著者
佐田 文宏 福岡 秀興 尾崎 貴視 伊藤 善也 吉池 信男 瀧本 秀美
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.15-19, 2017 (Released:2017-02-02)
参考文献数
26
被引用文献数
2

There are two major nationwide birth cohort studies in Japan, namely, the Longitudinal Survey of Newborns in the 21st Century conducted by the Ministry of Health, Labor and Welfare (MHLW) and the Japan Environment and Children’s Study (JECS) conducted by the Ministry of Environment. The former was a longitudinal questionnaire survey focusing on environmental and socioeconomic factors for descriptive epidemiology conducted every year since 2001 by mail. The latter was based on 15 unit centers nationwide with environmental measurements and collection of biological samples for environmental risk evaluation. Both are prospective birth cohort studies whose findings will be expected as the basis for establishing health policies. The data obtained in the former study can be used for research with permission from MHLW. To date, there have been more than ten published studies using those data. We have reviewed these studies and introduced our preliminary findings on factors affecting infant growth. Employment before delivery, educational background of parents, household income, and smoking habit of both parents have been suggested to affect infant growth. We will analyze the associations between socioeconomic factors and infant growth trajectory to elucidate the most adequate intervention for children.
著者
青山 友子 苑 暁藝 松本 麻衣 岡田 恵美子 岡田 知佳 瀧本 秀美
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.23-020, (Released:2023-09-05)
参考文献数
31

目的 集団における肥満ややせをモニタリングするために,疫学調査ではしばしば自己申告による身体計測値が用いられる。自己申告された身長と体重からBMI (body mass index)を求めると,集団における肥満(BMI≧25 kg/m2)の割合を過小評価することが知られている一方,やせ(BMI<18.5 kg/m2)の割合がどのように評価されるのかはよく理解されていない。そこで本研究では,肥満とやせの問題が共存する日本人において,自己申告による身体計測値の正確さに関するスコーピングレビューを行うことを目的とした。方法 PubMedとCiNii Researchを用いて,2022年までに英語または日本語で出版された文献を検索し,日本国内で行われた身長・体重・BMIの自己申告値と実測値を比較した研究を採用した。各研究より,研究デザインおよびmean reported errors(平均申告誤差=申告値の平均-実測値の平均)を抽出して表に整理した。また,BMIカテゴリによる違いも考慮した。結果 全国的なコホート研究(n=4),地域住民(n=4),職場(n=3),教育機関(n=6)において実施された計17編の文献(英語11編)が本レビューに含まれた。対象者の年齢(10~91歳)およびサンプルサイズ(100人未満~3万人以上)には多様性がみられた。観測された平均申告誤差の程度は研究によって異なったものの,大半の研究で身長は過大申告,体重は過小申告,BMIは過小評価された。BMIカテゴリ別の平均申告誤差を報告した3つの研究では,身長の申告誤差の方向性はすべての体格区分で変わらないものの,体重およびBMIはやせの区分のみで過大申告(評価)された。成人を対象とした4つの研究は,自己申告身長・体重に基づいたBMIを用いると,肥満の14.2~37.6%,やせの11.1~32.3%が普通体重(18.5≦BMI<25 kg/m2)に誤分類され,普通体重の0.8~5.4%および1.2~4.1%が,それぞれやせおよび肥満に誤分類されることを示した。結論 自己申告による身長と体重に基づくBMIを用いると,日本人では集団における肥満とやせ両方の有病率を過小評価する可能性がある。自己申告による身体計測値を疫学調査に用いる際は,こうしたバイアスの存在を考慮する必要がある。
著者
越田 詠美子 岡田 知佳 岡田 恵美子 松本 麻衣 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.14-26, 2021-02-01 (Released:2021-04-05)
参考文献数
67

