著者
丹羽 晃子
出版者
東京経営短期大学
雑誌
東京経営短期大学紀要 (ISSN:09194436)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.124-110, 2012-03-30

上代日本文学には幾つかの「葉や花が酒盃に浮かぶこと」が表されている。先に『古事記』雄略天皇条の三重[ウネメ]物語における「葉が酒盃に浮かぶこと」について考察したが,本稿では従来あまり取り上げられていない『続日本紀』天平八年十一月条の上表文における「酒盃に浮かべた橘」の考察を進めたい。『懐風藻』の「菊酒」「浮菊の酒」にもふれ,そうした幾つかの「葉や花が酒盃に浮かぶこと」の関係を考える。
著者
丹羽 晃子
出版者
東京経営短期大学
雑誌
東京経営短期大学紀要 (ISSN:09194436)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.58-46, 2010-03-31

上代日本の「をち水」(若返りの水)表現の出自については,在来説と神仙思想説に分かれている。筆者は以前,月に関する万葉歌を除外し,『続日本紀』養老改元記事の泉の用例と取り上げ,中国の神仙の書や上代に用いた本草書・医学書の仙薬表現の使用を指摘し,大陸医薬に対する主張を読み取った。本稿では,前述の改元記事とそれを万葉歌によんだ表現との関係をより明確にし,関連する月の万葉歌や他の用例について考察した。
著者
丹羽 晃子
出版者
東京経営短期大学
雑誌
東京経営短期大学紀要 (ISSN:09194436)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.148-135, 2011-03-31

『古事記』雄略天皇条の三重[ウネメ]物語の前半に槻の葉が天皇の酒盃に浮かんだことを天皇が発見して怒り,酒盃を献じた[ウネメ]を殺そうとする件がある。しかし物語後半の歌の酒ぼめのあり方や槻の神聖性などから,葉が酒盃に浮かぶ事象は本来は瑞祥であるとする意見がある。本稿では『日本書紀』の花が浮かぶとする二つの説話を取り上げ,この事象に瑞祥性が認められるかどうかを検討し,三重[ウネメ]物語の話の展開について考察した。
著者
丹羽 晃子
出版者
東京経営短期大学
雑誌
東京経営短期大学紀要 (ISSN:09194436)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.68-56, 2016-03-30

『古事記』景行天皇条には倭建命の物語があり,その最後には,倭建命は死後鳥になって飛翔し,后たちと御子たちが追いかけて歌をうたったが,御陵に鎮座せずに天高く飛んで行ったと記されている。后たちによる四首の歌は倭建命と天皇の御葬儀にうたうとある。これらの歌は『古事記』の中で,后たちが倭建命を追いかけていくのに難儀する嘆きを主に表すとみられてきたが,本稿では二首目の歌は積極的に追いかけて行くことをうたっているのではないかとみて,四首の歌の構成について考えた。