著者
金森 信夫 大澤 祐一 渡辺 和眞
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.739-744,a1, 1993-08-01 (Released:2011-08-11)

山王海農業水利事業で建設を進めていた葛丸ダムは, 平成2年度に完成したことから, 使用開始後のダムの安全管理および施設の維持管理に問題が発生しないよう, 平成3年2月から本貯水に先立ち試験湛水を行った。試験湛水中の観測は, 漏水量・間隙水圧・堤体および基礎の変形・土圧・浸透圧と浸透流量・監査廊の挙動・地震計の挙動の項目を実施しており, これら各項目について貯水位との相関性を明らかにし, 貯水に伴うダム堤体挙動の確認を行った結果を取りまとめたものである。上記の観測結果は, 試験前の推定値よりも極めて少なく, 葛丸ダムは安全な状態であることが確認できた。
著者
有田 博之 山本 真由美 友正 達美 大黒 俊哉
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.225, pp.381-388, 2003-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9

今日のわが国における農地政策は, 短期的には農産物の構造的過剰を抱えながらも, 長期的な食料需給の不安定性に対応しなければならないという基本的困難がある.これに対する解決策として, 筆者等は農地をいつでも利用可能な状態で粗放的管理する方法を提案している.日論では農地の利用可能性を耕作放棄田の復田という視点から経済的に評価するため, 放棄年数と復田コストの変化の関係を事例調査に基づいてモデル化した.調査は, 積雪地帯である新潟県東頸城郡大島村で行った, この結果, 数年間放置した後に復田するより, 耕作放棄後初期, すなわち毎年の軽微な作業によって農地を維持管理し続ける方が, 経済的に効果的であることを明らかにすると共に, これに基づく農地資源の保全策を提案した.
著者
長谷川 雅美
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.423-428,a3, 2003-05-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本講では, 水田で繁殖するカエル類の生活史と住み場所の特徴を紹介した後, 生息個体数を把握するための方法として, 卵塊のカウントと標識再捕獲法に基づく個体数推定について紹介する。さらに, 生息数の長期的な動態を効率よく行うためのセンサス方法として, 時間/距離当たりの遭遇個体数センサス, 鳴き声のセンサスについて解説した。現時点で最も必要な調査は, 比較的良好な水田環境に生息するカエルの種類ごとの個体数と生物量を評価することであり, それなしに, 生態系に配慮した圃場整備における保全あるいは復元の目標値を持ち得ない。
著者
近藤 高貴
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.43-48,a4, 2003-01-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
15
被引用文献数
2

農業用水系における淡水産貝類について, 定性調査, 定量調査および生態調査の方法を具体的に紹介し, 標本作成法やその保存の仕方と種の同定方法についても簡潔に解説した。さらに, 個々の調査事例について, 資料の解析上の注意点や評価の仕方に関して解説した。
著者
葛西 勤
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.537-542,a1, 1975-08-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
3

近年における産業界の急速なる発展と都市化の進展により, 農業用水の汚濁ははなはだしいものがある。水質汚濁による被害は, 農業生産性の低下のみならず農村の生活環境にも大きな障害を与えている。本稿では水質障害の現状とその対策事業について述べた。
著者
橋本 俊哉
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.101-104,a1, 2002-02-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
3
被引用文献数
1

農業関連施設におけるゴミ問題において, どのような対策が有効と考えられるか, その考え方を示した。その出発点は「ゴミが捨てられているのは, そこにゴミを捨てた人がいるからである」という視点である。それによって地域住民や観光目的の利用者に禁止や強制を強いる性格の対策ではない, 人びとの自発性に基づいたゴミ対策を講じることが可能となろう。そこでまず, 人びとのゴミ捨て行動の規則性とゴミを捨てる際の心理について述べ, ゴミを投棄させないためには, また回収容器にきちんと捨てさせるためにはどうすればよいか, 6つの誘導原則に整理して述べた。
著者
執行 盛之
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.719-724,a2, 2004-08-01 (Released:2011-08-11)

講座「生物・社会調査のための統計解析入門: 調査・研究の現場から」の開始にあたり, 以降の講座を読み進み, 理解するための基礎知識について紹介する.具体的には, 基礎統計量 (合計, 平均, データ数, 自由度, 偏差平方和, 分散, 標準偏差, 変動係数, 標準誤差, 母平均の信頼区間, 母分散の信頼区間) の算出手順や参考資料を紹介する.また, 広範で多彩な内容をもつ統計分野において, データの特徴を生かした適正な解析手法を選択するための整理図, 諸解析手法を学ぶための勉強方法についても提案する.
著者
中村 作太郎
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木研究 (ISSN:18847218)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.93-99, 1955-07-25 (Released:2011-02-23)
参考文献数
7

本文は, 竹筋の研究を基とし, 竹筋ンクリートの理論について論じたものである。
著者
山本 茂夫 西川 和則
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.1045-1050,a2, 1989-11-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
5

