著者
中谷 丈史 佐藤 伸治
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.197-201, 2018
被引用文献数
2

<p>近年,セルロースナノファイバー(CNF)の研究開発は盛んに進められており,開発のフェーズは製造開発の段階から用途開発の段階へシフトし,世界中で大型の実証機が導入されている。当社では2007年から本格的にCNF製造技術開発に取り組み,2013年には山口県岩国市に実証機設備を立上げ,2017年には宮城県石巻市,島根県江津市の2拠点で量産機設置完了を予定している。大量の水を含む水分散体として製造されるCNFの実用化には移送コストの面,菌による汚染の問題から乾燥のプロセスが不可欠であるが,CNF水分散体をそのまま乾燥させて水分を取り除くと強固に凝集するため,水への再分散が困難となり,CNF本来の機能が損なわれることになる。本稿では,こうした凝集を防ぐ乾燥方法と,水に再分散した際の分散状態の評価方法について紹介する。</p>
著者
中谷 丈史 石丸 優 飯田 生穂 古田 裕三
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.17-23, 2008 (Released:2008-01-28)
参考文献数
12
被引用文献数
8 9

木材に対する数種の有機液体の吸着に及ぼすリグニンの寄与について検討を行った。有機液体には分子寸法の異なる3種のアルコール類および前報でリグニンに対して高い親和性が示唆されたDMSOを用い,吸着媒には木粉から段階的な脱リグニン処理を施した乾燥および膨潤状態の試料を用いた。得られた主な結果は以下の通りである。(1)前報1)で示唆された乾燥リグニン中に多く存在する空隙あるいは水素結合の比較的ルーズな吸着サイトはエタノール程度の大きさの液体分子にアクセシブルであることが明らかとなった。(2)DMSOのリグニンに対する親和性は乾燥試料だけでなく膨潤試料でも高いことが明らかとなった。(3)リグニンがセルロースやヘミセルロースの膨潤を抑制させていることが示唆された。
著者
中谷 丈史 石丸 優 飯田 生穂 古田 裕三
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.285-292, 2006 (Released:2006-09-28)
参考文献数
18
被引用文献数
6 7

木材の主要3構成成分に対する各種有機液体の親和性について新たな知見を得ることを目的として,木材パルプ,ホロセルロースおよび木粉の乾燥および膨潤試料について,6種類の有機液体すなわちメタノール,エタノール,酢酸メチル,酢酸エチル,アセトンおよびジメチルスルホキシドの希薄ベンゼン溶液からの吸着性を比較して検討した。その結果,供試液体の中で,エタノール,ジメチルスルホキシドは乾燥リグニンに対して強い親和性を示した。また,乾燥試料と膨潤試料の吸着性の比較から,乾燥リグニンには乾燥セルロースやヘミセルロースと比較して,吸着サイトの新生にあまり大きなエネルギーを必要とせずに液体分子が近接できる吸着サイトがより多く存在していること,分子容の小さなメタノールの吸着には,乾燥リグニンだけでなく,セルロース,ヘミセルロースにおいても,吸着サイトの新生にあまりエネルギーを必要とせずに近接可能なサイトが存在していることが示唆された。