著者
岩﨑 安博 川嶋 秀治 柴田 尚明 田中 真生 中島 強 國立 晃成 置塩 裕子 中田 朋紀 米満 尚史 上田 健太郎 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
pp.37.3_01, (Released:2023-02-15)
参考文献数
13

症例は50代の男性. 罠にかかったイノシシを捕獲しようとした際に, イノシシに胸部に突進された. さらに転倒後両下肢を複数回咬まれた. 救急隊により開放性気胸と判断されドクターヘリが要請された. 現場で胸腔ドレナージを実施した. 両下肢にも多発切創を認め圧迫止血を行い病院へ搬送した. 第4病日に胸腔ドレーンを抜去し, 第28病日に退院となった. イノシシの犬歯は非常に鋭く大きく, それによる外傷は単なる咬傷でなく, 深部に達する刺創, 切創となり致死的な外傷を来たしうる. また攻撃性が強く多発外傷ともなりうる. イノシシによる外傷を診療する場合には, これらの特徴を踏まえて重症外傷の可能性も念頭に置いて対応する必要がある.
著者
藤田 浩二 岩崎 安博 宮本 恭兵 米満 尚史 八子 理恵 上田 健太郎 中尾 直之 加藤 正哉
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経外科救急学会 Neurosurgical Emergency
雑誌
NEUROSURGICAL EMERGENCY (ISSN:13426214)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.165-173, 2020 (Released:2020-12-23)
参考文献数
13

和歌山県では和歌山県立医科大学附属病院(以下,当院)に2003年1月からドクターヘリが導入され,積極的な救急医療活動を展開している.当院を起点としたドクターヘリが脳梗塞治療に寄与しているかを検証すべく,2011年7月より2017年12月の6.5年間で当院救急外来に搬送,入院に至った脳梗塞症例1479例を搬送手段別にドクターヘリ113例,救急車1039例,直接来院327例の3群に分け患者背景,治療成績を検討した.来院時年齢はドクターヘリ群(平均79.3歳)が他の2群に比し有意に高齢,病型はドクターヘリ群が脳塞栓(60.2%),直接来院群はラクナ梗塞(51.7%)が有意に高頻度であった.来院時NIHSSもドクターヘリ群(平均15.8)が他群に比し有意に高く,来院時重症であった.発症から来院までの時間はドクターヘリ群が有意に短く(平均210.3分),その結果アルテプラーゼ静注療法や急性期血行再建術の施行頻度も他群に比し有意に高かった.また和歌山県内を2次保健医療圏別に分け解析すると,ある医療圏では過半数の症例で当該医療圏内への患者病院搬送後に,当地の医師の判断で高次の治療目的に当院へのドクターヘリ搬送を要請,すなわち施設間搬送がなされていた.その一方で別の医療圏では施設間搬送依頼は極めて少なく,ほとんどが現着した初動救急救命士の判断で現場よりドクターヘリが要請されていた.このように医療圏によりドクターヘリ要請目的が大きく異なることが明らかとなった.本検討で和歌山県ドクターヘリは,遠隔地域の脳梗塞患者に対するアルテプラーゼ静注療法や血行再建術等の早期治療介入に寄与していたことがわかった.和歌山県ドクターヘリが拠点病院を核とする脳卒中診療体制を補完するには,地域毎に異なるドクターヘリ要請目的に応需する“柔軟性”の継続が重要である.
著者
上田 健太郎 岩﨑 安博 山添 真志 川副 友 川嶋 秀治 山上 裕機 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.141-148, 2013-03-15 (Released:2013-05-29)
参考文献数
23
被引用文献数
1 2

