著者
北村 宏 松村 任泰 中川 幹 松下 明正 荒井 正幸 小池 祥一郎 大谷 真紀 中澤 功
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-7, 2021-01-01 (Released:2021-01-14)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

症例は66歳男性.大腸癌に対する5-FUをベースとした全身化学療法中(FOLFILI+パニツムマブ)に食欲不振,倦怠感と急激な腹水の貯留を認めた.血液生化学所見では肝逸脱酵素の上昇と低アルブミン血症,PTの低下を認めた.画像診断では著明な脂肪肝を認め薬物性の肝障害,脂肪肝と考えられた.薬物の中断,利尿剤の投与等を行ったところすみやかに症状,肝機能の改善,腹水の消失,画像上の脂肪肝の消失を認めた.発症1年前の肝切除標本においては背景肝に脂肪化,肝細胞障害,線維化,炎症所見等は認めなかった.発症2カ月前のCTにおいても肝臓に異常所見を認めなかった.3回の肝切除後の肝容積の回復は良好で5年9カ月の全経過の後,間質性肺炎で死亡するまで肝転移の再発は認めなかった.臨床経過からイリノテカンを被疑薬とする薬物性急性脂肪肝と考えられた.
著者
清水 忠博 清水 忠治 清水 晶子 中澤 功
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.2549-2553, 2006-11-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
18
被引用文献数
5 7

乳腺腫瘤を形成する肉芽腫性乳腺炎(granulomatous mastitis)は稀な疾患で,癌との鑑別が問題となることがある.今回われわれは画像診断上乳癌が疑われ,治療経過中結節性紅斑を併発し副腎皮質ホルモン療法が著効した肉芽腫性乳腺炎の1例を経験したので報告する.症例: 41歳,女性.既往歴:十二指腸潰瘍.鬱病.現病歴: 2002年8月20日より右乳房に張り感,圧痛を伴う腫瘤を自覚し8月22日当院受診.現症:右C領域に大きさ38×26mmの軽度圧痛を伴う弾性硬な腫瘤を認めた.超音波検査:右乳腺CE領域に一部境界不明瞭,不整形,内部エコー低な腫瘤を認めた. MMG:局所的非対称陰影(カテゴリー3)と診断. CT:右乳房CEに36×26mmの大きさで早期より造影効果を示し,辺縁に棘状構造を伴う悪性を否定できない腫瘤を認めた.経過:初診時乳腺穿刺吸引細胞診はClass III, 7日後圧痛増悪時はClass IIであった.画像診断上癌も否定できないため,確定診断の目的で生検施行.病理組織診断は肉芽腫性乳腺炎であった.また同組織を用いて行った細菌検査では,一般細菌,抗酸菌ともに陰性であった.抗生剤(CFDN),消炎剤の投与を行うも生検創および腫瘤の改善はみられなかった. 1カ月後両下肢に熱感,紅斑を伴う皮下結節が多発し結節性紅斑と診断.プレドニゾロン10mg/日より開始した.結節性紅斑は速やかに消失し,肉芽腫性乳腺炎も徐々に縮小した.
著者
中村 俊幸 岸本 恭 下澤 信彦 小池 祥一郎 清水 忠博 久米田 茂喜 渡辺 豊昭 中澤 功 重松 秀一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.97, no.2, pp.195-198, 2000-02-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
13
被引用文献数
1 5

梅毒性直腸炎は報告が少なく,非常にまれな疾患である.今回われわれは同性愛者の梅毒性直腸炎の1例を経験したので若干の文献的考察を含めて報告する.患者は40歳の男性,同性愛者で過去に肛門性交歴があった.主訴は肛門からの出血と疼痛で,内視鏡で下部直腸に潰瘍性の病変を認めた.生検で病変部のTreponema pallidumが証明され,梅毒性直腸炎と診断された.