著者
高橋 啓介 赤羽 秀徳 粕谷 大智 中澤 光弘
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.32-47, 2010 (Released:2010-06-07)
参考文献数
31

近年、 腰痛をめぐる環境が大きく変化し、 腰痛に対する概念が大きく転換しつつある。 それは、 腰痛を 「脊椎の障害」 という捉え方から、 「生物・心理・社会的疼痛症候群」 という概念で捉えることの重要性が認識されるようになってきたことである。 従来の椎間板の障害といった形態的異常を腰痛の病態とする考え方から目に見えない機能障害という視点からも腰痛の病態を把握しようとする考え方である。 このように疾病構造が多様化していることから、 鍼灸臨床においても適切に対応できる力量が求められている。 即ち、 病態を把握した上で適切な治療を行うという考えは医療人として身に付けておかなければならない重要な要素である。 今回のパネルディスカッション1は、 このような視点に立ち、 整形外科医、 理学療法士もパネリストに加わり、 「腰痛に対するプライマリケア」 を企画した。 まず、 腰痛に対する概念が大きく転換しつつあることを踏まえて、 病態の捉え方、 対応の仕方、 鍼灸の適応と限界、 治療方法、 評価法について、 それぞれの立場から述べて頂いた。
著者
菊池 友和 瀬戸 幹人 山口 智 小俣 浩 中澤 光弘 磯部 秀之 大野 修嗣 三村 俊英 北川 秀樹 高橋 啓介
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.834-839, 2010 (Released:2010-12-24)
参考文献数
20

【目的】鍼通電刺激(EA)が,ヒトの筋血流に及ぼす影響を定量的に直接法で測定した報告はない。新しく開発したクリアランス法を用いEA前中後での筋血流量の変化を測定した。【方法】健康成人ボランティア10例,男性8例,女性2例(中央値30.5歳)を対象とし,鍼長50mm,直径0.18mmのステレンス鍼で僧帽筋上の天柱穴と肩井穴へEAを行い,右を刺激側,左を非刺激側とした。さらに,EA前2分,EA中4分,EA後4分の計10分のデータを分析した。同時に血圧と心拍数も測定した。【結果】EA側の筋血流量は,刺激中増加し(p < 0.05)。また刺激中,拡張期血圧と心拍数が下降した(p < 0.05)。【考察】EAにより筋血流量が刺激側で増加し,拡張期血圧と心拍数が下降したことから,局所の筋ポンプ作用等により筋血流量が増加することが考えられた。【結語】新しい99mTc04-クリアランス法を用い評価した結果,EAは,刺激中,刺激側の筋血流量を増加させた。本法はこれまでの方法よりも簡便で精度も高いことから,今後鍼灸の臨床研究により積極的に用いられて良いと考える。