著者
岩﨑 安博 川嶋 秀治 柴田 尚明 田中 真生 中島 強 國立 晃成 置塩 裕子 中田 朋紀 米満 尚史 上田 健太郎 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
pp.37.3_01, (Released:2023-02-15)
参考文献数
13

症例は50代の男性. 罠にかかったイノシシを捕獲しようとした際に, イノシシに胸部に突進された. さらに転倒後両下肢を複数回咬まれた. 救急隊により開放性気胸と判断されドクターヘリが要請された. 現場で胸腔ドレナージを実施した. 両下肢にも多発切創を認め圧迫止血を行い病院へ搬送した. 第4病日に胸腔ドレーンを抜去し, 第28病日に退院となった. イノシシの犬歯は非常に鋭く大きく, それによる外傷は単なる咬傷でなく, 深部に達する刺創, 切創となり致死的な外傷を来たしうる. また攻撃性が強く多発外傷ともなりうる. イノシシによる外傷を診療する場合には, これらの特徴を踏まえて重症外傷の可能性も念頭に置いて対応する必要がある.
著者
上田 健太郎 岩﨑 安博 山添 真志 川副 友 川嶋 秀治 山上 裕機 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.141-148, 2013-03-15 (Released:2013-05-29)
参考文献数
23
被引用文献数
1 2

【目的】壊死型虚血性大腸炎は全虚血性大腸炎の約10%と頻度は低いが予後が悪く,診断した時点で壊死粘膜を含めた広範囲の腸管切除の緊急手術が必要である。しかしながら,はっきりとした診断基準がなく手術時期が遅れることが多いのが現状である。我々は壊死型虚血性大腸炎の救命率改善のために早期診断基準と予後因子の検討を行った。【対象】2002年から2010年までに経験した壊死型虚血性大腸炎手術症例24例を対象とした。【結果】平均年齢は77.4歳と高齢であり,男性15例,女性9例であった。基礎疾患として全例が動脈硬化性疾患を有していた。術前現症は16例に腹膜刺激症状,10例に下血,12例にイレウス症状を認め,11例で急性期DIC,9例でショック,17例で代謝性アシドーシスを伴い全身状態が不良な症例が大半であった。また全例でSIRS(systemic inflammatory response syndrome)陽性・21例で血中乳酸値の高値を認める特徴があり,発症から手術までの時間が24時間以内だったのが12例(50%)であった。術中所見として,穿孔は7例に認め,壊死範囲は全結腸型(病変が回盲部・肝弯曲部・脾弯曲部・SD junctionのうち3箇所以上にまたがる)5例,限局型19例(右半結腸4例,左半結腸15例)であった。術式は壊死病変部切除および人工肛門造設術が23例,一期的吻合術が1例で,救命率は58.3%であった。上記の因子と血液検査のデータに対し単変量解析を行った結果,発症から手術までの時間(24時間以内vs.以上),年齢,PT-INR値が予後因子であり,これら3因子によるLogistic回帰分析を用いた多変量解析により発症から手術までの時間が独立予後因子であった(p<0.05)。【結語】動脈硬化性疾患を有する高齢者では腹部所見が乏しくてもSIRS陽性・血中乳酸値の上昇を認める場合,壊死型虚血性大腸炎を念頭に診療することが重要である。また本症の独立予後因子は“発症から手術までの時間が24時間以内”であり,早期診断,緊急手術により救命率が改善すると考えられる。
著者
置塩 裕子 上田 健太郎 米満 尚史 那須 亨 川嶋 秀治 田中 真生 國立 晃成 岩﨑 安博 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-5, 2019-02-28 (Released:2019-02-28)
参考文献数
7

目的:和歌山県立医科大学附属病院高度救命救急センターに搬送された75歳以上の後期高齢者のCPA症例を検討し,今後の課題を明らかにする。方法:4年間に搬送された,DNAR未確認のCPA症例のうち,後期高齢者群と非後期高齢者群とを後向きに比較検討した。また,後期高齢者のROSCあり群となし群とを比較検討した。さらに,後期高齢者群の生存例を検討した。結果:対象475例中,後期高齢者は283例であった。後期高齢者群は,自宅や施設での発生が多く,初期波形VFの症例が少なかったが,ROSCや生存の割合に有意差は認めなかった。後期高齢者ROSC なし群では,目撃なし症例や初期波形心静止が多かったが,bystander CPRの有無や搬送時間に有意差は認めなかった。後期高齢者の生存8症例に初期波形VFはなく,すべてCPC4であった。結論:初期波形VFの生存症例がなく,改善の余地がある。また,事前指示書の普及が重要と考えられた。
著者
那須 亨 上田 健太郎 川副 友 岩崎 安博 川嶋 秀治 置塩 裕子 國立 晃成 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.405-409, 2017

<p> 比較的まれである小児の鈍的外傷性十二指腸穿孔を3例経験した. 症例1は10歳女児. シートベルト損傷により受傷した. 腹部造影CTで肝周囲に血腫を認めるもfree airはなく, 翌日のCTで後腹膜気腫を認めたため手術を施行した. 症例2は14歳男児. 空手試合中に回し蹴りにより受傷した. 造影CTで右腎周囲に血腫を認めるもfree airはなく, 翌日のCTで後腹膜気腫を認めたため手術を施行した. 症例3は14歳男児. 空手練習中に心窩部を打撲した. 翌日, 右側腹痛が増強したため救急搬送された. 単純CTでfree airを認めたため手術を施行した. 3例とも十二指腸憩室化手術は行わず, 経過良好で第19病日以内に退院した. 自験例を含む本邦11例の文献的考察を加えて報告する.</p>