調査法によるものが過半数を占め,それらの質問項目は様々であった。食物・栄養素摂取との関連を検討した研究6件では,いずれも主食・主菜・副菜の揃った食事回数の多い人ほど,エネルギー,たんぱく質,各種ビタミン・ミネラルの摂取量が多く,日本人の食事摂取基準に合致していることが報告されていた。健康・栄養状態との関連を検討した8件の研究は,一貫した結果を示さなかった。【結論】主食・主菜・副菜を組み合わせた食事は必要な栄養素の十分な摂取に関連していることが示唆された。健康指標との関連については,縦断研究を含めたさらなる研究が必要である。
著者
東泉 裕子 金田 恭江 下村 千史 黒谷 佳代 西平 順 瀧本 秀美
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.229-237, 2022 (Released:2022-10-19)
参考文献数
27

日本食品標準成分表2010 (六訂) と日本食品標準成分表2015年版 (七訂) 追補2018年を用いて算出した栄養素等摂取量推定値とを比較し, 食品成分表改訂が栄養素等摂取量推定に与える影響を分析した。北海道在住の地域住民および東京都に勤務する者625名の食物摂取量について, 食事記録法により食事調査を行い, 栄養素等摂取量を算出した。炭水化物以外のすべての栄養素等で成分表の違いにより摂取量に有意な差が認められ, とくに分析方法が更新された総食物繊維摂取量への影響が大きく, 七訂値では六訂値より平均で3.0 g (23.2%) 高値であった。また, 日本人の食事摂取基準 (2020年版) を適用した場合の集団の総食物繊維摂取量の評価にも, 成分表の違いによる影響が認められた。以上より, 食事調査から食物繊維摂取状況を評価する際は, 計算に用いられた食品成分表の正式名称および分析方法を考慮した検討が必要であることが示唆された。
著者
黒谷 佳代 新杉 知沙 三好 美紀 瀧本 秀美
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.Supplement, pp.S50-S59, 2020-12-01 (Released:2021-02-16)
参考文献数
31

【目的】 食育の推進に関連する法律,政策および活動について整理すること。【方法】 食育基本法,食育推進基本計画,都道府県および市町村における食育推進計画について情報をとりまとめた。【結果】 食育基本法は,国民が生涯にわたって健全な心身を培い,豊かな人間性を育むことができるようにすることを目的として,2005年に制定された。食育基本法では,5か年計画の食育推進基本計画の作成及び実施による食育推進を図ることが規定されている。2005年から2015年は,内閣府が食育の推進を図るための基本的な施策に関する企画,立案,総合調整の事務を担い,2016年以降は農林水産省が担当している。毎年,食育推進基本計画の推進状況について評価が行われている。第3次食育推進基本計画(2016~2020年度)では,21の目標値が設定され,共食や中学校における学校給食の実施,食品中の食塩や脂肪の低減に取り組む食品企業,伝統的な料理や作法等の継承,食品の安全性に関する項目が2019年現在達成されている。また,都道府県食育推進計画はすべての都道府県で作成,実施がされているものの,市町村の計画は未だ100%に達していない。【結論】食育基本法制定後,約15年間で食育推進計画によりいくつかの課題が改善したものの,朝食欠食などの課題が依然として続いている。COVID-19の影響で,人々の生活環境は急速に,そして劇的に変化した。国民の明るい未来の創出のために,食育推進に関わるすべての人々が食・健康課題への対応に尽力することが必要だろう。
著者
中出 麻紀子 岩城 なつ美 中村 優花 黒谷 佳代
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.51-60, 2021-02-28 (Released:2021-03-10)
参考文献数
26
被引用文献数
1