【目的】壊死型虚血性大腸炎は全虚血性大腸炎の約10%と頻度は低いが予後が悪く,診断した時点で壊死粘膜を含めた広範囲の腸管切除の緊急手術が必要である。しかしながら,はっきりとした診断基準がなく手術時期が遅れることが多いのが現状である。我々は壊死型虚血性大腸炎の救命率改善のために早期診断基準と予後因子の検討を行った。【対象】2002年から2010年までに経験した壊死型虚血性大腸炎手術症例24例を対象とした。【結果】平均年齢は77.4歳と高齢であり,男性15例,女性9例であった。基礎疾患として全例が動脈硬化性疾患を有していた。術前現症は16例に腹膜刺激症状,10例に下血,12例にイレウス症状を認め,11例で急性期DIC,9例でショック,17例で代謝性アシドーシスを伴い全身状態が不良な症例が大半であった。また全例でSIRS(systemic inflammatory response syndrome)陽性・21例で血中乳酸値の高値を認める特徴があり,発症から手術までの時間が24時間以内だったのが12例(50%)であった。術中所見として,穿孔は7例に認め,壊死範囲は全結腸型(病変が回盲部・肝弯曲部・脾弯曲部・SD junctionのうち3箇所以上にまたがる)5例,限局型19例(右半結腸4例,左半結腸15例)であった。術式は壊死病変部切除および人工肛門造設術が23例,一期的吻合術が1例で,救命率は58.3%であった。上記の因子と血液検査のデータに対し単変量解析を行った結果,発症から手術までの時間(24時間以内vs.以上),年齢,PT-INR値が予後因子であり,これら3因子によるLogistic回帰分析を用いた多変量解析により発症から手術までの時間が独立予後因子であった(p<0.05)。【結語】動脈硬化性疾患を有する高齢者では腹部所見が乏しくてもSIRS陽性・血中乳酸値の上昇を認める場合,壊死型虚血性大腸炎を念頭に診療することが重要である。また本症の独立予後因子は“発症から手術までの時間が24時間以内”であり,早期診断,緊急手術により救命率が改善すると考えられる。
著者
細川 蓮 山田 優生 小川 祐樹 上田 健太郎 諏訪 博彦 梅原 英一 山下 達雄 坪内 孝太
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1B3GS201, 2023 (Released:2023-07-10)

近年,個人で資産を形成するために,株式投資による人々の投資行動の需要が高まっている.株式投資において,将来の市場の動向を予測することは,投資家の投資リスクの低減や収益のために重要である.金融指標の一つに,ボラティリティ・インデックス(以下,VI )があり,これは投資家の市場に対する心理状態を表している.一方で,新聞メディアやソーシャルメディアの投稿には,社会情勢や人々の心理状態などを表しており,これらは,VI 指数に影響していると考えられる.本研究では,新聞記事とソーシャルメディアの投稿文書を用いて,日本における VI である日経平均VIの上昇を予測する.さらに,本研究の有用性を検証するために,予測した日経平均VIを用いてオプション取引の売買シミュレーションによる検証を行う.結果として,両メディアを用いることで日経平均VI上昇の予測精度の向上が確認され,売買シミュレーションにおいても収益に対する有用性が確認された.
著者
石元 優々 高見 正成 平 一裕 中田 朋紀 山田 宏 上田 健太郎 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.751-755, 2022-08-31 (Released:2022-08-31)
参考文献数
10

コロナ時代を迎え初めての夏に,飲酒後河川に飛び込み頸髄損傷を発症した2症例を経験した。近年プールには監視員がおり,飛び込みも禁止されているためプールでの飛び込み損傷は減少していると思われるが,海や河川ではその限りではない。コロナ禍で人々の行動に変化がもたらされ,外傷について発生率やまたその原因に変化が起きている。河川への飛び込み損傷は頸髄損傷の原因としてまれであり,その疫学的実態を知ることは困難である。河川への飛び込みによる頸髄損傷の手術は,当科では過去10年間行っていなかったものの,2020年夏季に続けて2例経験した。頸髄損傷は回復が困難であり一生不自由を強いる不幸な外傷であるが,飛び込みによる頸髄損傷の危険性について周知されているとはいい難い。人々の行動が変容した本時代に改めて本事故について啓発が必要であると考える。
著者
置塩 裕子 上田 健太郎 米満 尚史 那須 亨 川嶋 秀治 田中 真生 國立 晃成 岩﨑 安博 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-5, 2019-02-28 (Released:2019-02-28)
参考文献数
7

