著者
河内 寛治 中田 達広 浜田 良宏 高野 信二 角岡 信男 中村 喜次 堀内 淳 宮内 勝敏 渡部 祐司
出版者
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.344-346, 2002-09-15
被引用文献数
1

上行大動脈がporcelain aortaを呈したAVR,CABG,腹部大動脈瘤手術の心臓・大血管系の3同時手術を施行した.73歳女性で,左室-大動脈圧較差60mmHgを示し,RCAの4A-V枝に90%の狭窄を認めた.大動脈弁および上行大動脈の著しい石灰化を認め,腹部に5cmの壁在血栓を伴うAAAを認めた.手術はAVR,CABG,AAAの3同時手術を施行した.CABGのグラフトは大動脈での吻合のない右胃大網動脈を用いた.送血管は上行大動脈より行い,右房脱血にて体外循環を開始した.石灰化のない大動脈より心筋保護(CP)液を注入,大動脈遮断して,AVR施行した.冠動脈入口部の石灰化のために,選択的にCP液を注入することは難しく,大動脈切開部の石灰を除去し縫合閉鎖してから大動脈より注入した.ついでRGEAとRCAの吻合を行い,大動脈遮断解除し体外循環を終了し,AAAの人工血管置換術を行った.翌日抜管でき,現在NYHA1度で経過している.
著者
中田 達広 河内 寛治 流郷 昌裕
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

【背景】大脳領域では虚血再灌流後に、虚血部位に活性化microglia/macrophageが集積する事が知られている。今回我々は、脊髄虚血再灌流障害発症後のこれらの細胞の役割について検討した。【方法】雄Witar ratを、下行大動脈を13分遮断再灌流して虚血再灌流対麻痺モデルを作成し、下肢運動の神経学的評価を軽症、中等症、重症に分けて検討した。脊髄組織の頸髄、腰髄を採取し、免疫蛍光染色、real-time RT-PCRにて検討した。さらに、GFPラット骨髄移植ラットを用い、上記実験を施行した。【結果】GFP骨髄移植ラット実験において、虚血再灌流後の亜急性期の主体免疫細胞がresident microglia(RMG)ではなく、bone marrow-derived macrophage (BMDM)であることが示された。再灌流2日後、重症群ではBBBの破綻が著明であった。再灌流7日後、Sham群は、全部位RMGのみが観察された。軽症群では、RMGとBMDMが混在するように観察された。中等症群下部脊髄では、ほとんどのIbal^+細胞は、樹状活性化BMDMであった。一部の細胞はsynaptic strippingが観察された。重症群では、中等症群に比べ、大量のアメーバ状BMDMが集積していた。虚血再灌流7日後の抗TNFα, IL-1β, iNOS, CD68, IGF-1抗体等を用いた二重蛍光免疫染色により、これらの炎症性サイトカイン、iNOSは中等症群以下ではBMDMにほとんど発現しなかった。それに対し、重症群でほぼ全BMDMがこれらを発現していた。中等症樹状BMDMの一部にIGF-1の発現を認め、重症群では全アメーバ状BMDMでこの発現を認めた。real time RT-PCRでは、重症群はPCNAのmRNAの上昇を認め、活発に増殖していることが示された。【考察】脊髄虚血病理像は、不全麻痺症例では重症度とともに樹状BMDM浸潤数が増え活性化する。完全麻痺例では、BBBの破綻とともにアメーバ状BMDMの浸潤が大量に生じ、両者の病理像は大きく異なる。不全麻痺症例では、樹状BMDMによる神経細胞保護の動きが見られる。重症例ではアメーバ状BMDMは貪食と共に、神経再生に関与している可能性がある。