著者
丹羽 淑博
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.175-188, 2017-09-15 (Released:2018-09-12)
参考文献数
63
被引用文献数
3

海洋中・深層の乱流混合は,深層大循環の強さやパターンをコントロールする重要な物理過程である。この乱流混合の基になるエネルギーは,潮汐流や地衡流が海底地形の上を通過したり,大気擾乱の移動に伴って風応力が変動したりすることによって励起される内部波のエネルギーが乱流スケールにまでカスケードすることによって供給される。本稿では特に内部波の励起過程に着目し,近年,理解が大きく進展した潮汐起源の内部潮汐波,大気擾乱起源の近慣性内部波,地衡流起源の風下内部波のグローバル分布に関する研を紹介する。さらに,中・深層の乱流混合のグローバル分布のパラメタリゼーションの実現に向け,残されている課題について議論する。
著者
丹羽 淑博
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

海洋深層の乱流混合パラメタリゼーションの基礎研究として、現実的な海底地形を組み入れた高解像度の数値モデルに潮汐と風応力フォーシングを与え続けることによって、より現実に近い状況下でのGMスペクトルの再現を試みた。その結果、潮汐フォーシングと風応力フォーシングとを同時に与えた場合に限り、両フォーシングの強度の比によらずGMスペクトルが形成されることが明らかになった。特に緯度30度付近において、内部波間の三波共鳴相互作用の一つであるPSIを通じて効率的に内部波エネルギーがカスケードされる様子が再現された。また、鉛直低次モードの内部波が外洋中を10000km以上も伝播することにより、GM スペクトルの普遍的エネルギーレベルが維持されていることが示された。