著者
中道 浩司 足利 奈奈 来嶋 正朋 佐藤 三佳子 吉村 康弘
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.49-55, 2013

本研究は,北海道の春まきコムギ優良新品種「はるきらり」を上川農業試験場 (北海道上川郡比布町) にて3年間栽培・試験し,収穫物である子実の製粉特性ならびに小麦粉の製パン性といった品質特性について,基幹品種「春よ恋」と比較することで評価したものである.品質特性は,子実については子実タンパク質含有率,子実灰分含有率,製粉工程でのミドリング粉量に対するブレーキ粉量 (BM率) で,小麦粉については小麦粉タンパク質含有率,小麦粉灰分含有率,生地吸水率,グルテンインデックス,パン体積で評価した.小麦粉タンパク質含有率ならびに小麦粉灰分含有率は,それぞれ同じ子実タンパク質含有率,同じ子実灰分含有率であれば,「春よ恋」が「はるきらり」よりも高かった.BM率は,両品種とも子実タンパク質含有率と正の相関を示し,同じ子実タンパク質含有率であれば,「はるきらり」が「春よ恋」よりも高かった.さらに,小麦粉タンパク質含有率は,吸水率,パン体積,可溶性ポリマー含有率 (EPP),可溶性モノマー含有率 (EMP) および不溶性モノマー含有率 (UMP) と正の相関を示し,グルテンインデックスと負の相関を示した.一方で,「はるきらり」は,「春よ恋」よりも吸水率が低く,グルテンインデックスが低く,パン体積が大きく,EPP と EMP が高く,不溶性ポリマー含有率 (UPP) が低かった.
著者
小宮山 誠一 本田 博之 池谷 聡 阿部 珠代 中道 浩司 佐々木 亮 竹内 薫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00054, (Released:2023-02-07)

試料搬送用コンベアを備えた近赤外分光装置を構築し,テンサイのショ糖含量を連続的に非破壊迅速評価する機器を開発した.コンベア速度を毎分20m,サンプル間隔50cmとすると,毎分40個の測定が可能である.主要品種を供試して(205個),各試料のスペクトルデータ(2次微分処理)約1nm毎の吸光度を説明変数,ショ糖含量実測値を目的変数としてPLS回帰分析により検量線を作成した.検量線精度評価用試料(183個)のスペクトルからショ糖含量の推定値を算出した結果,実測値と推定値の相関係数r,予測標準誤差SEPおよび二乗平均平方根誤差RMSEは,それぞれ0.918,0.65%および0.65%と良好であった.検量線の精度は,評価指標であるEI値で17.5%と精度・実用性ともに「高い」判定となった.検量線評価用の全サンプルのショ糖含量の平均値を「実測値」と「推定値」で比較すると,両者は同等の値となることが確認された.評価用サンプルから無作為にサンプルを抽出し(2~100個),それらの平均値を求め(1000反復),実測値と推定値の差を算出した結果,1回の抽出個数が多くなる程その差は小さくなった.50個以上抽出した平均値は,概ね0.1%以内の差で推定できた.以上の結果,本法は非破壊,簡易・省力,迅速なショ糖含量評価手法として活用の可能性が示された.