著者
亀井智子 友安 直子 梶井 文子 久代 和加子 杉本 知子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.23-36, 2006
被引用文献数
2

本研究の目的は,在宅認知症高齢者に関する学際的チームアプローチの質を評価する枠組みの開発を行うことである。方法は,データベースによる文献検索から24文献,ハンドサーチから20文献,計44文献を国内外から収集し,それらの要約と統合を行い,在宅認知症高齢者に関する学際的チームアプローチによる成果(outcome)に基づく質評価の枠組みを作成した。さらにその妥当性の検討のために,計16名の保健医療福祉の各専門職実践家にインタビュー調査を行った。文献の統合により,outcome評価の具体的項目を分類し,抽象度を上げていき,在宅認知症高齢者に関する学際的チームアプローチの質評価の大・中・小項目にわたる枠組みを作成した。その結果,質評価枠組みの大項目は,次の9項目の大項目で構成されるものとなった。「I.認知障害と記憶障害とともに生きること」「II.認知と記憶の状況が見守られること」「III.認知と記憶障害に関連する問題を解決すること」「IV.活動的であること」「V.認知症以外の合併症のリスクを減らすこと」「VI.決定する力をもつこと」「VII.意思疎通できること」「VIII.活動と参加の能力を促進すること」「IX.心地よくあること」。また,各々の中・小項目では,在宅認知症高齢者の日常生活全般にわたる医学面,生活行動・活動,心身の機能,コミュニケーション,生活の質(QOL)などの側面が含まれ,日常生活全般にわたり認知症高齢者が前向きに生活する姿をoutcomeとしてケアの質を評価するものとなった。専門職へのインタビュー結果から,この枠組みは支持された。しかし,在宅認知症ケアの実践現場において質評価上不可欠とされたのはケアマネジメントの視点であることが共通にあげられ,最終的に「X.ケアマネジメントされること」を加えた10項目の大項目で構成される枠組みが作成された。今後,各々の質評価の柱に沿った具体的なケア内容,評価指標と時期,職種ごとのケアの専門性について具体化することが必要である。
著者
小澤 道子 森 明子 久代 和加子 桃井 雅子 片桐 和子 堀内 成子 園城寺 康子 菊田 文夫
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護大学紀要 (ISSN:02892863)
巻号頁・発行日
no.28, pp.39-49, 2002-03
被引用文献数
1

本学は1995年度入学生より,改訂カリキュラムを採用した。改訂カリキュラムの特徴として,自学自習能力の育成,統合化学習の推進,科目配置の順序性があげられる。本報告は,改訂カリキュラム導入期の3年間における卒業時点での学生側から見たカリキュラムの満足度と教科カリキュラムの順序性,統合性に対する評価の推移を知ることを目的とした。調査方法は,調査日を卒業式前日とし,質問紙を配布しその場で回収をした。質問紙の構成は,教科カリキュラムの統合性を知るために「総合看護・看護研究II」と履修した科目との関連,教科目の順序性,カリキュラムの満足の度合,授業や教育システム,教育支援に対する評価などである。その結果は,次の如くである。(1)『総合看護・看護研究II』(いわゆる卒業論文)にこれまで履修した教養科目・基礎科目・専門科目の,各科目の関連のあるものを科目の出現率で検討すると,3年間とも基礎科目と専門科目の出現率が高く,教科カリキュラムの統合性が支持されていると解釈できる。(2)改訂カリキュラムでは,看護へめ高い志向をもつ学生に,あえて1年次では,教養科目に力を入れる科目配置にした。しかし3年間とも学生は,入学次から看護学の科目を求めていた。入学年次に教養科目と看護学の科目をどのように配置していくのかが課題として残された。(3)カリキュラム全体に対する満足度は,3年間ともその高い順に「総合看護i看護研究H」,「専門科目群」,「実習科目群」であり,全体の平均は,5段階の4:「やや満足」から3:「どちらでもない」の間に分布じた。(4)カリキュラム運用に間しては,「専門的知識が身につく」「自分の視野を広げるのに役立つ授業が多い」等が3年間ともに肯定的回答が高く,また,「本学の学生として経験したことは肯定的にとらえている」とした学生は,9割以上を占めていた。一方,「情報処理関係の教育が充実している」には,否定的回答が年次毎に徐々に増加していた。今後とも加速的に変化する情報技術革命に対する設備投資という大きな側面と,日常的な維持管理への対応の側面の両面からの取り組みが急務な課題であろう。以上,カリキュラムの受け手である学生側の3年間の評価は,一部に年次差が見られたが,総じて,カリキュラムの統合性と順序生が受け入れられ,満足できるものとして示された。そして,より実効あるカリキュラムのためには,このような評価活動の重要性が再認識された。