著者
村越 大輝 久住 裕俊 小杉山 晴香 雨宮 直樹 薗田 明広 吉村 耕治 西尾 恭規 島田 俊夫
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.381-386, 2016-07-25 (Released:2016-09-10)
参考文献数
12

前立腺癌の罹患率・死亡率は年々増加し,早期診断のためにもPSA測定によるスクリーニング検査の実施は不可欠である。しかし,偽陰性による前立腺癌の見逃し,偽陽性による過剰診断といった問題点があり,前立腺癌と前立腺肥大症の鑑別は困難である。本研究では下部尿路症状を主訴に外来を受診し,前立腺生検を行い,前立腺癌と非前立腺癌の鑑別を病理組織診断により確定し得た患者を対象にROC解析を行い,日常診療におけるPSA測定の有用性を,Bayesの定理を用いて検討した。ROC解析の結果,カットオフ値は15.0 ng/mL,AUCは0.73であった。検査前確率を50%と想定した場合,Bayesの定理に基づいた条件付きの検査後確率は85%まで改善することが判明した。しかし,カットオフ値が4.0 ng/mLの場合,効果的な検査後確率の上昇は認められなかった。すなわちPSAの応用に関しては予防医学と臨床現場との棲み分けを明確に区別し,若年者には予防医学的側面からのアプローチを重視し,高齢者には臨床を重視したアプローチを優先するといった使い分けを行うことでPSA測定の臨床的有用性を効率的に高めることが可能になると考える。したがって,Bayesの定理を用いることで,PSA測定の正当性が明確に評価されると考える。今後,様々な分野における評価法の一つとして広くこの解析法が応用されることを期待する。
著者
久住 裕俊 大石 祐 村越 大輝 白川 るみ 平松 直樹 薗田 明広 島田 俊夫
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.615-622, 2020-10-25 (Released:2020-10-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1

可溶性インターロイキン2受容体(soluble interleukin 2 receptor; sIL-2R)は悪性リンパ腫の診断補助や治療効果の判定に有用とされている。本研究では,化学発光酵素免疫測定法(chemiluminescent enzyme immunoassay; CLEIA)を測定原理とした試薬(ルミパルスプレストIL-2R,富士レビオ株式会社)とラテックス免疫比濁法を測定原理とした試薬(ナノピアIL-2R,積水メディカル株式会社)の基礎的性能評価およびCLEIAを測定原理とした従来法である外部委託検査法(デタミナーCL IL-2R,日立化成ダイアグノスティックス・システムズ株式会社)との比較を行い,院内導入における妥当性について評価した。両試薬の基礎的性能は良好であり,日常検査法として十分な性能を有していた。しかし,ナノピアIL-2Rでは非特異反応を示す検体が存在するため,ラテックス免疫比濁法を使用する場合は非特異反応の発生を考慮した上で,回避方法を施して注意深く使用することが望まれる。sIL-2R測定試薬を日常検査法として導入することにより当日の結果報告が可能となることで,即座に治療法を選択することが可能となり臨床への貢献が期待される。