著者
中野 拓治 北尾 高嶺 糸井 徳彰 堀込 英司
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.215, pp.573-581,a1, 2001-10-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10

嫌気ろ床接触曝気方式の農業集落排水施設から得られたデータを用いて, 嫌気ろ床槽の窒素除去と影響要因を検討したところ, 窒素除去性能には, 流入水のNOx-N存在率 (NOx-N濃度×100/流入水T-N濃度), 流入水のBOD/T-N濃度比, 水量負荷, 流入水のT-N濃度, SS除去, 及び水温が関係しており, これらを説明変数とする重回帰式を用いて嫌気ろ床槽のT-N除去率を推定できることが確認された.嫌気ろ床槽においては, 酸化態窒素の還元反応による脱窒作用以外に, 汚水中の浮遊物質の沈殿・捕捉による浄化作用と槽内に蓄積された物質等の溶出作用が生じており, 複雑な浄化機構が存在しているものと考えられる。嫌気ろ床槽の窒素除去性能の安定を図るためには, 流入水中の酸化態窒素濃度を高めることと併せて, 水素供与体, 水温, 水理学的滞留時間等の確保を通じて酸化態窒素の円滑な還元作用を進めるとともに, 汚水中のSS除去によりSS由来の窒素を適切に除去することが重要であるといえる.
著者
中野 拓治 治多 伸介 山岡 賢
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.I_203-I_212, 2020

<p>本研究は,生物膜法の農業集落排水処理水について,供用施設(22施設)のデータに基づき,灌漑利用の観点からみたISOガイドラインの水質基準の達成状況を調査し,望ましい運転管理を考察した.処理水のBODとSSの濃度には,接触ばっ気槽の流入水濃度,水量負荷,及び,ばっ気強度が関与し,処理水のBODは通常の運転管理でカテゴリーCをほぼ満足している.ばっ気強度を3m<sup>3</sup>∙m<sup>‐3</sup>∙h<sup>‐1</sup>程度とし,接触ばっ気槽流入水のBOD濃度を30mg∙L<sup>-1</sup>程度に管理すれば,処理水質はカテゴリーBを確保できる可能性が高いものの,カテゴリーAにするためには,より高いばっ気強度での運転や清掃・堆積汚泥引抜き頻度の増加が必要である.大腸菌群数は,処理水中に残留塩素濃度が0.1mg∙L<sup>-1</sup>検出されればカテゴリーBを達成できる可能性が高く,灌漑利用には残留塩素濃度への注意が重要である.</p>
著者
中野 拓治 中村 真也 松村 綾子 高畑 陽 崎濱 秀明 大城 秀樹 幸地 優作 平田 英次
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.I_11-I_20, 2020

<p>沖縄本島北部に分布する国頭マージ土壌を用いて油汚染土壌のバイオレメディエーションによる屋外実証試験を実施した.油汚染土壌に琉球石灰岩砕や栄養塩を加えることで, いずれも浄化促進効果が認められた.琉球石灰岩砕添加により油分(Total Petroleum Hydrocarbons(TPH))の浄化開始から分解活性が高まるまでの期間が短縮され, 強制通気が不要なランドファーミング工法により油汚染土壌の浄化を図れる可能性が示された.含水比低下やpH値の中性化により石油分解菌の浄化活性が高まったものと考えられる.実規模レベルでのパイロットスケール試験により, 油臭とTPH 濃度の関係を把握し, 浄化に必要な期間を評価するためのTPH除去速度係数が得られることが確認された.屋外実証試験結果は, 栄養塩添加や異なる浄化促進手法について, 実務に即した検討に有益な情報を与えるものと考えられる.</p>
著者
李 雨桐 中野 拓治 中村 真也 山岡 賢 阿部 真己
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.I_61-I_71, 2019