【目的】本研究は,今後の日本での食事摂取基準の策定における参考資料となるよう,日本と諸外国の策定状況とその活用目的を比較検討することを目的とした。【方法】食事摂取基準に関する情報は,各国の策定機関のホームページ等から収集した。調査対象国は日本,アメリカ/カナダ,イギリス,オーストラリア/ニュージーランド,European Unionとし,調査項目は,策定機関,改定の周期と対象,摂取量の指標,基準値が策定されている栄養素,活用目的とした。【結果】食事摂取基準は,各国の政府や公的機関等が主導して策定をしていた。改定の周期は,日本は全栄養素を対象に5年ごと,日本以外の国は栄養素ごとに,必要に応じて不定期に行っていた。摂取量の指標は,日本とおおよそ同様の指標が諸外国でも用いられており,さらに,イギリスでは推定平均必要量から2標準偏差を差し引いた値である下限栄養素摂取基準値も定められていた。基準値が策定されている栄養素数は,アメリカ/カナダが最多であった。活用目的は各国共通で,栄養・食事管理,栄養指導,食事ガイドライン/フードガイドの策定,栄養表示に用いられていた。その他,日本以外のすべての国で軍隊に対する活用がされていた。【結論】本研究により日本と諸外国における食事摂取基準の相違点が明らかとなり,今後の日本での策定において参考になるとともに,日本の課題も浮き彫りとなった。
著者
東泉 裕子 水島 諒子 小板谷 典子 黒谷 佳代 西平 順 山本(前田) 万里 瀧本 秀美
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.368-382, 2022-05-15 (Released:2022-05-24)
参考文献数
56

目的 ストレス,メンタルヘルス,睡眠,疲労に関わる軽度な不調(軽度不調)は,それぞれが密接な関係にあるとともに,それらの悪化が生活習慣病等を惹起することが報告されている。客観的な健康指標との関係性が明らかな軽度不調を明らかにすることで,質問票による健康状態の予測が可能になると考えられる。とくに,日常的にストレスを感じる者の割合の高い日本人を対象とした疫学文献を用い,軽度不調に関する質問票と健康指標との関連についてシステマティックレビューを行い,軽度不調の尺度開発に必要な調査票の項目の検討を行うこととした。方法 軽度不調に関する先行研究のキーワードを基に「自律神経系」,「睡眠障害」,「精神およびストレス」,「疲労」についてPubMedを用いて研究論文を検索した。抽出された研究論文は,以下の包含基準(日本人健常者集団を対象に含んでいる,対象集団の特徴について記載がある,研究デザインが分析疫学研究,介入研究およびシステマティックレビューである,軽度不調を質問票で評価している,軽度不調と健康指標との関連を検証している,日本語または英語で書かれている)に沿ってスクリーニングし,10件を採択した。結果 採択論文10件中1件がコホート研究,3件が症例対照研究,6件が横断研究であり,研究対象者は成人期の労働者が5件と多かった。ストレスに関する質問票を用いた報告6件のうち3件で,睡眠に関する報告7件のうち4件で,包括的な健康状態に関する報告2件のうち2件で,それぞれの軽度不調と健康指標との間に統計学的に有意な関連が報告されていた。調査票による仕事に関連するストレス反応の増加は,健康指標の「うつ病発症リスク(オッズ比2.96(信頼区間:1.04-8.42))」の増加と関連していた。また,睡眠の質の低下は「自律神経指標の変化」,「併存疾患の数およびうつ病の比率」および「労働時の傷害のリスク」の増加と関連していた。加えて,健康度スコアは「自律神経指標」との関連が認められた。結論 これらの結果から,軽度不調の評価に必要な質問票には「ストレス」,「睡眠の質」,「包括的な健康状態」に関する質問が必要であることが示唆された。一方,バイアスリスクに適切に対処した研究が限られていることから,今後,コホート研究や介入研究において,本研究で整理した質問票と健康指標との関連について,前向きに検討する必要がある。
著者
横山 友里 吉﨑 貴大 多田 由紀 岡田 恵美子 竹林 純 瀧本 秀美 石見 佳子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.162-173, 2021-06-01 (Released:2021-07-09)
参考文献数
48
被引用文献数
1