目的:主食・主菜・副菜の揃った食事と生活習慣,知識・健康意識,健康状態との関連を明らかにする.方法:横断研究として,兵庫県の1大学の1~4年次学生を対象に2019年に自記式質問紙調査を実施し,健診データの提供も受けた.153名の女子学生を解析対象とし,主食・主菜・副菜の揃った食事(1日2回以上)の摂取頻度が週4日以上の高頻度群,週3日以下の低頻度群に分類し,2群間で生活習慣,知識・健康意識,健康状態を比較した後,年齢と現在の居住形態で調整した二項ロジスティック回帰分析を行った.結果:高頻度群は90名,低頻度群は63名であった.二項ロジスティック回帰分析の結果,自炊頻度が高い人(オッズ比〔95%信頼区間〕: 2.96〔1.15, 7.64〕),栄養に関する知識がある人(3.33〔1.30, 8.48〕),健康に気をつかう人(7.29〔3.13, 16.98〕)は,そうでない人と比較して高頻度群の割合が高かった.また,BMIや体脂肪率が高いことが高頻度群の割合が低いことと関連していた(それぞれ0.84〔0.72, 0.98〕,0.90〔0.83, 0.98〕).BMIが18.5以上25 kg/m2未満の人と比較し,18.5 kg/m2未満の人(3.49〔1.19, 10.22〕)では高頻度群の割合が高かった.結論:主食・主菜・副菜の揃った食事は自炊,栄養に関する知識,健康意識の高さ,体格と関連していた.
著者
黒田 藍 村山 洋史 黒谷 佳代 福田 吉治 桑原 恵介
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-097, (Released:2022-02-28)
参考文献数
35

目的 孤立や孤独を防ぎ,かつ食事を確保する方策として食支援活動が行われてきたが,その実践に関する学術的知見は乏しい。本稿では,住民がボランティアで食支援活動を行う地域食堂のコロナ下での活動プロセスを記述し,地域食堂の活動継続が利用者や住民ボランティアにもたらした効果について予備的に検証することを目的とした。方法 本研究は東京都内の独居高齢者が多く居住する大規模団地にて,飲食店と同水準の食品衛生管理体制のもと運営されている地域食堂「たてキッチン“さくら”」で筆頭著者が実施するアクションリサーチの一部である。2020年2月から同年5月までの地域食堂の活動を報告対象とした。活動プロセスは運営の活動記録,運営メンバーと住民との対話記録,活動時の画像記録を用いて記述した。地域食堂の利用住民10人と住民ボランティア6人との対話記録をKJ法に基づき分類し,彼らが認識する地域食堂の活動継続がもたらした効果を評価した。活動内容 対象期間中に地域食堂の役員や住民ボランティアは定期的に会議等を行い,市民向け新型コロナウイルス感染症対策ガイドや保健医療専門職の助言,利用者の意見等を参考にしながら,運営形態の検討と修正を続けた。結果として,地域食堂は高齢住民ボランティアが中心となって住民の食と健康を守るために週5日の営業を継続した。店頭の販売個数は形態変更に伴い5月に半減した一方(2020年2月4,670個,同5月2,149個),各戸への配食数は需要の増加に伴い3月以降増加した(2020年2月301個,同5月492個)。事後評価の結果,地域食堂の新型コロナウイルス感染症対策は外食業の事業継続のためのガイドラインを遵守していた。活動継続の効果として,地域食堂利用者では〈食の確保〉,〈人とのつながり〉,〈健康維持増進〉の3つのカテゴリー,住民ボランティアでは〈社会とのつながり〉,〈健康維持増進〉の2つのカテゴリーが抽出された。結論 住民ボランティアが,住民の食と健康を守るとの活動理念を確認しながら,新型コロナウイルス感染症の対策情報等を参照し,ステークホルダーを巻き込み,一般に求められる水準の感染症対策を取り入れて食支援活動を継続していた。この取組継続は,住民の食確保や健康支援に加え,住民同士のつながり維持に役立ったことが示唆された。
著者
吉田 司 渡邉 大輝 中潟 崇 山田 陽介 黒谷 佳代 澤田 奈緒美 田中 健司 岡林 恵 島田 秀和 瀧本 秀美 西 信雄 宮地 元彦 阿部 圭一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.20-111, (Released:2021-05-14)
参考文献数
34