260年余にわたり,農業経営を担ってきた見沼代用水が,近年,水路の老朽化や都市化にごよる農地の壊廃に伴い,水路の機能が著しく低下し,用水路の維持管理および営農に支障が生じた。このため,農業水利施設の整備を行い,配水システムの確立を図り,農業用水の安定供給と,新たにご利用可能となる水を上水道に転用する農業側と水道側の共同事業として埼玉合口二期事業を実施した。また,水路改修に伴い余剰地が発生したが,この余剰地の有効活用を目的に,地域住民の憩の場としての環境整備を土地改良事業と一体的に実施したのでここで報告する。
著者
小林 裕志 姥浦 敏一
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.587-593,a2, 1988-06-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
12

草地造成技術のうち, 不耕起法はわが国独自の展開が遅れている分野である。本報では, 不耕起法の本質が原植生から牧草植生への転換を生態学的手法で行うことにあることを論述している。これには, 蹄耕法あるいは火入れ直播法などとは異質な, わが独自の方法-機械力利用-の確立が必要である。本報ではその先覚的事例を紹介する。また, わが国の各地において, 劣悪な自然条件のために放置されてきた未利用特殊地帯における草地造成の実際例として, コーラル地帯, シラス地帯, カルスト地帯, 有害土壌地帯, 泥炭地帯の実績を紹介する。
著者
星 恒昭
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.309-310,a2, 2005-04-01 (Released:2011-08-11)

福島県の海岸部においては, 過去に生成された海成地層の硫化物が主因で, 酸性害が発生する。今回も圃場整備工事の大規模な土の移動で, 基盤土が地表に露出酸化されたことにより, 工事実施2ヵ月後に酸性硫酸塩土壌の影響と思われる急激なpH値低下が発生した。転作作物は赤茶けて枯死してしまった。それに対する対策を, 環境面を最大に考慮した対策として全体的に水掛け流しを実施したが, 次年度, 畦畔沿いに酸性害と思われる症状が出たため, 畦畔と残存硫化物対策としてマグネシウム系ソイルセメントによる対策を実施した。同材が及ぼす効果と今後の汎用性を提言した。
著者
長町 博 小出 進 山路 永司
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.1371-1376,a1, 1991-12-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
4

讃岐平野は大和・近江平野と並んで条里遺構が顕著に遺されていることで知られている。この条里遺構は土地基盤整備と密接な関係にある。本研究ではこの条里遺構を, 生産を規定する農業基盤の視点から捉えることとした。そこで讃岐平野における条里遺構分布を地理的に把握・計量し, その歴史的背景を古代条里制開拓として究明する一方, その地割がかなり乱れていて, 不整形地割になっていることの原因の解明を行った。また条里遺構地域では地割が不整形であるうえに, 圃場整備が実施困難で整備が遅れているために, 農業の生産性が停滞していることを指摘した。
著者
田渕 俊雄
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.1013-1017,a1, 1986-11-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
2

イタリアの稲作の現状とそれを支えている潅漑システム, 並びに圃場の水管理について紹介した。北部イタリアの稲作地帯にはカヴール水路を中心とした潅漑システムがあり, ポー川の水と, アルプスの永河地帯から流下する諸河川の水とを水源にしている。氷管理は水利組合が行っている。圃場では田越し潅漑であるが, 排水にも注意が払われており, 均平や排水溝, 落水期間の延長などが行われている。
著者
武山 絵美 九鬼 康彰 松村 広太 三宅 康成
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.241, pp.59-65, 2006-02-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9

和歌山県龍神村の山間農業集落を対象に, 獣害を引き起こすイノシシに注目し, 生息痕跡を調査することにより山林から水田団地までのイノシシの侵入経路を把握した.また, 水田利用・管理状況を水田一筆単位で調査し, 水田団地へのイノシシの侵入経路形成との関連性を分析した.その結果,(1) 谷沿いの永年性作物転作水田の管理不足により谷沿いにバソファが形成されてイノシシの移動経路 (コリドー) が拡大し, これらの水田が水田団地への侵入経路として利用されていること,(2) 石積み畦畔に比べ土畦畔が圃場から圃場への移動ポイントとして利用される傾向にあり, 約2mの土畦畔でも乗り越えが可能であること, また乗り越えられるポイントは同じ地点が継続的に利用される傾向にあること, を示した.
著者
向後 雄二
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.115, pp.25-32,a1, 1985

本論文では, 材料非線形性を考慮したBiot圧密方程式を有限要素法を用いて解く場合の解法手順として, Newton-Raphson法および修正Newton-Raphson法に基づく解法手順を示した。また, 上記解法手順を用いて, Wealdclayの理想的な三軸圧縮試験のシミュレーションを行い, 剪断速度の違いによる剪断性の変化を予測し, 圧密を考慮した解析の有効性を示した。
著者
仲村渠 将 吉永 安俊 酒井 一人 秋吉 康弘 大澤 和敏
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.249, pp.277-283, 2007-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
16

沈砂池における浮遊土砂流出, 沈砂池による浮遊土砂流出防止対策の課題点および沈砂池の浮遊土砂流出防止効果の簡易的評価について検討するため, 実際の沈砂池で降雨時の現地観測を行った. 沈砂池における複数の降雨イベントでの土砂収支計算結果より, 75μm以上の粗粒分はほとんどが捕捉され, 75μm以下の細粒分の一部が沈砂池から流出することが明らかになった. また沈砂池の浮遊土砂捕捉率が貯水の入れ替え率を表す出水時回転率を用いて簡易的に定量評価された.