【目的】食品の栄養価を総合的に判断できるよう,特定の栄養素等の含有量で食品を区分またはランク付けする「栄養プロファイルモデル(以下,NPモデル)」が諸外国の栄養政策で活用されている。本研究では,諸外国のNPモデルを調査し,日本版NPモデル策定のための基礎資料の作成および課題整理を行うことを目的とした。【方法】第41回コーデックス委員会栄養・特殊用途食品部会の議題「NPモデル策定のための一般ガイドライン」で共有された既存のNPモデル(97件)の一覧表を用い,対象モデルを抽出した。【結果】採択条件に該当しないモデル(計75件)を除き,調査対象のモデル22件の開発国の内訳は,中南米(1件),北米(5件),欧州(5件),中東(1件),大洋州(2件),アジア(6件),国際機関(WHOの地域事務所)(2件)であった。食品の包装前面の表示(11件),ヘルスクレーム付与に対する制限(5件)を目的としたモデルは一般集団が対象であり,広告規制を目的としたモデル(6件)は子供が対象であった。モデルタイプは閾値モデルが16件,スコアリングモデルが5件,混合モデルが1件で,多くのモデルで摂取を制限すべき栄養素等として,熱量,脂質,飽和脂肪酸,トランス脂肪酸,糖類,ナトリウムを設定していた。【結論】日本版NPモデルの策定にむけた検討課題として,対象栄養素,食品のカテゴリー分類,モデルタイプの設定等が示された。
著者
黒谷 佳代 中出 麻紀子 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.77-88, 2018-08-01 (Released:2018-09-21)
参考文献数
38
被引用文献数
8

【目的】主食・主菜・副菜を組み合わせた食事と健康・栄養状態および食物・栄養素摂取との関連について国内の研究動向を把握した。【方法】2000~2017年に発表された論文を対象に,医学中央雑誌とNII学術情報ナビゲータ(CiNii)を用い「主食AND主菜AND副菜」で検索した。表題,抄録,本文を,本研究の以下の採択基準と照合・精査し,包含基準(日本人対象,分析疫学研究,曝露が主食・主菜・副菜を組み合わせた食事摂取,アウトカムが食物・栄養素摂取状況及び健康・栄養状態,対象集団の特徴明記)と除外基準(介入研究,ケースレポート,ケースシリーズ,エコロジカル研究)を満たす12件を採択した。【結果】採択論文はすべて横断研究で,研究対象者は成人期が最も多かった。主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の把握は,質問紙調査法によるものが過半数を占め,それらの質問項目は様々であった。食物・栄養素摂取との関連を検討した研究6件では,いずれも主食・主菜・副菜の揃った食事回数の多い人ほど,エネルギー,たんぱく質,各種ビタミン・ミネラルの摂取量が多く,日本人の食事摂取基準に合致していることが報告されていた。健康・栄養状態との関連を検討した8件の研究は,一貫した結果を示さなかった。【結論】主食・主菜・副菜を組み合わせた食事は必要な栄養素の十分な摂取に関連していることが示唆された。健康指標との関連については,縦断研究を含めたさらなる研究が必要である。
著者
東泉 裕子 金田 恭江 下村 千史 黒谷 佳代 西平 順 瀧本 秀美
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.229-237, 2022 (Released:2022-10-19)
参考文献数
27

日本食品標準成分表2010 (六訂) と日本食品標準成分表2015年版 (七訂) 追補2018年を用いて算出した栄養素等摂取量推定値とを比較し, 食品成分表改訂が栄養素等摂取量推定に与える影響を分析した。北海道在住の地域住民および東京都に勤務する者625名の食物摂取量について, 食事記録法により食事調査を行い, 栄養素等摂取量を算出した。炭水化物以外のすべての栄養素等で成分表の違いにより摂取量に有意な差が認められ, とくに分析方法が更新された総食物繊維摂取量への影響が大きく, 七訂値では六訂値より平均で3.0 g (23.2%) 高値であった。また, 日本人の食事摂取基準 (2020年版) を適用した場合の集団の総食物繊維摂取量の評価にも, 成分表の違いによる影響が認められた。以上より, 食事調査から食物繊維摂取状況を評価する際は, 計算に用いられた食品成分表の正式名称および分析方法を考慮した検討が必要であることが示唆された。
著者
黒谷 佳代 新杉 知沙 三好 美紀 瀧本 秀美
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.Supplement, pp.S50-S59, 2020-12-01 (Released:2021-02-16)
参考文献数
31

