- 著者
-
和気 裕之
小見山 道
- 出版者
- 一般社団法人 日本顎関節学会
- 雑誌
- 日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.3, pp.183-190, 2014-12-20 (Released:2015-02-20)
- 参考文献数
- 49
顎関節症診療における歯科医師と精神科医の連携について述べた。顎関節症診療では,有病率の高い精神疾患に遭遇する機会が少なくない。そして,心身症の概念は身体疾患と精神疾患の境界領域の病態を理解するうえで重要である。歯科心身症には定義がなく,臨床では狭義と広義の概念で用いられている。狭義の歯科心身症は,日本心身医学会(1991)の定義に該当する歯科領域の病態を指す。一方,広義の歯科心身症は,「臨床的に説明困難な症状」や,「心身両面からの評価と対応を要する患者」などに対して用いられているが,リエゾン診療では,その70%以上が身体表現性障害に該当する。顎関節症は多因子性の疾患であるが,そのなかの心理社会的因子には不安・抑うつなどの心理状態,性格傾向,ストレス,精神疾患などがあり,これらは診断と治療を行ううえで重要である。歯科医師は顎関節症診療で,傾聴,受容,共感,支持,保証を基本姿勢としてBio-psychosocialな評価を行い,精神科との連携を要する症例は,心身医学的な医療面接から検討する。また,特に診察と検査から他覚所見がみつからない症例,あるいは自覚症状と他覚所見に乖離のある症例では注意が必要であり,単独で診療が可能か連携して診療すべきかを判断することが重要である。