著者
南郷 晃子(中島晃子)
出版者
神戸大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

本研究は元禄2年刊行の『本朝故事因縁集』の形成過程と、地方写本のその享受を考察するものである。同書所収説話には、特定の地域を舞台とする説話が多く見出せる。さらに共通する地域を舞台とする説話は、時期的、内容的な類似性も指摘できる。例えば出雲国を舞台とする説話には、17世紀前半の武家に関わる話が多い。これらの情報から出雲国、摂津国など説話集形成の拠点を具体的に見いだすことができる。特に出雲国では藩祖松平直政周辺で説話収集があったと考えられる。これらは地域の「由緒」や家の「祖」を記録する写本に引用されていく。自己の来歴の情報源として版本を享受することが『本朝故事因縁集』に関し起こっているのである。
著者
近藤 フヂエ 武田 光一 山本 眞也 郷 晃 佐藤 哲夫 丹治 嘉彦
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

平成15年度は、地域文化の活性化に資する表象芸術の在り方を究明するために、新大アートプロジェクト2003「うちのDEアート」を実施し、また、各地域での同種の活動の取材と意見交換を通じて、本研究に関する資料を得たが、平成16年度は、それを用いてメンバーの専門領域の立場から考察した。たとえば近藤は、美術史の立場から、芸術表象の地域性について、イメージ信仰に時代を超えた特質を見出すことができるとする解を得た。教育の立場から佐藤は、アートプロジェクトと美術教育がホモロジカルな関係にあるとする視点から、その課題を明らかにし、柳沼は、具体的に小・中学校との連携による表象芸術の意義を示した。また、実際に関わったプロジェクトとの関係で、橋本は、パブリックスペースという環境を問題にし、アートやデザインの可能性を示した。郷は、街づくりに果たす彫刻シンポジウムの役割を示した。丹治は、2003「うちのDEアート」に、最も深く関わった経験などを通して、表象芸術が地域においてどのような意味を持つのかについての一つの結論を導いた。武田は、加茂市若宮神社の天井画という新出資料について、地域における江戸後期の書画愛好の気風を明らかにした。山本は大学所有の屏風絵の模写を通じて技法研究を行い、社会的な模写の意義と効用について明らかにした。また16年度も15年度に引き続き、種々地域に根ざしたアートプロジェクトを実施した。新潟県の豊栄市の早通地区のコミュニティーの活性化のために、「光のロータリー ロウソクを灯して」等。震災を乗り越えて「元気出そう新潟県」の趣旨による、小・中・大の児童、生徒、学生による造形ワークショップ・「虹色アトリウム-光の壁画をつくろう-」など、多数の活動を行った。引き続き、本研究で得られた成果をもとに、新大アートプロジェクト2005「うちのDEアート」の実施に向け、活動を行っている。
著者
郷 晃
出版者
環境芸術学会
雑誌
環境芸術 : 環境芸術学会論文集
巻号頁・発行日
no.3, pp.13-16, 2003-10-22

近年"回廊"というテーマで石材を主とした彫刻表現の制作を行って来ている。これらは、純粋な表現制作の発表である。本稿では、もっとも最近に行った個展における発表までの流れの中で石材という素材を扱う意味と、過去に手がけた環境造形の制作と彫刻表現の制作発表との関係について述べたものである。2)"素材と内包されるもの"においては、制作を通して見出してきた素材の持つ特性や意味が表現につながる制作概念について述べて行く。3)"時間の回廊"においては、1999年に手がけたモニュメントプロジェクトについて、制作のヒントとなった物証と私的な彫刻表現との関係に付いて述べて行く。4)"回廊....記憶の水脈"においては、2002年秋におこなった個展について、表現の拠り所となったものを述べて行く。こうした制作の流れを振り返ることによって彫刻の制作発表と公共性という条件の中で成立する環境造形の2つに対する考え方とその関係性を述べるとともに、これを以て自身の制作研究報告としたい。