目的:和歌山県立医科大学附属病院高度救命救急センターに搬送された75歳以上の後期高齢者のCPA症例を検討し,今後の課題を明らかにする。方法:4年間に搬送された,DNAR未確認のCPA症例のうち,後期高齢者群と非後期高齢者群とを後向きに比較検討した。また,後期高齢者のROSCあり群となし群とを比較検討した。さらに,後期高齢者群の生存例を検討した。結果:対象475例中,後期高齢者は283例であった。後期高齢者群は,自宅や施設での発生が多く,初期波形VFの症例が少なかったが,ROSCや生存の割合に有意差は認めなかった。後期高齢者ROSC なし群では,目撃なし症例や初期波形心静止が多かったが,bystander CPRの有無や搬送時間に有意差は認めなかった。後期高齢者の生存8症例に初期波形VFはなく,すべてCPC4であった。結論:初期波形VFの生存症例がなく,改善の余地がある。また,事前指示書の普及が重要と考えられた。
著者
片山 豊 上田 健太郎 日浦 慎作 木村 大輔 高尾 由範 山永 隆史 市田 隆雄 東山 滋明 河邉 讓治
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.653-660, 2018 (Released:2018-07-20)
参考文献数
14

A high-resolution display panel comes to practical use, but the resolution of the indicated contents does not change. The up-sampling processing is applied to indication of the low-resolution contents. In the up-sampling process, the super resolution enables an up-sampling process which estimates information of high frequency components lost by sampling while analyzing input images is noticed. In this paper, we aimed at reconstructing an image of normal resolution in which the influence of statistical noise is reduced by applying super resolution after down-sampling processing is applied to positron emission tomography (PET) image with many statistical noises. To evaluate the noise reduction effect, we compared it with the Gaussian filter which is frequently used to reduce the influence of the statistical noise of the PET image. A 3D Hoffman brain phantom was used to evaluate objectively by peak signal-to-noise ratio and power spectral density. The objective index of the PET image applying super resolution is positive results, suggesting the possibility of being useful as compared with the conventional method.
著者
那須 亨 上田 健太郎 川副 友 岩崎 安博 川嶋 秀治 置塩 裕子 國立 晃成 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.405-409, 2017

<p> 比較的まれである小児の鈍的外傷性十二指腸穿孔を3例経験した. 症例1は10歳女児. シートベルト損傷により受傷した. 腹部造影CTで肝周囲に血腫を認めるもfree airはなく, 翌日のCTで後腹膜気腫を認めたため手術を施行した. 症例2は14歳男児. 空手試合中に回し蹴りにより受傷した. 造影CTで右腎周囲に血腫を認めるもfree airはなく, 翌日のCTで後腹膜気腫を認めたため手術を施行した. 症例3は14歳男児. 空手練習中に心窩部を打撲した. 翌日, 右側腹痛が増強したため救急搬送された. 単純CTでfree airを認めたため手術を施行した. 3例とも十二指腸憩室化手術は行わず, 経過良好で第19病日以内に退院した. 自験例を含む本邦11例の文献的考察を加えて報告する.</p>
著者
上田 健太郎 広木 正紀 村上 忠幸
出版者
日本理科教育学会
雑誌
日本理科教育学会全国大会要項
巻号頁・発行日
no.57, 2007-08-04

私は、子どものときから「周りの植物が緑色なのはどうしてか」が、気になっていた。後に、「植物の緑は、植物が光合成を行うのに使っている葉緑素の色」ということを学んだ。しかし、私にとってはこの問題が全部解決したわけではなく、次の疑問は、今も続いている。それは「もし、植物の大勢を占める色が、緑色でなかったとしたら、生物の世界はどうなるだろう」ということである。植物の緑は、私たちに、心の落ち着きや癒しを与えてくれている。人間だけでなく、いろいろな動物の生存は、植物に栄養的に依存しているだけでなく、植物の緑色にも少なからず影響を受けているのではないだろうか?このような関心から、「生物の世界に及ぼす色環境の影響」に着目して研究に取り組むことにした。