著者
渡辺 京子 谷口 裕子 西岡 清 丸山 隆児 加藤 卓朗
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.183-186, 2000-07-30 (Released:2009-12-18)
参考文献数
12
被引用文献数
7 7

銭湯や温泉,プールなど裸足となる環境では,足白癬患者によって散布された皮膚糸状菌(以下,菌)が健常人の足底に付着し,足白癬感染のきっかけとなる.そこで,菌は靴下をはいた状態でも足底に付着するのか,それとも予防できるのかをFoot-press培養法を用いて実験的に検討した.足白癬に罹患していない被験者は,右足に綿靴下,ナイロンストッキング,毛靴下,足袋をはき,先に足白癬患者によって菌が散布されているバスマットを踏んだ後にFoot-press培養法を行い,靴下をぬいだ直後に,再度Foot-press培養法を行った.その結果,すべての靴下には菌が付着していたが,ナイロンストッキングの場合には,靴下より脱いだ足底に多数の菌が付着しており,綿靴下でも菌の一部が靴下を通過し,足底に付着した.毛靴下,足袋の場合は足底にほとんど菌が付着しなかった.各靴下を顕微鏡で観察すると,綿靴下やナイロンストッキングは,繊維の編み目が菌よりも大きく,菌を容易に通過させると考えられた.毛靴下や足袋は,編み目が密である上に,繊維の毛羽立ち,伸縮性の少なさによって菌を通過させないものと考えられた.ナイロンストッキングでは菌の付着の予防にはならず,綿靴下でも十分ではないことを示した.
著者
丸山 隆児 福山 国太郎 加藤 卓朗 杉本 理恵 谷口 裕子 渡辺 京子 西岡 清
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.265-268, 2003-10-30 (Released:2009-12-18)
参考文献数
16
被引用文献数
6 4

フットプレス培養,患者家庭塵埃培養などによる検討結果をもとに,足白癬の感染予防策をまとめた.(1)足白癬患者の足底からは高率に白癬菌散布が生じているが,抗真菌剤の外用を行うことで散布を抑制することが可能である.(2)すでに散布された白癬菌は乾燥状態におけば1ヶ月程度のうちに急速に死滅するが,湿潤した状況下では半年以上にわたって生存する可能性があり,白癬菌に汚染された浴室やバスマットなどは定期的な清掃,洗濯などを行う必要がある.(3)靴を脱いで不特定多数のものが利用する区域では,非罹患者の足底に白癬菌の付着が生ずることが多く,靴下をはいていても菌の付着を完全に予防することは難しい.ただし,付着した白癬菌は足を拭く,洗うなどの簡単な処置で角層内へ侵入する前に除去可能である.家族内感染を防ぐには(1),(2)に従って対応し,家族外感染については(3)に従って対応する習慣を遵守すれば,新たな足白癬の罹患をかなりの程度で予防可能であると考える.