著者
長岡 和磨 降籏 隆二 久保 英之 鈴木 正泰 権 寧博 内山 真
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.124-130, 2021-06-01 (Released:2021-05-31)
参考文献数
14

症例は81歳男性。X−10年頃より夜間の中途覚醒時に小動物が天井の鴨居を走るなどの幻視が出現した。X−5年頃からは夜中に大声を出す, 就寝中にベッドから転がり落ちるなどの異常行動がみられた。経過中に他院で薬物治療を受けたが改善は乏しかった。精査加療目的にX年10月紹介受診。終夜睡眠ポリグラフ検査で無呼吸・低呼吸指数36.0回/時間であり, 筋活動の低下を伴わないレム睡眠を認めた。ドパミントランスポーターシンチグラフィーは両側基底核の集積低下は正常下限であり, α–シヌクレイノパチーに属する神経変性疾患の初期として矛盾しない所見であった。123I-MIBG心筋シンチグラフィーで心臓/縦隔比の低下を認めた。病初期のため持続的で著明な記憶障害は認めないものの, レビー小体型認知症の初期と診断した。閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対して, CPAP治療を導入し, レム睡眠行動障害に対してクロナゼパム, レビー小体型認知症に対してドネペジル塩酸塩による薬物療法を行い, 症状の改善を認めた。治療経過よりCPAP治療の導入は, レム睡眠行動障害の異常行動に対する薬物治療の反応性を改善した可能性が考えられた。今後レビー小体型認知症による認知機能低下がより顕在化する可能性に注意する必要があると考える。
著者
神山 裕名 西森 秀太 飯田 崇 内田 貴之 下坂 典立 西村 均 久保 英之 小出 恭代 大久保 昌和 成田 紀之 和気 裕之 牧山 康秀 小見山 道
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.33-39, 2016-12-25 (Released:2017-04-12)
参考文献数
33

目的:本研究は口腔顔面領域の慢性疼痛疾患である顎関節症患者,舌痛症患者,三叉神経痛患者における病悩期間と質問票を基にした主観的な睡眠感との関連を検討した.方法:被験者は日本大学松戸歯学部付属病院口・顔・頭の痛み外来を受診した患者3,584名を対象とした.診断が確定した顎関節症患者1,838名,舌痛症患者396名,三叉神経痛患者108名の質問票における主観的な睡眠感を検討した.病悩期間は症状発現から3か月未満,3か月から6か月,6か月以上をそれぞれ急性期群,中期群,慢性期群に分類した.睡眠に関する自己申告の質問は入眠障害,中途覚醒,早朝覚醒とした.各病悩期間における入眠障害,中途覚醒,早朝覚醒の睡眠スコアをそれぞれ比較した.結果:顎関節症患者における慢性期群の入眠障害,中途覚醒,早朝覚醒の睡眠スコアおよび舌痛症患者における慢性期群の入眠障害,中途覚醒の睡眠スコアは急性期群,中期群と比較して有意に高い値を示した(p<0.05).三叉神経痛患者における各睡眠スコアは急性期群,中期群および慢性期群の間に有意差を認めなかった.結論:顎関節症患者および舌痛症患者における病悩期間の長期化と睡眠感との間に関連性を認めることが示唆された.