著者
久保 明美 垣田 時雄 高木 敦司 松永 隆 外林 秀紀 岡村 康彦
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.506-509, 1988

気温20~22°C,湿度55~62%,風力1.5m,天候晴というさほど高温多湿ではない条件下に,体熱の放散が妨げられて発症した熱中症3例につき報告した.症例は24~26才の男性,警察学校生で,警備装備品を着装して3~4km駆け足を行ない,意識消失,転倒した. 1例は当日入院,急性胃粘膜病変を呈し,翌日以降に高度の肝機能障害を認めた. 2例は翌日入院でともに高度の肝機能障害を呈し,うち1例は腎不全,播種性血管内凝固症候群をきたして血液透析,血漿交換にて救命しえた.熱中症を発症した場合は,たとえ発症時の症状が軽度であっても適切な加療と経時的な肝機能,腎機能の検索を行なうことが必要と考える.
著者
大久保 明美
出版者
熊本大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

多分化能を持つ胚性腫瘍P19細胞を、1nMレチノイン酸存在下で浮遊培養すると、約10%の細胞塊に搏動を伴った心筋が出現する。これを長期培養後、細胞をクローン化し、通常培地では増殖し、1%ジメチルスルホン酸(DMSO)存在下で高頻度で搏動細胞に分化する細胞を選択し諸性質を検討した。CL6細胞と名付けたサブクローンは、親株のP19細胞と異なり坑SSEA-1抗体とほとんど反応しない。さらに分化は接着状態のままで誘導され、シートを形成し分化誘導後10日目に搏動が始まり、14日頃にはシート全体が搏動した。またDMSO添加後2日毎に全RNAを抽出しノーザンブロット分析を行なったところ、CL6細胞では胚性の心筋型ミオシン-α及び-βの発現が10日目から見られ、一方骨格筋特異的な分化制御因子であるMyoDやマイオジェニンの発現は検出されなかった。ウエスタンブロット分析でもミオシンの発現が10日目に始まり、これは搏動が観察される時期と一致した。この条件下ではほとんど搏動の見られないP19細胞では14日目にかすかなミオシンバンドが検出された。また搏動細胞を固定し、蛍光標識したMF20抗体、ファロイジン、坑デスミン抗体そして坑心筋型c-蛋白抗体で細胞が染色され、横紋構造が確認できた。リズミカルに搏動している細胞へのアセチルコリン及びアトロピンの添加実験では、分化細胞の搏動がムスカリン性アセチルコリン受容体によって影響を受けることを示した。また親株p19細胞の神経分化条件では、低頻度の神経分化能がみられたので、CL6細胞は心筋細胞分化にコミットメントはしていないが、p19細胞より心筋分化しやすいところに位置する細胞と考えられる。従ってCL6細胞は、心筋細胞へのコミットメントや分化のin vitroでの研究に有効と考えられ実験を進めている。