【目的】 食育の推進に関連する法律,政策および活動について整理すること。【方法】 食育基本法,食育推進基本計画,都道府県および市町村における食育推進計画について情報をとりまとめた。【結果】 食育基本法は,国民が生涯にわたって健全な心身を培い,豊かな人間性を育むことができるようにすることを目的として,2005年に制定された。食育基本法では,5か年計画の食育推進基本計画の作成及び実施による食育推進を図ることが規定されている。2005年から2015年は,内閣府が食育の推進を図るための基本的な施策に関する企画,立案,総合調整の事務を担い,2016年以降は農林水産省が担当している。毎年,食育推進基本計画の推進状況について評価が行われている。第3次食育推進基本計画(2016~2020年度)では,21の目標値が設定され,共食や中学校における学校給食の実施,食品中の食塩や脂肪の低減に取り組む食品企業,伝統的な料理や作法等の継承,食品の安全性に関する項目が2019年現在達成されている。また,都道府県食育推進計画はすべての都道府県で作成,実施がされているものの,市町村の計画は未だ100%に達していない。【結論】食育基本法制定後,約15年間で食育推進計画によりいくつかの課題が改善したものの,朝食欠食などの課題が依然として続いている。COVID-19の影響で,人々の生活環境は急速に,そして劇的に変化した。国民の明るい未来の創出のために,食育推進に関わるすべての人々が食・健康課題への対応に尽力することが必要だろう。
著者
新杉 知沙 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.210-217, 2022-06-01 (Released:2022-07-06)
参考文献数
26

【目的】新型コロナウイルス感染拡大の影響による行動制限が長引く昨今の状況に鑑み,非対面式で実施可能な,妊産婦の健康的な食生活を促すオンラインツールを用いた介入研究について文献を整理した。【方法】文献データベース(PubMed)上で公表された論文のうち,「妊婦,インターネット介入,食生活」により作成した検索式を用いて文献検索を行った。【結果】包含基準により文献の精査を行ったところ,最終的に4件を採択した。研究対象者は健康的な単胎妊婦や,妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群の既往歴のある女性であった。アウトカム指標により介入時期が異なり,妊娠中の体重増加量過剰割合の減少を目的とした研究では妊娠初期・中期に,産後の体重維持を目的とした研究では妊娠後期や産後に実施されていた。介入内容としては,健康的な生活習慣を促進することを目的とした個別のオンライン教育プログラム,公的機関等による情報提供,専門職からの食事指導,さらに参加者同士の交流が実施されていた。オンラインツールを用いた介入により,産後の体重減少,産後のウエスト周囲径の減少,健康な食事に対する自己効力感の向上がみられた。【結論】妊産婦を対象とした食生活に関するオンラインツールを用いた介入により母体転帰との関連が示唆された。一般向けにわかりやすく正確な情報が集約されたオンラインツールの拡充やそれらの効果検証を含めたさらなるエビデンスの蓄積が求められる。
著者
石見 佳子 竹林 純 横山 友里 吉﨑 貴大 多田 由紀 岡田 恵美子 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.79-95, 2022-04-01 (Released:2022-05-24)
参考文献数
49