目的 本研究は,大阪府北部の摂津市および南部の阪南市における40歳以上の中高齢者のフレイル該当割合と2市で共通してフレイルと関連する要因を明らかにすることを目的とした。方法 2018年度に摂津市,2019年度に阪南市において無記名式郵送調査を行った。対象者は,小学校区ごとの40歳以上の性・年齢階級別の人口構成に応じて各小学校区から1,000人ずつ無作為に抽出した(摂津市10小学校区,阪南市8小学校区)。分析対象者は摂津市が5,134人,阪南市が3,939人であった。フレイル評価は,基本チェックリスト(KCL)および簡易フレイル指標(SFI)を用いた。フレイルを目的変数とし,年齢,性,BMI,家族構成,主観的健康感,経済状況,主観的体力,睡眠,喫煙,飲酒,食事回数,用語「フレイル」認知度を説明変数として多変量ロジスティック回帰分析を適用した。すべての分析は,摂津市と阪南市に分けて行った。結果 対象者の平均年齢と標準偏差は,摂津市が62.7±12.5歳および阪南市が63.4±12.2歳であった。KCLによるフレイル該当割合は,摂津市と阪南市でそれぞれ40歳代が18.7%と17.9%,50歳代が18.2%と14.6%,60歳代が17.0%と15.7%,70歳代が25.4%と20.8%,80歳以上が39.7%と36.1%であった。SFIによるフレイル該当割合は,摂津市と阪南市でそれぞれ40歳代が16.2%と13.5%,50歳代が15.0%と11.9%,60歳代が12.5%と10.0%,70歳代が14.6%と12.3%,80歳以上が24.7%と22.3%であった。摂津市および阪南市で共通し,かつKCLとSFIで共通してフレイルと関連した要因は,高年齢,主観的健康感の低さ,経済状況の不良,主観的体力の低さ,睡眠が不十分,およびフレイル認知度の低さであった。結論 大阪府の2市における調査により,40歳代や50歳代であっても一定数のフレイル該当者がいることが明らかになり,より早期の働く世代からのフレイル予防の取り組みが必要であることが示唆された。また,フレイルと関連する6つの要因が抽出されたが,因果関係や公衆衛生的意義について縦断研究や介入研究による検討が求められる。
著者
赤松 利恵 串田 修 高橋 希 黒谷 佳代 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.37-45, 2021-02-01 (Released:2021-04-05)
参考文献数
16
被引用文献数
1

【目的】「健康な食事・食環境」認証制度における外食・中食部門の応募促進と継続支援に向けて,スマートミールの提供状況と事業者が抱える課題を整理すること。【方法】2018年度に認証され,2020年更新対象となった外食55,中食24計79事業者を対象とした。2020年1~2月,Webフォームを用いて,更新意向の他に,スマートミールの提供状況と課題をたずねた。他に,認証時の情報から,応募部門,認証回,店舗の場所,星の数の情報を用いた。量的データの結果は,度数分布で示し,自由記述の回答は,コード化の後,類似する内容をまとめ,カテゴリ化した。【結果】79事業者を解析対象とした(解析対象率100%)。70.9%(n=56)の事業者が,更新すると回答した。項目に回答した49の更新事業者の63.3%(n=31)が【メニューに対する肯定的な評価】など,顧客からの反応が「あった」と回答した。また,71.4%(n=35)の事業者が認証前後の売上げに「変化なし」と回答したが,81.6%(n=40)の事業者が認証のメリットがあったと回答した。40.8%(n=20)の事業者が【メニューに関する課題】などを感じていた。【結論】外食・中食事業者の認証制度への応募促進と認証継続の支援には,メニュー開発やコスト削減に関する課題と,スマートミールの認知度向上など普及啓発に関する課題の解決が必要だと示唆された。
著者
早渕 仁美 徳田 洋子 松永 泰子 黒谷 佳代 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.128-140, 2016 (Released:2016-11-16)
参考文献数
27
被引用文献数
3

