- 著者
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丸山 工作
- 出版者
- 千葉大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1987
アクチン調節タンパク質No.1のβ-アクチニン(1965)は, 本申請者によって発見されたものであるが, アクチンフィラメントの自由端(即矢じり端)に結合すると1977年に報告した. ところが, ジョンズ, ポプキンス大学のグループは, β-アクチニンと同じサブユニットからなるタンパク質をニワトリ筋肉から純化し, 反対の反矢じり端に結合して, しかもZ線に存在することを示し, キャップZと命名した(1986-87). 本研究は, この違いを解明するためにおこなわれたものである.本研究において, まず明らかになったのは, ジョンズ・ホプキンスグループの方法で純化したキャップZは, たしかにアクチンフィラメントの矢じり端ではなく反矢じり端に結合すること, 35Kと32Kのサブユニットからなることである. 後者は, β-アクチニンのサブユニット(βIとβII)と同じサイズであり, しかも抗β-アクチニン抗体と反応することから, 同一とみなされる. すなわち, キャップZとβ-アクチニンは同じタンパク質にほかならない. すると, どうしてアクチンフィラメントの異なる末端に結合するのかが問題となる.ウサギやニワトリの筋肉からβ-アクチニンを調整すると, アクチンフィラメントの両端に結合しうることがわかった. その結合の方向性がぎのようにしてきまるのかは, なお不明である. また, 抗β-アクチニン抗体は, 筋原線維の2点ならびにM線ふきんに結合することが蛍光抗体法によって示された. 抗βII抗体はZ線にのみ局在するタンパク質と反応し, 抗βI抗体はM線近く)すなわちアクチンフィラメントの自由端)を染色した. そこで, β-アクチニンは, βIとβIIのなんらかの相互作用によって, アクチンフィラメントのどちらの端にも結合しうるのではないかと思われる. この点は, さらに研究を進めていきたい.