【目的】人びとが健康な食生活を営むためには,適切な食品の選択が求められる。諸外国では消費者が食品の栄養価を総合的に判断できるよう,特定の栄養素等の含有量で食品をランク付けする「栄養プロファイルモデル」が活用されているが,我が国においては策定されていない。そこで本研究では,加工食品について,日本版栄養プロファイルモデル試案を作成することを目的とした。【方法】WHO Technical meeting 2010報告書,WHO健康な食生活のための食品の包装前面表示ガイドライン及び諸外国のモデルを参考とし,国民健康・栄養調査,日本人の食事摂取基準(2020年版),日本食品標準成分表2015年版(七訂),日経POSデータ等を根拠資料として用いて,加工食品の日本版栄養プロファイルモデル試案を作成し,妥当性を検討した。【結果】①日本の公衆栄養の観点から,対象を18歳以上,対象項目を脂質,飽和脂肪酸,ナトリウム(食塩相当量)及び熱量とした。②日本版栄養プロファイルモデルとしてカテゴリー特異的モデルを選択した。対象食品を調理済み加工食品を含む加工食品とし,一般加工食品は国民健康・栄養調査食品群別表の中分類を基に15カテゴリーに分類した。③対象項目の閾値基準を設定し,各食品カテゴリーについて閾値を設定した。【結論】日本の公衆栄養の状況に応じた日本版栄養プロファイルモデル試案を作成した。
著者
吉田 司 渡邉 大輝 中潟 崇 山田 陽介 黒谷 佳代 澤田 奈緒美 田中 健司 岡林 恵 島田 秀和 瀧本 秀美 西 信雄 宮地 元彦 阿部 圭一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.20-111, (Released:2021-05-14)
参考文献数
34

目的 本研究は,大阪府北部の摂津市および南部の阪南市における40歳以上の中高齢者のフレイル該当割合と2市で共通してフレイルと関連する要因を明らかにすることを目的とした。方法 2018年度に摂津市,2019年度に阪南市において無記名式郵送調査を行った。対象者は,小学校区ごとの40歳以上の性・年齢階級別の人口構成に応じて各小学校区から1,000人ずつ無作為に抽出した(摂津市10小学校区,阪南市8小学校区)。分析対象者は摂津市が5,134人,阪南市が3,939人であった。フレイル評価は,基本チェックリスト(KCL)および簡易フレイル指標(SFI)を用いた。フレイルを目的変数とし,年齢,性,BMI,家族構成,主観的健康感,経済状況,主観的体力,睡眠,喫煙,飲酒,食事回数,用語「フレイル」認知度を説明変数として多変量ロジスティック回帰分析を適用した。すべての分析は,摂津市と阪南市に分けて行った。結果 対象者の平均年齢と標準偏差は,摂津市が62.7±12.5歳および阪南市が63.4±12.2歳であった。KCLによるフレイル該当割合は,摂津市と阪南市でそれぞれ40歳代が18.7%と17.9%,50歳代が18.2%と14.6%,60歳代が17.0%と15.7%,70歳代が25.4%と20.8%,80歳以上が39.7%と36.1%であった。SFIによるフレイル該当割合は,摂津市と阪南市でそれぞれ40歳代が16.2%と13.5%,50歳代が15.0%と11.9%,60歳代が12.5%と10.0%,70歳代が14.6%と12.3%,80歳以上が24.7%と22.3%であった。摂津市および阪南市で共通し,かつKCLとSFIで共通してフレイルと関連した要因は,高年齢,主観的健康感の低さ,経済状況の不良,主観的体力の低さ,睡眠が不十分,およびフレイル認知度の低さであった。結論 大阪府の2市における調査により,40歳代や50歳代であっても一定数のフレイル該当者がいることが明らかになり,より早期の働く世代からのフレイル予防の取り組みが必要であることが示唆された。また,フレイルと関連する6つの要因が抽出されたが,因果関係や公衆衛生的意義について縦断研究や介入研究による検討が求められる。
著者
佐藤(三戸) 夏子 瀧本 秀美
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.19-23, 2008-01-25 (Released:2017-10-10)
参考文献数
45

