- 著者
-
粕谷 大智
川口 毅
- 出版者
- 日本心身健康科学会
- 雑誌
- 心身健康科学 (ISSN:18826881)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.2, pp.79-90, 2011-09-10 (Released:2011-09-15)
- 参考文献数
- 24
【目的】腰痛ガイドラインにおいて,治療者の対応 (指導,共感,励まし) が,治療成績や満足度を向上させるというエビデンスがある.しかし,腰痛患者の健康や疾病に対する考え方,理解度,性格が治療の効果を左右する可能性があり,腰痛患者の信念体系を把握した上での対応が求められている.今回,慢性腰痛患者の健康統制感と身体所見との関係を調査し,心身健康科学からみた慢性腰痛患者の特徴と介入後の変化について検討した.【対象と方法】慢性腰痛と診断された49例を対象とした.評価法は,健康統制感尺度 (JHLC) と腰痛QOL尺度 (JLEQ) と不安評価尺度 (STAI) とVASと身体所見との関係を調査した.介入は,セルフケアや鍼灸治療など集学的治療を行い,介入3カ月までJHLCの推移と,それぞれの指標との関連について検討した.【結果および考察】JHLCは5つ下位尺度の中で,内在的統制において点数が高い傾向であった.また,介入3ヵ月後においてQOL尺度,STAI,VAS,身体所見とも有意に改善を認め,JHCLは内在的統制で有意に点数が増加した.VASの初診時と介入3ヶ月時の変化量を基準変数とした重回帰分析の結果では,QOL,STAI,身体所見の変化量で寄与率が強く,JHLCでは外在的統制の医療関係者の項目の変化量に寄与率が強い傾向であった.以上,内在的統制が高い患者であること,または介入により内在的統制を高めることと,外在的の因子では医療従事者の関わりが,より効率的な保健行動を向上させる可能性が示唆された.