【目的】「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の考え方を食事バランスガイドに反映させ,食事バランスガイドの料理区分別サービング数(以下,「SV」と略)を算定し直し,エネルギー産生栄養素バランスの目標量に合致するか確認する。【方法】日本人の食事摂取基準(2015年版)で設定されたエネルギー産生栄養素バランスの目標量に留意し,料理区分別SVを食品構成の考え方に基づき算定する設定条件を見直した。たんぱく質のエネルギー産生栄養素バランス(以下,「たんぱく質%E」)と穀類エネルギー比率,及び5料理区分以外(菓子・嗜好飲料等)からのエネルギー(以下,「他Ene」と略)の条件を見直し,矛盾のない妥当な設定基準範囲について検討した。【結果】 設定条件の見直しによる基準エネルギー範囲の料理区分別SVの変化と,そのSVに基づき算出したエネルギー産生栄養素バランス(%E)と食塩量の分布を明らかにした。基準エネルギー 1,200~3,200 kcalに,たんぱく質%E16.5~14.5,穀類エネルギー比率38.0~45.0%,他Ene 0~100 kcalを設定して算定した料理区分別SVを用いた栄養価が,最も日本人の食事摂取基準(2015年版)に適合していた。【結論】見直し後の食事バランスガイドSVは,主食が 1 SV程度低値,主菜は 2 SV程度高値に,副菜と牛乳・乳製品,果物は現状とほぼ同値になった。
著者
黒谷 佳代 新杉 知沙 千葉 剛 山口 麻衣 可知 悠子 瀧本 秀美 近藤 尚己
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.593-602, 2019-09-15 (Released:2019-10-04)
参考文献数
24

目的 子ども食堂はボランティア等に運営され,子どもの社会的包摂に向けた共助のしくみとして注目されている。主なターゲット層である小・中学生の保護者を対象とした子ども食堂の認知に関する調査により,子ども食堂の地域における活用に関連する要因を明らかにすることを目的とした。方法 小学校1年生から中学校3年生の保護者3,420人(平均年齢42.6歳)を対象に,2018年10月にインターネット調査を実施した。属性,子ども食堂の認知と認識,利用経験,今後の利用希望とその理由を質問項目とした。対象者を二人親低所得(世帯年収400万円未満)世帯父親,二人親中高所得(400万円以上)世帯父親,二人親低所得世帯母親,二人親中高所得世帯母親,ひとり親世帯父親,ひとり親世帯母親に分け,群間の差は χ2 検定により検定を行った。結果 子ども食堂の認知割合は全体の69.0%で,男性に比べ女性で高く,とりわけ二人親中高所得世帯母親で79.7%と高かった(P<0.001)。メディアで子ども食堂を知った者が87.5%で,子どもが一人でも行けるところ・無料または数百円で食事を提供するところ・地域の人が関わって食事を提供するところという認識や,安い・賑やか・明るいなどポジティブなイメージを持つ者が多かった。しかし,子ども食堂を知っている者のうち,子ども食堂に本人もしくはその子どもが行ったことのある者はそれぞれ4.5%,6.3%であった。今後,子ども食堂に子どもを行かせてみたいと思うと回答した者は全体の52.9%で,世帯構成による利用希望に違いがみられ,低所得世帯とひとり親世帯母親では利用希望者が過半数である一方,中高所得世帯とひとり親世帯父親では過半数が利用希望しなかった(P<0.001)。その主な理由として,必要がない・家の近くに子ども食堂がない・家で食事をしたいなどがあったが,少数意見として生活に困っていると思われたくない・家庭事情を詮索されそう・恥ずかしいという理由があった。また,中高所得世帯では子ども食堂にかわいそうというイメージを持つ者が多かった。結論 本研究の小・中学生の保護者は子ども食堂に対してポジティブ・ネガティブの両方の認識をしており,その内容は世帯状況により異なっていた。理解の定着と普及のためには子ども食堂への負のイメージの払拭や子ども食堂へのアクセスの確保などの対応が必要と思われる。