Folate is a water-soluble vitamin, which is one of vitamin B group, and is involved in DNA synthesis cycle and methylamine cycle. It is known that folate deficiency is associated with pernicious anemia. Folate is also an important nutrient for an embryo, because recent many studies reveal an association between maternal folate status and fetal neural tube defects (NTDs). In 2002, Japanese government recommended that all women planning a pregnancy should consume an additional 400μg/day of supplementary folate to reduce risk of NTDs, referring to scientific evidence and recommendations in the other countries. It is also reported that folate is an important nutrient for not only the prevention of NTDs but also health of mother and fetus. As the prevalence of NTDs was low in Japan compared with other countries in the past, folate status in Japanese has not been fully investigated. Folate has been recently added to the Dietary Reference Intake for Japanese and Standard Table of Food Composition in Japan since 2000.
著者
松本 麻衣 岡田 知佳 岡田 恵美子 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.121-130, 2020-06-01 (Released:2020-07-17)
参考文献数
22

【目的】都道府県健康増進計画は健康増進法に基づき定められている。2018年に健康日本21(第二次)の中間評価が実施され,結果が公表された。しかし,都道府県の健康増進計画の目標項目及び中間評価の状況については不明である。そこで,各都道府県の健康増進計画の目標設定状況,中間評価の結果,中間評価後の目標設定状況についてまとめることとした。【方法】各都道府県の健康増進計画及びその中間評価に関する情報は,各自治体のホームページから,2019年5月31日までに公表されている情報を入手した。【結果】42都道府県において中間評価の結果が公表されていた。健康日本21(第二次)で設定されている項目の中で「食塩摂取量の減少」,「野菜と果物摂取量の増加」,「睡眠による休養を十分にとれていない者の割合の減少」,「成人の喫煙率の減少」の4項目は,全都道府県で設定されていた。また,44都道府県で独自の目標項目を設定していた。中間評価において,健康日本21(第二次)で設定されている目標項目のうち半数以上の都道府県で改善がみられた項目数は24項目であった。また,中間評価後に目標設定を変更していない都道府県が多かった。【結論】各都道府県において,現状及び実現可能性を踏まえた上で,計画を実施し取り組んでいた。今後も,都道府県ごとに課題に対する目標項目の設定及び目標値達成に向けたモニタリングが実施されることが期待される。
著者
越田 詠美子 岡田 知佳 岡田 恵美子 松本 麻衣 村井 詩子 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.183-192, 2019-12-01 (Released:2020-02-06)
参考文献数
45
被引用文献数
3

【目的】国民の食品・栄養素等摂取状況を把握するため,日本で実施されている国民健康・栄養調査と,諸外国における同様の調査とを比較・検討することを目的とした。【方法】栄養調査に関する情報は,オーストラリア,ブラジル,カナダ,中国,フィンランド,ドイツ,日本,韓国,ロシア,イギリス,アメリカの11か国について,各国の調査担当機関のホームページ等から収集した。【結果】調査の実施機関の多くは,主に自国の機関であったが,他国と共同で実施している国もみられた。世帯を対象としている国と,個人を対象としている国が約半々であった。対象年齢は,子どもと成人の両方を設定している国がほとんどであった。日本では,厚生労働省が健康増進法に基づき,調査地区を管轄する自治体に調査を委託しているが,諸外国では実施機関の職員等が担当していた。食物摂取状況調査は,11か国中8か国が24時間思い出し法を用いており,5か国が単独の調査法のみではなく,複数の調査法を組み合わせて行っていた。実施頻度は,継続的,定期的(毎年から数年に一度)または不定期であり,時期・期間は,通年の場合と一時点の場合とがあった。調査データの二次利用に際しては,申請を要する国,一部データのみ申請を要する国,申請不要な国があった。【結論】諸外国の栄養調査は,実施体制や方法等が多様であり,今後の日本での調査の実施において,参考になると考えられた。
著者
斉藤 由紀子 武安 眞珠 及川 正文 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.123-132, 2019-10-01 (Released:2019-11-01)
参考文献数
12

