著者
近藤 公彦 中見 真也 白鳥 和生
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.16-28, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
32

デジタル・トランスフォーメーションとコロナ禍という劇的な環境変化は,消費者行動と小売業にきわめて大きな影響を及ぼし,ニューノーマル時代に適応した新たな小売ビジネスモデルの構築が求められている。この論文では,まずデジタル・トランスフォーメーションが小売業をどのような方向に進化させようとしているのか,ならびにコロナ禍が小売業の活動をどのように激変させたのかを主要な文献を通じて概観する。次に,そうした要因が消費者行動をどのように変え,またどのような小売業の新しい取り組みを促しているかを博報堂生活者総合研究所,経済産業省,アクセンチュア等による消費者調査,およびビームス,カインズ等の小売業のトップマネジメントへのインタビューを通じて明らかにする。こうした議論を踏まえ,ニューノーマル時代の小売業の新しいビジネスモデルをネオリテールと名づけ,その全体像を顧客関係性(顧客識別性,ターゲット設定,タッチポイント,顧客関係ボンド),価値の創造と提供(提供価値,方向性,店舗の役割と位置づけ),活動システム(商品供給システム,業務システム,組織内・組織間関係),および収益フォーミュラの観点から提示する。