著者
岩﨑 安博 川嶋 秀治 柴田 尚明 田中 真生 中島 強 國立 晃成 置塩 裕子 中田 朋紀 米満 尚史 上田 健太郎 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
pp.37.3_01, (Released:2023-02-15)
参考文献数
13

症例は50代の男性. 罠にかかったイノシシを捕獲しようとした際に, イノシシに胸部に突進された. さらに転倒後両下肢を複数回咬まれた. 救急隊により開放性気胸と判断されドクターヘリが要請された. 現場で胸腔ドレナージを実施した. 両下肢にも多発切創を認め圧迫止血を行い病院へ搬送した. 第4病日に胸腔ドレーンを抜去し, 第28病日に退院となった. イノシシの犬歯は非常に鋭く大きく, それによる外傷は単なる咬傷でなく, 深部に達する刺創, 切創となり致死的な外傷を来たしうる. また攻撃性が強く多発外傷ともなりうる. イノシシによる外傷を診療する場合には, これらの特徴を踏まえて重症外傷の可能性も念頭に置いて対応する必要がある.
著者
石元 優々 高見 正成 平 一裕 中田 朋紀 山田 宏 上田 健太郎 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.751-755, 2022-08-31 (Released:2022-08-31)
参考文献数
10

コロナ時代を迎え初めての夏に,飲酒後河川に飛び込み頸髄損傷を発症した2症例を経験した。近年プールには監視員がおり,飛び込みも禁止されているためプールでの飛び込み損傷は減少していると思われるが,海や河川ではその限りではない。コロナ禍で人々の行動に変化がもたらされ,外傷について発生率やまたその原因に変化が起きている。河川への飛び込み損傷は頸髄損傷の原因としてまれであり,その疫学的実態を知ることは困難である。河川への飛び込みによる頸髄損傷の手術は,当科では過去10年間行っていなかったものの,2020年夏季に続けて2例経験した。頸髄損傷は回復が困難であり一生不自由を強いる不幸な外傷であるが,飛び込みによる頸髄損傷の危険性について周知されているとはいい難い。人々の行動が変容した本時代に改めて本事故について啓発が必要であると考える。