【目的】東京都下で20年以上開催されてきた「男性のための料理講座」参加者の食に対する意識・行動を把握し今後の講座運営に資するため,講座終了時質問紙調査結果の分析を行った。【方法】平成19~28年に公益財団法人C福祉公社主催生きがい介護予防講座「男性のための料理講座」に参加し,講座終了時質問紙に回答した87名の結果を分析した。本講座では年5回栄養の講話と調理実習を行っている。質問紙では「参加の動機」・「家庭での調理の有無」・「講座の献立」・「食意識の変化」・「満足度」・「実施回数」に関する調査を行った。【結果】「参加の動機」では「料理技術の習得」28名,「退職後の仲間づくり」12名が上位を占めた。「講座の献立」は,「良かった」と「大変だった」と回答した献立名が共通していた。「家庭での調理の有無」では,講座の献立を作ってみた者が45名であった。参加の前後で食意識が変化したと回答した者が54名であり,それらの内容は料理への興味や調理技術,調理に対する気持ちであった。料理講座に満足していた者は63名であった。【結論】参加の動機から積極的な参加者が多く,大変だが充実感のある献立を望んでいると考えられた。また講座終了時の調査結果から,半数近くが家庭で調理をしており料理や調理技術への興味が高まったことが推察された。高齢者男性向けの料理講座は参加者にとって食事の自立へつながる可能性が示唆された。
著者
黒谷 佳代 新杉 知沙 千葉 剛 山口 麻衣 可知 悠子 瀧本 秀美 近藤 尚己
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.593-602, 2019-09-15 (Released:2019-10-04)
参考文献数
24

目的 子ども食堂はボランティア等に運営され,子どもの社会的包摂に向けた共助のしくみとして注目されている。主なターゲット層である小・中学生の保護者を対象とした子ども食堂の認知に関する調査により,子ども食堂の地域における活用に関連する要因を明らかにすることを目的とした。方法 小学校1年生から中学校3年生の保護者3,420人(平均年齢42.6歳)を対象に,2018年10月にインターネット調査を実施した。属性,子ども食堂の認知と認識,利用経験,今後の利用希望とその理由を質問項目とした。対象者を二人親低所得(世帯年収400万円未満)世帯父親,二人親中高所得(400万円以上)世帯父親,二人親低所得世帯母親,二人親中高所得世帯母親,ひとり親世帯父親,ひとり親世帯母親に分け,群間の差は χ2 検定により検定を行った。結果 子ども食堂の認知割合は全体の69.0%で,男性に比べ女性で高く,とりわけ二人親中高所得世帯母親で79.7%と高かった(P<0.001)。メディアで子ども食堂を知った者が87.5%で,子どもが一人でも行けるところ・無料または数百円で食事を提供するところ・地域の人が関わって食事を提供するところという認識や,安い・賑やか・明るいなどポジティブなイメージを持つ者が多かった。しかし,子ども食堂を知っている者のうち,子ども食堂に本人もしくはその子どもが行ったことのある者はそれぞれ4.5%,6.3%であった。今後,子ども食堂に子どもを行かせてみたいと思うと回答した者は全体の52.9%で,世帯構成による利用希望に違いがみられ,低所得世帯とひとり親世帯母親では利用希望者が過半数である一方,中高所得世帯とひとり親世帯父親では過半数が利用希望しなかった(P<0.001)。その主な理由として,必要がない・家の近くに子ども食堂がない・家で食事をしたいなどがあったが,少数意見として生活に困っていると思われたくない・家庭事情を詮索されそう・恥ずかしいという理由があった。また,中高所得世帯では子ども食堂にかわいそうというイメージを持つ者が多かった。結論 本研究の小・中学生の保護者は子ども食堂に対してポジティブ・ネガティブの両方の認識をしており,その内容は世帯状況により異なっていた。理解の定着と普及のためには子ども食堂への負のイメージの払拭や子ども食堂へのアクセスの確保などの対応が必要と思われる。