著者
近藤 フヂエ 武田 光一 山本 眞也 郷 晃 佐藤 哲夫 丹治 嘉彦
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

平成15年度は、地域文化の活性化に資する表象芸術の在り方を究明するために、新大アートプロジェクト2003「うちのDEアート」を実施し、また、各地域での同種の活動の取材と意見交換を通じて、本研究に関する資料を得たが、平成16年度は、それを用いてメンバーの専門領域の立場から考察した。たとえば近藤は、美術史の立場から、芸術表象の地域性について、イメージ信仰に時代を超えた特質を見出すことができるとする解を得た。教育の立場から佐藤は、アートプロジェクトと美術教育がホモロジカルな関係にあるとする視点から、その課題を明らかにし、柳沼は、具体的に小・中学校との連携による表象芸術の意義を示した。また、実際に関わったプロジェクトとの関係で、橋本は、パブリックスペースという環境を問題にし、アートやデザインの可能性を示した。郷は、街づくりに果たす彫刻シンポジウムの役割を示した。丹治は、2003「うちのDEアート」に、最も深く関わった経験などを通して、表象芸術が地域においてどのような意味を持つのかについての一つの結論を導いた。武田は、加茂市若宮神社の天井画という新出資料について、地域における江戸後期の書画愛好の気風を明らかにした。山本は大学所有の屏風絵の模写を通じて技法研究を行い、社会的な模写の意義と効用について明らかにした。また16年度も15年度に引き続き、種々地域に根ざしたアートプロジェクトを実施した。新潟県の豊栄市の早通地区のコミュニティーの活性化のために、「光のロータリー ロウソクを灯して」等。震災を乗り越えて「元気出そう新潟県」の趣旨による、小・中・大の児童、生徒、学生による造形ワークショップ・「虹色アトリウム-光の壁画をつくろう-」など、多数の活動を行った。引き続き、本研究で得られた成果をもとに、新大アートプロジェクト2005「うちのDEアート」の実施に向け、活動を行っている。
著者
丹治 嘉彦
出版者
環境芸術学会
雑誌
環境芸術 : 環境芸術学会論文集
巻号頁・発行日
no.4, pp.9-16, 2004-11-11

2003年10月4日、新潟県豊栄市早通地区の稲刈りが終わった田園において、新潟大学教育人間科学部芸術環境講座・丹治研究室の学生と地区の住民が、自分たちで作り上げた1200本の風車を田圃に植えるプロジェクトを行った。秋晴れのもと、学生と早通地区の人達が田圃に集って行われたこのプロジェクトは、「早通風車プロジェクト」と称されて10月9日までの間、澄みきった青空のものと早通りに吹く風の中、田圃を訪れた人の目を楽しませた。また、このプロジェクトは風車を田圃に植えるだけの単発のものではなく、早通各地において早通の人達と様々なワークショップやスタンプラリー等の活動を約半年をかけて実践したものである。こうしたアートを媒介としたアートプロジェクトの実践の流れを振り返ることによって、アートプロジェクトの意義と共にその可能性探ってみたいと思う。これを以て自身の研究報告としたい。