<p>連続流入間欠ばっ気活性汚泥方式の農業集落排水施設のBOD除去性能確保に関して, ばっ気槽1室のばっ気終了時のORP管理範囲100~125mVを明らかにするとともに, ばっ気装置散気方式, ばっ気強度, ばっ気時間等によるDO挙動特性とBOD除去性能確保に必要なばっ気終了時のDO濃度を把握した.総括酸素移動容量係数(<i>K<sub>L</sub>a</i>)にはばっ気槽の活性汚泥粘度が関与しており, ばっ気強度, 水温, MLSSを説明変数とする重回帰式から推定できることが確認された.BOD除去速度恒数はばっ気強度, ばっ気時間, 及び槽内水温を説明変数とする重回帰式から推定できることが示唆された.ばっ気強度(0.03 m<sup>3</sup>∙m<sup>-3</sup>∙mim<sup>-1</sup>)とばっ気時間(30min)を組合わせたばっ気槽の運転操作を通じて, 少ないばっ気空気量で高いBOD除去性能を得るなど農業集落排水施設の運転管理効率化が図られることが示された.</p>
著者
中野 拓治 中村 真也 松村 綾子 高畑 陽 崎濱 秀明 大城 秀樹 幸地 優作 平田 英次
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.I_9-I_15, 2019

<p>沖縄本島北部に分布する国頭マージ土壌を用いて油汚染土壌の室内浄化試験を実施し, 島内で産出される琉球石灰岩砕・粒子を含めた浄化促進材の添加を通じて, バイオレメディエーションによる油分浄化特性と影響要因について考察した.軽油模擬汚染土壌に琉球石灰岩を5%以上添加することにより, 土壌含水比が5~20%の範囲で油分の浄化速度(Total Petroleum Hydrocarbons(TPH)浄化速度)を向上させるとともに, 貝殻片や花崗岩砕等を用いた浄化促進材との比較検証の結果, 琉球石灰岩砕が最もTPH浄化速度を高めることを明らかにした.琉球石灰岩砕・粒子は, 油分分解菌の代謝活動に必要となる通気性とその棲息域を確保する細孔を多く有しており, 国頭マージ土壌のpHを酸性域から中性域に中和する効果もあることから, 土壌中の油分分解菌の活性化によりTPH浄化速度が向上したものと推察される.</p>
著者
李 雨桐 山岡 賢 阿部 真己 畑 恭子 中野 拓治
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.I_243-I_253, 2018

<p>本研究は, 農業集落排水施設から得られた実測データに基づき, 農業集落排水施設の流入汚水量の実態把握と変動要因の検討を通じて, 設計諸元の定量化と設定について考察した.日流入汚水量には, 土地利用・立地条件が関与しており, 処理区の土地利用・立地条件を水道水量と降水量に加味することで, これらを説明変数とする重回帰推定式から日流入汚水量を精度よく推定できることを明らかにできた.時間流入汚水量の日間変動には, 管路延長, 供用率, 流入人口率が関与しており, 時間水量日変動幅とピーク係数はこれらを説明変数とする重回帰推定式から設計基準値を設定できることが示唆された.</p>
著者
中野 拓治 中村 真也 松村 綾子 高畑 陽 崎濱 秀明 大城 秀樹 幸地 優作 平田 英次
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.I_87-I_94, 2018

<p>沖縄本島北部に分布する国頭マージ土壌を用いて油汚染土壌の浄化室内試験を実施し,油汚染土壌の浄化方法の一つであるバイオレメディエーションを適用した場合の油分浄化特性と影響要因について考察した.その結果,含水比を適切に管理したうえで栄養塩を添加し,空気を通気することによって,酸性土壌である国頭マージ土壌であっても土中に存在する油分解菌によって油分が浄化されることを明らかにした.さらに,油汚染土壌内でのTPH除去作用が1次反応であると仮定して浄化効率を示すTPH除去速度係数を求め,栄養塩添加量,通気量,含水比を説明変数とする多変量解析を通じて,含水比がTPH浄化効率に与える影響が最も大きいことが確認された.</p>
著者
中野 拓治 李 雨桐 阿部 真己 畑 恭子
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.I_9-I_17, 2018

農業集落排水施設流入水について農業集落排水施設から得られた実測データに基づき,状態空間モデルの適用を通じて日水量負荷変動の把握と変動特性の抽出を試み,日水量負荷の変動要因について考察した.日流入水量はトレンド成分,季節変動成分,週間変動成分,及び降水による変動成分に分離されるとともに,状態空間モデル解析により日流入水量の有する周期的な変動特性や観測データと対応した特徴を抽出できることが確認できた.日水量負荷変動には,供用人口に対応して変動する水道使用量,降水量,流入人口動態,お盆・年末・年始のイベントに対応する流量変動が関与していることが示唆された.状態空間モデルによる解析は,季節変動成分の解釈や降水に伴う変動成分予測精度に課題が残るものの,農業集落排水施設の日流入水量の変動特性の把握には活用できるものと考えられる.